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より正確なギターのイントネーション調整 ~⑪実際に調整 3~

ギターのオクターブ調整の考え方を一歩進め、より正確なピッチをフレット上で得るためのチャレンジです。

最初から読みたい方はこちらからどうぞ。

順不同となってしまい申し訳ありません。

3つめの調整方法の紹介

今までに具体的な調整方法を2つ例示してきました。

オクターブ関係にある2か所のフレットポジションにて実音ピッチを計測して合わせる方法

正確にチューニングした開放弦とハイポジションまで含めた対象弦の和音の響きを耳で判断して合わせる方法

これに加えて、新たにもうひとつご紹介します。

開放弦と有効ポジションの全実音を計測する方法

まず今までどおり、チューニングメーターで開放弦を正確に合わせます。

ここから「ギターの状態確認」の項で行った各フレットのピッチをあらためて計測し、それらが全体として妥当な範囲に収まるようにブリッジ駒位置を調整します。

ここでは下記がポイントとなります。

  • フレットのローエンドとハイエンドは捨てる

私の経験則ではだいたいのギターの傾向として、1~3フレットあたりや17フレット以上はシャープする(言い換えればミドルポジションがフラットする)傾向を示すことが多いです。

ミドルポジションにおいてもフラフラとピッチが安定しないようであれば困りますが、5~15フレットあたりのピッチがほぼ一律安定しており、かつそれが開放弦のピッチに対しても然程かけ離れていない状態であれば、この5~15フレットあたり全弦のピッチをチューニングメーター実測で合わせてしまおうという考え方です。

ブリッジ駒の移動によってハイポジションほど敏感にピッチへ影響しますから、もしモノゴトが簡単なのであれば、「開放弦と最終フレットのそれぞれ実音をばっちり合わせてしまえばギターのピッチ問題は解決」となるのですが、実際はそうではありません。もしこれをやると一番使うミドルエリアのフレット領域全域においてフラット気味となる可能性が高いです。

ローポジションについても前述のとおりシャープしやすい傾向がありますので、このような理由からローエンド・ハイエンドはあえて見ず、実戦的なミドルポジションを全て実音で計測調整していくという考え方です。ローエンド・ハイエンドを捨てることでミドルポジションはずいぶん合わせやすくなります。

ここまで作業したらあらためて開放弦の針位置と確認してみてください。開放弦と幅広いミドルポジション群で針位置が大きく異ならないならば、かなり実戦的なピッチを持つギターに生まれ変わっていると思います。

音源サンプル

ウルトラストラトにほぼ上記調整を施した音源です。オケが440Hzよりも少し上のため、聴感でギターの基準ピッチも少し上げています。

この調整による響き

この方法で調整したギターは鋭くクリアな和音の響きをさほど感じられず、比較的柔らかい響きに終始するでしょう。「うぉー気持ちいい」と響きにオーラを感じるところまではいかないかもしれません。それでも実用に困ることは全くないレベルのピッチ感を持つと思います。

以前に紹介した方法のように、4度5度を優先的に調整(同一フレットでの調整やパワーコードでの聴感調整)した方法と較べると、全体に何となく合っている状態ですので、ピンポイントでの響きの強さのようなものは感じにくいです。もう少し柔らかい響きに感じられます。

ただ最終的に、実音実測領域が一番広いことも含めて、この方法が最もハズしにくいアプローチなのかなとも思います。負けにくいとでも言うか。

色んな調整方法をどう使い分ける?

ここまでで3種類の調整方法を紹介しましたが、結局のところ、どの方法が一番良いの?という話です。

色々試してきた私の今のところの結論としては、「ギター個体が持つピッチ特性 × プレイヤーの特性 により選ぶ」かと思います。

  • そのギターはどのあたりのフレットポジションが合いやすく、逆にどのあたりが決定的に合わないのか

  • プレイヤーはどんなポジションでのプレイが多いのか

上記によって、優先したい部分を優先的に合わせせられる方法が良いのかと思っています。どこを拾うか捨てるかの判断が求められます。全てを得ようとすると敗れ去る可能性が高いのです。

ということは。

私が所有している数本のギターに対して、調整のアプローチは全て異なりますし、探求し知見を広げるためにも定期的に違うアプローチも試行しています。という恐ろしく面倒な状況になっています。

ただ、レコーディングやライブに数本持ち込むときは、あえて同じ方法で調整しておくほうが良いかもと思います。

なかなか考えることはたくさんありますよね。きちんと理論や答えが用意されていればよいのですが(そうすればこんなnoteも要りません)、現物のギターが不確実な物体である以上、何を拠り所・基準点として管理していくか、ということになりますね。

今回ご紹介した「5~15フレットあたりのピッチを測定」にしても、ギター個体のフレット上のピッチ特性がどうなっているかに依存しますし、ハイポジションの速弾きしかしない!というプレイヤーであれば、12~19フレットあたりだけをより完全なピッチに調整してもよいでしょう。そのときに開放弦(ローポジション側)がどの程度ずれるかは個体に依存します。場合によっては特定フレットを押弦してのチューニングも必要になるかもしれません。

ただし、ハイポジション側のずれはともかく、ローポジション側は極端にずれている状況は極めてまずいと思います。1曲の中でギターソロはせいぜい30秒ほどです。それ以外のバッキングはローポジションが多いわけですから、バッキングのほとんどにおいて、あなたのギターはピッチがおかしいことになります。バッキングではキーボートとも絡みますし、ピッチがおかしいとギターソロよりもずっと気になりますよ。お気をつけください。

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