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【活動報告】#ピルコンルーム no.31「#障害のある人への包括的性教育」

こんにちは!ピルコンインターンのゆきこです!
ピルコンnoteを開いてくださって、ありがとうございます。
このnoteでは、ピルコンが主催するオンラインイベント・ピルコンルームのレポートをお届けしております!ぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです😊

ピルコンでは、1月24日(火)20時より、#ピルコンルーム no.31「#障害のある人への包括的性教育」を開催しました!今回のゲストは、門下祐子さん。特別支援学校の教員を10年以上担当した後、現在は知的障害のある子どもや大人への包括的性教育や支援についての研究、講演、執筆活動等をされています。イベントでは、特別支援学校での性教育の取り組みや、障害がある子ども・若者への包括的性教育の現状・課題、実施の際に大切にしたいことやできる工夫などについて、門下さんにお話をお伺いしました。


TALK1 包括的性教育って?

早速、門下さんのゲストトークの内容に移っていきましょう!
門下さんは、宮崎県で特別支援学校教諭として計13年間勤務されました。この経験の中で、生徒たちを取り巻く社会構造に課題を見出し、現在は大学院の博士後期課程に在籍しながら、障害のある人への包括的性教育に関わる様々な活動を実施されています。

まず、障害者におけるセクシュアリティにまつわる課題について考えてみましょう。
本来であれば、豊かな人生を自由に実現することができ、セクシュアリティに関することも自分で決定することができるはずです。しかし、障害があることによって、社会との障壁、隘路(あいろ)が発生し、他者からの支援や介入、配慮、認識が必要となることが、課題としてあるそうです。そして、保護者や支援者らが本人の意思の確認なしに、マスターベーションやセックスなどの性にまつわる行動に介入し、管理することは、権利の侵害とあたると考えられます。

ここで話している「性の権利」については、障害者権利条約や、世界性の健康学会による『性の権利宣言(改訂版)』などに明文化されていたりもします。そして、この性の権利を享受するために、包括的性教育を受ける権利も掲げられています。

ではそもそも、包括的性教育とはどんなものなのでしょうか。
『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(2018 明石書店)によれば、包括的性教育の枠組みとは、

①関係性
②価値・権利・文化・セクシュアリティ
③ジェンダーの理解
④暴力と安全の保持
⑤健康と幸福のためのスキル
⑥人間のからだと発達
⑦セクシュアリティと性の行動
⑧性と生殖の健康

と定められています。

みなさんがこれまで受けてきた性教育を思い返すと、このような要素はいったいどれくらい含まれていたでしょうか?
そしてこれらの内容を学ぶため、5~18歳を4段階にわけて、テーマごとに各年齢での学習目標が示されています。


TALK2 日本の現状を知ろう

ここからは、日本の現状について一緒に見ていきましょう。

これまでの調査によると、全国の知的障害特別支援学校のうち、「定期的に性教育を行っている学部」は、小学部で18.0%、中学部で37.3%、高等部で38.4%(児島・細渕, 2011)と、どれも低い値になっています。性教育を実施しない理由としては、「子どもたちの個人差が大きい」「実施のための時間が取れない」(西田・田実, 2005)ことがあったり、教員の6~7割は、性教育について「教え方がわからない」「学習の機会がない」と考えている(井上ら,2010)とのデータもあります。
しかし、国際的に日本が遅れている、と考えてしまうのは、時期尚早かもしれません。国内でも、組織的に性教育に取り組んでいる学校は沢山あるそうです。

ただここで門下さんが指摘するのは、性教育を実施していても、実際の日常生活において、生徒たちの権利が必ずしも尊重されていないのでは、という点です。
例えば、男女交際やセックスを禁止するルールのある学年があったり、「性の権利」という観点が必ずしも日常生活に反映されているとは言えないかもしれないとのことでした。
包括的性教育は、学校や事業所などでの授業・プログラム内だけで学ぶのではなく、日々の生活の中で意識的に取り組んでいくことが重要だということです。


TALK3 実際どう関わっていけばいい?

「性に関して、『禁止』の表現が多くなっていませんか?」

例えば、性器を触る「性器タッチ」について。
触っている理由は、退屈、かゆい、不安、寂しい、ちょっとした快感が欲しい、など、人それぞれです。
ですが、「汚いからやめなさい」と禁止表現を使い続けてしまうと、性器を洗うことすらできなくなってしまったりする、という問題点があります。
ただ禁止するのではなく、その行動の背景にはどのような原因があるのかをアセスメントし、支援を組み立てていくことが必要だということです。

そして、「性器タッチ」は、マスターベーションにも繋がります。
性別に関わらず、いつ、どのような場所でマスターベーションをするのかを、教員、保護者、事業所、放課後等デイサービスの職員などで連携を図っている例が、実際に様々あるそうです。

では、どのように声掛けをしていけば良いのでしょうか。
まず基本的には、「何をすればいいのか」を伝えることが大事だそうです。
例えば、「廊下を走ってはダメ」という禁止表現ではなく、「廊下は歩きましょう」というように「~しましょう」「~します」という工夫ができます。

参考:「すべての子どもが「分かる」「できる」 授業づくりガイドブック~ユニバーサルデザインに基づく、 発達障害の子どもだけでなく、すべての子どもにあると有効な支援~ 」(高知県教育委員会)https://www.rs.tottori-u.ac.jp/childcenter/content_image/kochi.pdf

また、相手との適切な関わり方を身に付けるために、「同意」について学ぶこともできます。
「YES」「NO」を自分から伝えられるようにすることに加えて、
相手の「NO」を受け入れられるように、積み重ねて練習していくことも必要だということでした。

