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『ピエール瀧の23区23時』〜セカンドシーズン 台東区編

ピエール瀧が東京23区の各区を夜中に散歩したら一体何が起こるのか?!という自由徘徊実験企画。決まっているルールは“23時になったら写真を撮る事”“100円自販機を見つけたら興味本位で味見をする事”のふたつ。それ以外は基本行き当たりばったりのゆるゆる企画。ファーストシーズンは2010年に開始。その模様は『ピエール瀧の23区23時』(産業編集センター/刊)として2012年に書籍化されている。10年後の2020年、セカンドシーズンがスタート。

台東区編

京成本線「京成上野」駅スタート

ー今日は台東区を歩きます。上野動物園の倉庫を見せてもらってから、上野公園を抜けて谷中霊園まで歩いてみようと思います。

瀧:その倉庫っつうのは、何か特別な倉庫なの?

ー動物園が管理してて、中にいっぱいグッズが保管されてる倉庫です。元々は変電所だった歴史ある建物なので、見応えありそうです。上野動物園の担当者の方が案内してくださるみたいなので、行ってみましょう。ところで瀧さん、上野界隈って来ることありますか?

瀧:うん、たまに。この不忍池近辺も、昔夜中に来たりしてたし。科学博物館が好きなのよ、俺。科博に行ってから、夜に公園近辺をちょっとウロウロするっていう感じかな。花見の時期は来ないよ、さすがに。

ーすごい人ですもんね。ちなみに美術館は?

瀧:実は行ったことないんだよね、ある?

ー今年は西洋美術館に2回行きましたね。2年ぐらい改装するみたいです。

瀧:へえ。あ、これ何の扉だろ。ここから御神輿とか出す扉なのかな。ちょうど御堂の下だよね。何のマークなんだろう。

上野のイメージってあります?

瀧:上野のイメージか。東北方面の玄関口。それとさっき精養軒とかあったけど、そういう昔ながらのお店が多いイメージ。あまりにも老舗すぎて、ちょっと来るのがはばかられるっていう(笑)。この辺の人は気軽に来たりするのかな。

ーもう修学旅行とかで来るところになってるのかもしれないですね。精養軒って駐車場がすごく広いんですよ。

瀧:そうなんだ、観光バスとかガンガン停まってる感じね。そういうちょっとさ、明治時代からありますみたいな老舗とかたくさんありそうじゃんか。

ー僕、上野精養軒の存在は「キン肉マン」で知りましたね。

瀧:え? 出てたんだ(笑)。台東区って前回(ファーストシーズン)行ったのは浅草方面だもんね。七福神巡り

ー台東区はもともと浅草区と下谷区にわかれてたんですけど、合併して台東区になったそうですね。23区で一番面積が狭い区のようです。

瀧:なるほど。俺さ、保育園の卒園旅行が上野動物園だったんだよ。それで、仲のいい友達の子と、各動物の檻の前でスケッチブックにクレヨンで動物をスケッチした思い出があるな。パンダがちょうど日本に初めて来たばっかの頃でさ、カンカンとランランね。パンダ舎に群がる尋常じゃない人だかりの向こう側に、汚いおしりみたいなのががちょっと見えたぐらいしか覚えてない。そのときに、生まれて初めてモノレールに乗ったんだよね。上野動物園の園内を走ってた。あれ、最近なくなっちゃったんでしょう?初めて来た東京で、「東京っていろいろすげえんだな」って驚いた記憶があるな。今でも実家で探せば、その時描いたスケッチブックまだあるんじゃないかな。

ーその時が初めてですか? 東京。

瀧:そうだと思う。ところでさ、恩賜公園て名のつく公園って箱根にもあるんだよね。そもそもどういう意味なの?

ー(検索して)恩賜公園は、宮内省が所有していた土地が、第二次世界大戦後に公に下賜されたって意味みたいですね。

瀧:元々は天皇家が持ってたものを国民に開放して、「みんなで使っていいよ」ってことになったのが恩賜シリーズってことか。なるほど。あれ? 森鴎外居住跡だって、マジですか⁉︎ 森鴎外、ビルに住んでるじゃんか(笑)

