中小企業のブランディングを手掛ける|paddle design companyさん インタビュー
中小企業をターゲットに、内製化された多職種のチーム編成でブランディングサービスを提供するpaddle design company。今回はSAD(シニアアートディレクター)/ブランディングデザイナーの勝野さんを筆頭に、Webディレクターの村井さん、AD/ブランディングデザイナーの本山さん、ビデオディレクター・エディターの福田さんの4人に登場していただきました。
(プロフィール)
paddle design company
2000年設立。「商品やサービス、企業の価値を掘り起こし、磨くこと」をモットーにブランディングからグラフィック、Web、動画作成など多岐に渡り手掛ける。
個人ではなくチームで全力投球できるのが強み
___最初に、paddle design companyの特徴やスタイルについて教えてください。
勝野:ブランディングデザインを中心に、さまざまなメディアを扱うデザイン制作会社です。ターゲットとしては大企業というより、成長過程の中小企業が多く、予算的にブランディングには手が届かないという企業にも柔軟に対応しています。「デザインを変えるより、デザインで変えていく」が私たちのコンセプト。たいていの制作会社だと企画をするのはディレクター、指示を出すのはアートディレクター、デザインするのはデザイナーというような形が多いと思うのですが、弊社の場合はオリエン時から全スタッフが参加するようにしています。ディレクターが作るというより、全員でアイデア出しをするというスタイルですね。
___あえてそのようなスタイルで行うことに、何か狙いがあるのでしょうか?
勝野:そうすることでチーム全員がクライアントを深く理解できます。一人ひとりがもともと考える力を持っているので、ディレクターひとりで考えるよりも多角的な視点で考えることでアイデアが広がり、結果、提案の幅を広げることができるというメリットがあります。
川下から全てに関わったことが大きな経験に
___みなさんが最近手掛けられたお仕事を教えてください。
村井:最近手掛けた仕事としては「THE ART digital」という自社サイトのシステム開発/デザインプロジェクトがあります。もともと弊社で展開する「THE ART」というアート制作サービスがあり、ライブペイントパフォーマンスのように即興でアートを表現する企画や、オフィスなどの壁にウォールアートを施すことでブランド力向上につなげるなど、リアルでのアート制作を行う法人向けのサービスを行っていました。
数年前のコロナ禍の際、リアルでの活動が制限される中で、オンラインで何かサービスが提供できないかというところから「THE ART digital」がスタートしました。アート作品をデジタル化してサブスクで販売する新しい仕組みです。イメージとしては、アマナさんなどのストックフォトサービスに近い事業の開発でした。
___開発する上で何か苦戦したことはありましたか?
THE ARTのサービスをもともと展開していたこともあり、コンテンツの目処は立っていたのですが、システムなどの仕組みをゼロから開発しなくてはいけなかったため、そこが一番苦労しました。裏側のシステム構成や画面遷移を考えるところから、アーティストが作品を公開するまでを、いかにして最適化していくか、段階を踏んで考えていきました。あとは、売上に対するアーティストへの報酬の算出方法や支払いのタイミングなど、細かい取り決めを行うために打ち合わせを重ね、構想から公開まで1年くらいかかりました。デジタルアートに特化した日本初のサービスということもあり、おかげ様で多数のアーティスト登録や作品登録に成功し、スタートを切ることができました。個人的には、開発のような川下から全てに関われたことが、大きな経験になったかなと思います。
___アーティストの作品というのは、デジタルアートに特化したのですか?
はい。デジタルアートに特化しての販売です。好きな作品をPCやスマホの壁紙として使用したり、商用利用ができる高解像度画像を購入できたり、S/M/Lサイズと3種類のデジタルアート販売方法をアーティストが選択し、またユーザーが選べるようにしました。
__フォトエージェンシーがアートに特化したような感じでしょうか?
はい。ライツマネージみたいな形ですね。アーティストは著作権を大切にする方が多いので、それに賛同していただいたアーティストがサービスに登録してくれています。NFTアートとは少し違い、手軽にアート作品を購入できるサービスです。
ブランドとしての魅力を隅々まで企画して、他社との差別化を図る
本山:「SUNPOCKET」というランドセルブランドのリブランディングから始まったご依頼で、かれこれ5年くらい担当させて頂いています。お子さまのランドセル選びにおいてカタログは、とても重要な役割を担っているのですが、初年度の企画では、お子さまと親御さま、それぞれがランドセルを選ぶ視点が違うことに着目し、お子さま向けと親御さま向けそれぞれの2種類のカタログを提案しました。お子さま向けのカタログは「ランドセル選びを楽しむこと」をコンセプトとし、カードタイプのカタログを提案。一方、親御さん向けのカタログは、安全面や耐久性、利便性が伝わるよう、機能性の訴求を重視したカタログを提案し制作しました。
