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自転車でカナダ~アラスカを旅した話 #3ジープに乗って調子に乗る

不安だらけの冒険旅行というイメージで書き始めたのに、いきなり海外ドラマ風の写真が出てきて驚いた。事の顛末を話そう。

2018/5/28

朝五時半には目が覚めたので、ロビーへ降りて英語の勉強でもしようと思った。
実際僕の英語力は中学生レベルで、この先のことを考えると不安でしょうがなかった。

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このホステルには自由に使えるキッチンとダイニングがあって、パンとかジャム、バター、シリアルや牛乳などは使い放題となっている。
まずは朝ごはんを頂こう。

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そうこうしているうちに同室の日本人Yさんが下りてきて、このホステルの宿泊者で日本人のNちゃんを紹介してくれた。どうやら今日ウィスラーへ行くメンバーはYさんNちゃんと、あと同室のトムとレニーの五人ということだった。
なんだかよくわからないけど、袖振り合うのも他生の縁というのが世界の旅人たちの共通認識であるらしい。とにかくいっぱい楽しいことをして、それを共有すること。それが旅人の基本姿勢であるということを、僕はここで学んだ。
Yさんはすごくアグレッシブにいろんな人を巻き込んで、今回も車の手配から運転からいろいろやってくれた。感心するほどに旅人の模範的な存在だった。
Nちゃんは料理の勉強をするためにバンクーバーへ来たらしい。若いのにすごく度胸と行動力があって、やっぱり僕には感心することしかできなかった。

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左がトム。彼は僕のイメージするイギリス人らしいイギリス人で、アメリカ人みたいに感情を派手に表現しない。彼の話すイギリス英語は結局ほとんど聞き取れなかった。
右がレニー。最年長のメキシカンだったのだけど、少年のような無邪気な笑顔が印象的なかわいいおじさんだった。

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車の中でもレニーはずっとはしゃいでいた。

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最初の目的地はCypress Mountainという小さな山の頂上。
天気はちょっと優れなかったけど、ここからはバンクーバーの街並を一望に収めることができる。

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僕の携帯のカメラじゃ全然綺麗に撮れなかった。
記念撮影は一眼レフを持っていたNちゃんのカメラで。

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北上したら、Shannon Fallsという滝がある。

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日本の原風景みたいな場所に流れる高い滝は、ただただ壮観だった。
更に移動して、Alice Lakeという湖でランチにする。

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我々が食べているのは、ほとんどホステルからパクってきたものである。

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Nちゃんはカメラ片手にカナダグースを追いかけ回していた。

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ほほほ、若いことは良いことですのう、などと思って見ていたのだけど、気付いた時には自分もやっていたから不思議。

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さて、一行はいよいよウィスラーへ向かう。

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そこはマウンテンバイクとスキーの聖地として、世界的に有名な街だった。
美しい街並み、大自然、アウトドアアクティビティーを愛する人々の暮らし。僕がカナダに行きたいと思ったひとつの理由がこの街にあったのだけど、まさかこんなに早く来るとは思わなかった。

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ウィスラーマウンテンバイクパーク。
マウンテンバイクを愛する人なら一度はその名前を聞いたことがあるんじゃないかと思う。
冬季はスキーのゲレンデとして利用されているその場所は、夏季にはマウンテンバイクのダウンヒルコースとして開放されている。
Chromagという下り系ハードテイルMTBで有名なブランドもウィスラーの発祥だ。

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Yさんとトム、レニーはゴンドラに乗って山の上に行くというけど、僕とNちゃんはゴンドラ代をケチってその辺をうろうろすることにした。
僕は自転車屋を歩き回りたかったから、それぞれ別行動となった。

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指定の時間に集合場所へ戻ると、Nちゃんは新しいサングラスをかけていた。
実は僕もこの時間にサングラスを購入していた。五月のウィスラーのインターロッキングは眩しくて仕方ない。アイウェアはクリアのものしか持っていなかったから、つい買ってしまった。日本人の考えることはどうやら同じらしい。

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観光もそこそこにして、僕たちはウィスラーを後にした。

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帰りにティムホートンという喫茶店に寄ってコーヒーとかを注文。
どうやらティムホートンはカナダではポピュラーな喫茶店らしい。アメリカでいうところのマクドナルドくらいの頻度で出現するから、その後僕はティムホートンのヘビーユーザーとなっていく。

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夕日が綺麗な帰り道だった。
二日後に僕はこのSea to Sky Highwayを自転車で走ることになる。
アップダウンが激しくて、なかなか厄介な道だと思っていた。

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ホステルに戻ると、みんなは一緒にディナーへ出かけた。
僕はちょっと疲れていたのもあって、一人でリカーショップ(酒屋)へ行ってビールを購入。なんだか怪しく光る道端で飲みながら日記を書いたりしていた。

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日記を書いていると、ファンキーな姉さんに声を掛けられた。

「あんた、ライター持ってない?」

その後少し会話を交わして、最後にHave a good nightと言って別れようとしたら、彼女はこんなことを言ったのだった。

「教えてあげるわ。この街ではGood nightなんて言葉は使わないの。あたしたちはGood luckって言うのよ」

グッドラックか、、、いい言葉だなと思った。
これまで日本で暮らしてきて、見ず知らずの人に「幸あれ」なんて言ったことが一度としてあっただろうか?
もちろんなかった。この言葉に集約される「親密でありながらも他者を尊重しあえる絶妙な距離感」みたいなものが、バンクーバーという街の魅力なのだろう。

その後もフランス人のじいさんに声を掛けられたりして日記が捗らないので、ホステルに戻って寝ることにした。
滞在二日目にしてちょっと濃すぎるな、と思っていた。でも濃ゆい日々は始まったばかりだったということに、その時の自分はまだ気付いていなかった。
同時に、カナダは法的に外で酒を飲んではならない、ということにも気付いていなかったのである。




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