整理つかない気持ちを書き殴るように

ボディワーカーが持っておかなければならない重要な価値観の1つが、バウンダリーです。日本語に訳すると、境界線。その境界線が曖昧になること(マージ)はとても危険で、優秀なボディワーカーはそのことについて深く学び、訓練されています。

そうは言うものの、ある一人の男性クライアントに対して、なにか惹かれるもの、ある種の憧れを持っていました。実際、彼は魅力的で多くの人に愛されていました。

ボディワークで彼に触れると、彼からは淋しさや死の感覚が手を通して流れ込んでいきます。シンプルに言えば、身体が死に向かっている。そんな感覚です。それを僕は流して、バウンダリーを取り、彼のバイタリティ、健全性にアクセスする。「タッチを介したボディワークを経験がない人には何を言っているんだ、葉坂は」と思われてしまいそうですが、そういったセッションを続けていました。

彼は浴びるほどお酒を飲むタイプ、破滅型の経営者でした。人懐っこい笑顔と、抜群にキレる頭脳と、淋しさと表裏一体の優しさがなんとも魅力的。彼から漂う死臭、危うさ。どこから来ているのか。理由については、間接的に聞くことは何度もありましたが、ボディワーカーとしてどう対峙するのか。それは、悩ましさもありました。身体のみに関わるマッサージ屋であれば、難しくなかったかもしれませんが、心理的なものも包括したボディワーカーにとっては、難しさがありました。生への手応えを垣間見得たこともありましたが、それは愛犬の死や経営者としてのさまざまな問題によって崩れ、また回復させ、と続きました。

そして、小さな問題が起きます。彼とのセッションは中断し、その後疎遠になっていきました。

あれから、数年。今日、彼が亡くなったことを知りました。シンプルに悲しみたいのに、後悔が混じります。残念です。ご冥福をお祈りします。多くの人が悲しんでいると思います。

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