___クライアントからはどんな課題が挙げられたのでしょうか?
本山:もともとサンリオキャラクターを使用したランドセル開発を主力としていたのですが、製品の幅を増やし売上を上げるために、「今後は自社ブランドを主軸にしていきたい」というご要望を受けました。初年度はイラストの優しいタッチでデザインを構成していきましたが、ブランドの情緒をもっとダイレクトに伝えていくため、翌年からは使用シーンを想像しやすいよう、モデルを起用した写真メインのデザインへと方向転換を行いました。
___どのように制作を進めていったのですか?
本山:撮影場所として廃校を探し、6、7歳くらいの日本人モデルを起用して撮影を行いました。ランドセルは6年間を通して、子どもに寄り添っていくものなので、入学式やプール開き、雨の日や晴れの日など、さまざまなシーンを想定しました。雨の日を表現したカットでは、「撥水加工だから雨の日も安心、反射材が付いているから暗い道でも安心」という機能性もアピールしています。子どもたちが胸に抱く期待感を表現しつつ、親御さんにも納得して頂けるようにカタログをデザインしました。5年目には自社製品のみでカタログを構成できるようになり、弊社がネーミング開発から関わらせていただいた「Little song」という商品は一番の人気商品になりました。
__モデルのポーズなど撮影ディレクションはデザイナーが行ったのですか?
本山:そうですね。モデルが子どもなので、気取りすぎず、ランドセルを背負っている自然な姿が撮影できるよう工夫しました。教室や音楽室で自由に遊んでもらい、それをカメラが追いかけるという感じですね。競合他社の場合は、外国人モデルを起用しハウススタジオで撮影することが多いのですが、できるだけリアルな子ども達の姿がイメージできるよう日本人モデルで撮影を行い、他社と差別化しています。今後は動画制作も提案していきたいですね。
最近は動画だけの発注も増えてきた
福田:僕だけちょっと、ほかのメンバーとは進め方が違う点があるかも知れません。以前はディレクターやコピーライター、ブランディングデザイナーやWebデザイナーなど、チームで連携した案件を手がけることが多かったのですが、最近では動画制作単体のご依頼が増えてきたこともあり、用途や目的に合わせて単体で企画することも増えてきています。
最近チームで手掛けたのは「三洋貿易」という商社のブランディング動画で、企業ブランディングに伴い新たに策定したMVVやブランドコンセプトをどのように表現していくかが課題でした。コピーライターやディレクターがシナリオ構成を行い、撮影をビデオグラファー、撮影ディレクションや編集をビデオディレクター・エディターが担当する。といったチーム編成です。
___ほかにも動画の制作事例があったら教えてください。
福田:もうひとつは「鎌ケ谷巧業」という製造業のクライアントです。鎌ケ谷工業はプロバスケットチーム「千葉ジェッツ」のスポンサードをしているため、ホームゲームの際にスタジアムで放映するための映像を毎年制作させて頂いています。試合前やハーフタイムに流すCMですね。今回の企画では、BMXのプロライダー選手に般若のお面を被って頂き、パフォーマンスをしていただく他、工場の中やクライアントが運営する雑貨屋の店内をBMSで走り回ってもらうなどのシーンを撮影し、1本のリールに収めました。映像の最後は「まっすぐ、強く。巧であれ。」というスローガンで締めくくるため、まっすぐ強いプロフェッショナルの姿、巧な姿を具体化した感じですね。
___企業が伝えたいことを動画にする際、どうやって映像を思いつくのですか?
福田:企業として伝えたいメッセージがあり、それをどのように表現していくか、制作チームでアイデアを出し合います。さらに出てきたアイデアをチームで擦り合わせブラッシュアップしていきます。さらには、現場合わせでアザーカットを多数撮影し、編集の段階でもブラッシュアップしていきます。チームでのアイデア出しが基本ですが、制作工程でもさらに修正を加えていく。といった感じでしょうか。
まずは「ブランディング」の説明からスタート
___3人がチームを組んで取り組む案件も多いのでしょうか?
勝野:3人で手がけたのがこの「はちみつ工房」というプロジェクトです。トータルブランディングの案件でした。
本山:千葉県君津市ではちみつの販売や見学ツアーを行っていた「はちみつ工房」さんは、場所を移転し、体験施設を拡充させた新店舗をオープンする計画をお持ちだったんです。それから、新商品として「ミード」というはちみつのお酒の製造・販売というプランもお持ちで、その資金集めも兼ねて、千葉県が主催するビジネスプランのコンテストに参加されることが決まっていました。弊社の取り組みとしては、そのコンテストで使用するPR用のイメージボードの作成がスタートで、その後、施設名やロゴなどトータルでブランディングしませんか?とご提案したんです。
___提案はすぐに受け入れていただいたのでしょうか?
本山:「ブランディングとは?」の説明から始めました。企業の思いやコンセプト形にするブランディングの必要性や、ブランドづくりに必要な施策のプランニング、オープンまでの流れに至るまで、事細かく説明することで安心してご依頼頂けたと思います。施設のコンセプトづくりから着手しました。