瀧:「森鴎外は文久2年。1862年正月19日。森静夫の長男として産まれた。本名凛太郎という。明治22年、1889年3月9日、海軍中将赤松紀佳の長女とし子と結婚しその夏に根岸からこの地、この上野近辺に移り住んだ。この家は現在でもホテルの中庭に残されている」なんかちょっと前に、森鴎外の住居どうすんだ?ってニュースになってた気がするな。「同年8月に「国民の友」付録として「面影」を発表。10月25日に文学評論「しがらみ草子」を創刊し、翌23年1月、処女作「舞姫」を「国民の友」に発表するなど、初期の文学活動を行った。一方、陸軍二等軍医生に就任し、陸軍軍医学校教官としても活躍した。しかし家庭的には恵まれず、長男大戸が生まれた23年9月にとし子と離婚し、翌年本国駒込千駄木町57番地に転居していった」となるほど。

ーその家、クラウドファンディングで管理費用を募ったみたいですね。なんか書いてますよ。

瀧:本当だ、「これまで80年間お食事処宴会場、コンサート会場として皆様にご利用いただいておりました。2020年新型コロナウイルス感染症流行の影響を受け、運営しておりました水月ホテル鴎外荘は5月31日をもって閉館となりました。しかしこれからもこの森鴎外宮廷は保存していかなければなりません。保存のためどうかご支援のほどよろしくお願い致します。クラウドファンディング森鴎外修繕プロジェクト」なるほど。森鴎外ですらコロナのあおりを食らってしまったと。天然鴎外温泉だって。マジで!? いいじゃん。

ー目の前のバス停も「鴎外旧居跡」っていう名前なんですね。

瀧:上野周りはこういう感じの旧跡でがっちり固められて、新しいものが入り込む隙間があんまりないのかなっていうイメージがかなりある。昔も今も“上野”なんですよっていう。

ー多分この辺は特に法律上も厳しいでしょうね。建物の高さとか。

瀧:そうだろうね。この建物とかもいいもんね、古くて。上に何か塔みたいなの乗ってるし。家なのかしら? もう昔も今もその感じだから、今更俺たちがここでちょっと外から写真撮ってもなんとも思わないだろうね(笑)。

瀧:この辺さ、リノベ物件多そうだよね。新しく店舗とかやりたいけど、建て直しちゃうのは無理だから、もうリノベじゃね?っていうさ。あ、あの方かな? 上野公園の倉庫の方。多分そうだ、こんばんは!

千足:こんばんは、はじめまして。東京動物園協会の千足(ちあし)と申します。
小出:小出と申します。

瀧:ピエール瀧です、今日はよろしくお願いします。めっちゃ怪しいっすよ、おじさんが夜中の坂の曲がり角でパンダ持ってたら(笑)。千足さんと小出さんは動物園の職員さんですか? めっちゃかわいいですね、このパンダ。


歴史ある上野動物園の倉庫

瀧:こちらの、左側がその倉庫なんですか?

千足:はい、怪しいですよね。いろんな人からよく聞かれるんですけど、実は昔は都内いろんなところに都電が走ってまして。この建物は元々は変電所だったんです。

瀧:なるほど、この中に変電設備があったってことですね。

千足:そうです。都電はここまで来てなかったんですけれども、上野の駅の方から、鴎外荘の方向に向けて通っていました。

瀧:あ、じゃあ今その道を丁度歩いてきましたけど、あそこって実は電車道だったんですね。上野公園と不忍池の間の道に、都電が通ってたってことなのかぁ。それっていつ頃廃止になっちゃったんですかね?

千足:昭和46年です。

瀧:結構最近ですね。なるほど、それまでは電車用の変電所として使われていたと。

千足:昭和47年に東京動物園協会が買い取ったんですよ。

瀧:へえ、廃止後に。じゃあ、ちょっと見させて頂きましょうかね。当時、変な人の手に渡って雑に壊されるのは忍びないって感じだったんですかね。確かにこれ、上野にあるのがふさわしい感じがしますもんね。

小出:では、中をご覧ください。

瀧:近くで見ると建物めっちゃかっこいいですね。シャッターオープンしてくださいますか。

小出:東日本大被災の後に、耐震の問題で大きく改築したんですよ。

瀧:なるほど。(しばらく待つ)…小出さん、開かないじゃないですか(笑) あんなに意気揚揚とやったのに。「はい、それではいよいよ御覧に入れますよ」みたいなテンションだったのに。めっちゃダサダサじゃないすか(笑)。

小出:電源が入らないですね…。

瀧:見たところ、鍵も抜けなくなっちゃってるじゃないすか(笑)。大丈夫ですか? 小出さん。

小出:抜けなくなりましたね…。

瀧:こうしたら?(ちょっと操作してみる)

(ガチャン!)

小出:あ、開いた。ありがとうございます!

瀧:何で俺が開けられるんだよ(笑)。あらららら、中は箱だらけすね。入ってもいいですか?

小出:どうぞ!

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