親、教員、支援者、上司、先輩などのように、その場で「権力を有する人」に対して出会っても、したくないことを「NO」と伝えることが出来た場合や、自分自身が「権力を有する立場」であっても、相手の「NO」を受け入れられたときは、その行動を具体的に認め、本人の成功体験に繋げていくことができるとよい、と門下さんはおっしゃいます。

障害のある方への性教育、というと、心配や怖い目にあってほしくないという想いから、どうしても禁止や抑制をしてしまう、という方も多くいらっしゃると思います。しかし、包括的性教育は人権教育です。集団のなかで「関わり合う中で学ぶ」という実践をしつつ、本人の思いや選択に寄り添いながら「対話」の時間を設け、「権利」を尊重した学びとして取り組んでいくことを目指していければ良いのではないか、とのことでした。

そして最後に、門下さんが大切にしている考え方についてもお話くださいました。
それは、「セクシュアリティは教えるものではなく、学び合うもの」ということです。それぞれの性を生きているからこそ、ともに学び合う、という姿勢を持つことが大切になってくる、とのことでした。

基本的な部分から、実践についてまで、短い時間で様々なお話をしていただいて本当にありがとうございました!


Q&Aコーナー

ここからは、門下さんへのQ&Aコーナーより、質問を抜粋してお届けします!

Q. 障害がある方との関わり方(性にまつわることも含めて)について、健常者ができることはありますか?

A.本当に重要ですよね。やはり日本が、同じ場でともに学ぶという「インクルーシブ教育」をうたいつつも、特別支援学校に小学部の段階から入っている人もいる、というように結局分離しているということもあります。インクルーシブ教育の最後の要として、文部科学省のうたう「交流及び共同学習」を推進することで、様々な障害のある子どもたちと、お互いが交流する、ということをやりましょう、と言っています。一方で、そもそも実施率が低かったり、回数も少なかったり、コロナ禍で遠隔になったりしています。大きな話にはなってしまうんですが、性に関することも含めて、教育システムの在り方から考えていけるといいかなと思いますね。

Q. 幼児期からの性教育は何が課題ですか?

A. 課題というか、大事なことは、からだの権利教育ですね。「自分のからだは大切」「ひとりひとり違う」「誰もが大切な存在なんだ」ということがわかるアプローチ、例えば、現場によって違いはありますが、着替える場所がプライベートな空間ではない、ということもありますよね。そんなときにカーテンを付けてひとりで着替えられるスペースを作ったりして、「ひとりで着替えたい」という言葉を大切にしたりすることで、自分たちのからだを見せたくない、見られたくない、という想いを尊重している例もあります。これは、障害のあるなしに関わらずとっても大切なことだと思います。日々の関わりから、そういったメッセージを伝えていけるといいかなと思います。

参加者のみなさまからは、ここでは取り上げられなかったものも含めて、様々なご質問をいただきました。積極的に本イベントにご参加いただき、本当にありがとうございました!


話し合ってみよう!

講演を振り返って、「障害のある人への包括的性教育で、取り入れてみたいことは?」というテーマで考えたことを、参加者のみなさんにチャットに投稿していただきました。

そこで出た意見を、抜粋して紹介します。

・障害のある本人に性教育をする前に、施設内の職員や、保護者に先ずは学んで貰わないと、なかなか難しいと感じています。

・一人一人の要求や希望をしっかり受け止めることが大事だと思いました。社会からの目が怖い、という親御さんや先生方の息苦しさもあると思います。それを解決するには、やはり社会全体の雰囲気から変えていかなければならないのだと感じました。

・高等支援学校の養護教諭ですが、福祉の充実以外に、わたしたち現場の教員ができることは性教育だと、このウェビナーに参加しました。

いかがだったでしょうか?
イベントに参加されたみなさんにとって、そしてこのnoteをここまで読んでくださったみなさんにとっても、学びがある時間になっていたら嬉しく思います。


参加者アンケート

参加者のみなさまより、講演後にアンケートを記入していただいたので、
その結果を一部シェアさせて頂きます!

アンケートに記入いただいたほぼすべての方に、
「講座を通して初めて知ることがあった」、「講座はあなたの役に立つと思った」と回答していただきました。

講演全体の感想としては、

・田舎に住んでいてなかなかリアルでは講座に参加できないし、障がい者向けの性教育は、大変貴重です。是非、また参加させて下さい。
・包括的性教育について、初めて学びましたが、門下さんのお話はとてもわかりやすかったです。我が子への性の伝え方を振り返る機会となりました!
・中学校勤務のとき、特別支援学級への性教育が不十分で後悔しています。門下さんのお話から理解が深まり、性教育実践をしていく上での大切な視点をいただきました。どの対象者にも共通するものがあると思います。
・障がい者というとハードルが高く感じるが、幼少期から積み上げていくように土台から積み重ねながら丁寧に関わることが大切だと思った

など本当に沢山のコメントをいただきました。アンケートにご記入くださった方、改めてありがとうございました。

今回のイベントをきっかけに、これからの学びに繋げていただけると嬉しく思います。
さて、ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。
また、次の記事でもお会いできることを楽しみにしています!


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それでは次回もお楽しみに! 
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この記事を書いた人⇒ゆきこ💛
早稲田大学3年生で、ピルコンのインターン&フェローとして活動に参加中。「性について気軽に語れる場をつくっていきたい!」という気持ちから性教育に興味を持つ。最近は、世界の性教育に興味あり🌏


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