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『柿の種』を読んだ

2022/1/16、ギャラリー珈琲店古瀬戸にて読了。最初はウィンナー珈琲を求めてラドリオに赴いたのだが、若い男性二人組が店頭で順番待ちをしているような様子だったので古瀬戸へ。するとどうだ、成り行き任せにしていても良いことはあるとみえて、偶然先輩と久しぶりにお会いすることができた。古瀬戸のウィンナー珈琲も、クリームがまろやかだったことだし。

本書は、物理学者でありながら名文家としても知られた寺田寅彦による随筆集である。随筆といっても、ごくごく短い文章によって構成されているので、随想と言ったほうが近いのかもしれない。寺田が近年の文系/理系偏重の状況をみていたとしたら、何と言って嘆くだろうかと想像せずにはいられない。

自然や周りへの優しい視線が滲み出てくるような文である。寺田の子供たちが文章上でみるみる成長していくのが、微笑ましくもあり寂しくもある。イタリアのエチオピア侵攻や夏目漱石との親交についても言及されており、時代を考える上でも非常に興味深い。

自叙の寺田の言葉を引けば「なるべく心の忙(せわ)しくない、ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」とある。月並みな言葉はなるべく使いたくないのだが、なるほど本書は心の処方箋である。


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