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『ジョアン・ジルベルト初期三部作を、ブラジルEMI倉庫で発見されたオリジナル・テープよりリマスターされたジョアン公認の音で聴く』会(2019年11月16日)の感想を振り返る


2022年7月29日、音楽プロデューサーの宮田茂樹さんが急逝されたとのことです。

宮田さんは自分にとっては、あのジョアン・ジルベルトの来日公演実現の最大の功労者であります。
また、おそらく音楽家としてのジョアンをいちばん深く理解し、またジョアンからもいちばん深く信頼されていた方ではなかったかと思います。

ご冥福をお祈りします。

宮田さんのジョアン招聘に関する様々な苦労話と、来日後のジョアンの日本のオーディエンスへの感激の様子を来日当時のラティーナの記事で読んで、宮田さんの仕事の偉大さを感じたものです。

ジョアン・ジルベルト来日公演時のパンフレット。
ディスコグラフィや多彩な執筆陣によるコラム、貴重な写真など実に充実した内容で、もちろん宮田茂樹さんの文章もあります。
手前から2003年、2004年、2006年。2003年の表紙は文字がレリーフ的に印字されているのですが、白飛びして見えませんね(笑)

宮田さんにただ一度お目にかかる機会があったのが、2019年11月16日の四谷のジャズ喫茶・いーぐるでの
『ジョアン・ジルベルト初期三部作を、ブラジルEMI倉庫で発見されたオリジナル・テープよりリマスターされたジョアン公認の音で聴く』
という会でした。
解説:宮田茂樹さん、聞き手:中原仁さん。

店内に「ジョアン・ジルベルトが好き」というただ一点だけの共通項で集まった様々な人たちと一緒に、宮田さんがかけてくれるジョアンの初期三部作の音を聴くとても楽しい時間でした。
本当に行ってよかったなあ。


参加した翌日に感想メモをTwitterに連投したものを、以下編集して転記します。

(以下最後まで、2019年11月17日:記)

【1】 昨日の音源を聴いての感想ざっくり。

①やはりジョアンの歌とギターは凄く力強く、上手い。そしてリズムを含め終始機械のように正確。

②アレンジャー・トムの素晴らしさ。ジョアンの歌・ギターに過不足なく最も効果を上げるようにオーケストラを合わせている。

③オリジナル音源を最高の音響で聴くジョアン、聴き慣れた初期三部作なのに新鮮で緊迫感が凄い。
来日公演時同様「ボサノヴァが癒し系音楽だなんて誰が言った…!」磨き上げた音は聴く方にも集中力が求められる。
…とはいえ、やはり癒やされる。不思議な音楽。

【2】1st2nd3rdのA面/B面毎に曲をかけ間に解説だったが、面白い話いくつか。

①Morena Boca de Ouroのアウトロのスキャットが1音抜けていることを宮田さんが初来日1日目にジョアンに言ったら「初めて指摘された」そうで、それでジョアンとの距離が一層縮まったとのこと。


②Um Abraço No Bonfáはギタリストととしてのジョアンの凄さがわかる。同じように弾ける人はそういない。アイガー北壁のようなもの(宮田さん)


③O Barquinhoの卓越したグルーヴ感。声とギターが違う時間軸で流れている(宮田さん)



初期三部作の音源の後、映画「黒いオルフェ」にジョアンが歌での出演を熱望した時に録音した関連曲の中からA Felicidadeを聴かせて頂く。
仁さんより「やはりジョアンのやっているのはサンバ」と。
「サンバのスタンダードをやっている」ということなのだと。

そして宮田さんより、ジョアンの音源はちゃんとした遺産として遺したいとのお話。人類の遺産だね。

生前のジョアンが音楽面で誰よりも信頼していたであろう宮田さんへ託した、世界で1つしかないオリジナル音源。世界の人々に広く聴かれるよう望みます。

昨日の初期三部作を聴く会の感想は以上。

こういう機会を設けて下さった宮田さん仁さん、そしていーぐるの後藤さんに感謝。
ジョアン初来日1日目の夜、あまりの感動に「この感情を一体どこに持っていけばいいのか…」と右往左往したことを思い出しました。

(終わり)