我が家の笑わない男
「プロフィールに載せる写真を撮ったんだ。笑った方がいいと言うので、すっごい笑って撮ったんだ」
と、相方が嬉しそうに言うので、そうかそうかと写真を手にとれば、
「飛鳥大仏かーい」
と思わず口からツッコミが飛び出た。
「え?大仏?これ笑ってない?すごい笑顔じゃない」
当惑顔の相方氏。
再度写真に目を落とし、これがすごい笑っている顔なんだとしみじみと思った。よく言ってもアルカイックスマイルだ。破顔一笑とは言えない。
意外と笑っていなかったことに肩を落とす相方が面白くて、過去の写真を見せ、笑っているか判定をしてもらうと、70%笑っている判定が出た。大体笑ってたんだな。ハッピーボーイだったんだな。気付かなかったな。
顔の表情はあまり変わらなくても20年ちょっとの長い付き合いだ。楽しそうとか疲れてるとか怒ってるとかは雰囲気でわかる。
しかしこの顔がすごい笑顔だったとは。すごい笑顔だったとは!
思い返してみれば、もともと表情はあまりなく、考えてみると笑顔の印象が薄い。多分人並みに笑っているのだが、表情筋の関係で表情があまり変わらないのだろう。
「笑わない男」などといじりやすい二つ名をつけられてしまったラグビー選手のことを思い出した。にわかラグビーファンとして試合を観ていたが、勝った試合後は口角を上げて目を細める様な笑顔はなかったが、勝利を喜んでいる感じは伝わってきた。彼の笑顔はこのくらいしか表情に出ないのだと思う。
最近のスポーツ新聞で熱愛が報じられていたが、あの写真の切り取り方とタイトルはえげつないなと思った。余談。
自分の認識と第三者からの視点には時として、100億光年の距離があるから、自分もその表情は本当に笑顔かどうかをたまには人に確認してみたら面白いかもしれない。私はキングクリムゾンの額についているエピタフの如く表情がわかりやすいで定評があるので、今更感があるが、ワンチャンあるかもしれぬ。
「あのさ」
引っ張り出してきた昔の写真を見ながら、相方が
「この時さ、すごいトイレ大の方我慢してたんだよね。お腹痛くて、ヤバかったなぁ」
と無表情で言った。
え、この時?写真の君は、すごいスカした顔してるじゃあないか。相方氏の引き出しは大方開け尽くしたと思ったが。
まだだ、まだ終わらないんだな。
いつも有難うございます!