__基本的なことを説明するところから始まった?
本山:そうですね。突然「ブランディング」と言われても戸惑われるお客様もいらっしゃいます。何をどう選んでいいのかわからないし、進め方もわからない。例えばロゴ提案の際も、「このクライアントにはここから説明したほうがいい」とケースバイケースで考えるようにしています。また、「ロゴデザインの基本は、商品をシンボル化するのではなく、想いをカタチにするのが大切ですよ」とさまざまな事例を出して説明するなど、クライアントの知識の度合いに合わせて丁寧に説明をします。まずは納得して頂くというのが最初の仕事ですね。
プレゼン資料は具体的な事例を集める
__説明資料はディレクターが作るのですか?
本山:ディレクターやコピーライターが作る場合もありますし、デザイナーが作る場合もあります。基本的にはプロジェクトチームのみんなで作っていますね。クライアントに納得してもらうために、弊社の実績を中心に類似業種や近しい規模の企業のさまざまな事例を集め説明資料を準備しています。
__どのように進めていくのですか?
本山:クライアントのニーズや状況に合わせ臨機応変に対応していきます。社内にコピーライターがいるので、プレゼン資料の作成はだいぶ助けられています。パッケージデザインなどは、他社事例を参考資料としてお見せして、「世界観を大切にする場合、商品の独自性を打ち出す場合など、制作前に方向性の確認をするようにしています。的確なヒアリングをするための説明資料ですね。いきなり「どんなデザインが良いですか?どんなパッケージが良いですか?」と聞いても、よほど経験のあるクライアントでない限り明確な答えは返ってきません。「はちみつ工房」の場合においても同様で、はちみつブランドを例に挙げて、ナチュラル、クラフト、モダンなどさまざまなテイストの他社事例をご覧いただき、お互いのイメージを擦り合わせていきました。クライアントの想いを引き出していく工程がとても重要だと思っています。
___クライアントの思いを確かめてから実際に手を動かしていく、という流れでしょうか?
本山:はちみつ工房のケースでは、最初に施設コンセプトの策定から始まり、そこにどのような機能を付加するのか、お客様はどんな体験ができるのか、何が購入できるのかなど施設の概要を決めていき、次に施設ロゴを制作しました。その際は、考え方の違いによるロゴデザインのバリエーションを幅広くデザイン制作し、考え方=デザイン案として比較できるようマトリクス化して提案をしています。
___かなりのバリエーションを制作するのですね。
本山:そうですね。初回提案は何に重きを置いたロゴデザインなのか幅広く提案しました。「施設の業態を表現する」「施設のコンセプトを表現する」「ユーザーの豊かな体験を表現する」など、何をメインに訴求するロゴなのかを明確化し、比較検討しやすいよう提案し、クライアントとともにセッションや検証を重ねながら最終的な形に仕上げていきました。
ロゴができるまでは通常3ヶ月
___ロゴができるまではどれくらいかかるのでしょうか?
本山:完成するまでは平均3ヶ月程度かかりますね。キーワードを考え、グループ分けして、一番伝えたいことを整理していって決めていく。決めていく過程でも「ロゴデザインとは?」という説明から丁寧にしていくと、スムーズに進みます。
__ブランディング案件では何人くらいでチームを編成するのですか?
勝野:はちみつ工房のケースでは、AD/ブランディングデザイナー3名、コピーライター、ディレクター、ビデオディレクターがそれぞれ1名ずつの計6名でした。弊社ではそれぞれの案件に適した人選・人数をアサインし、プロジェクトごとにチーム編成を変えながら進めていくという特徴があります。
なじみのなかった「ミード」の認知度を上げる
___「ミード」というお酒はあまりなじみがないですよね?
勝野:ミードは元々薬膳酒として売られていて、世界最古のお酒といわれています。そこに着目したはちみつ工房が、自社ブランドとして商品化しました。「お祝いごとで飲んで頂けるお酒として、ミードを売り出したい」というリクエストからブランディングがスタートしています。ミードは、ハネムーンの語源にもなっているんですよ。
村井:ハニームーンですね。
福田:現在では、道の駅などでも販売されているようです。ミードも少しづつ浸透してきているようで嬉しいです。
動画で楽しむシーンをイメージさせる
___Webサイトはどんな流れで作ったのですか?
村井:Webサイトはコンセプトやパッケージデザインが決まってから着手しました。Webサイトの役割としては「ミード」という一般的になじみがないはちみつ酒をどういうシーンで楽しむのか、どういう料理と合うのかなど、定義づけの部分ですね。「ミードで乾杯」というコンテンツを制作し、誕生日やアウトドアなど5つのシーンを提案しつつ、それに合うレシピを紹介しています。
__お料理も実際に作って撮影したのですか?
村井:料理は、料理家さんにレシピから作っていただき撮影しました。他にも、養蜂専門家が作るはちみつ酒という特徴があるので、素材へのこだわりや生産者の思いなど商品開発の裏側にもフォーカスしたコンテンツなどを設けました。
__コンテンツも充実していますね。
村井:制作当時はまだ「ミード」でネット検索しても、あまり出てきませんでした。そもそも「ミード」がどのようなお酒なのか、自分たちもわからないところから始まっていたこともあり、いち消費者としてのフラットな視線でどのような情報があるとミードへの理解が深まるのかを考えていきました。
___コンテンツに関してはクライアントさんから何か提案があったのですか?
村井:コンテンツは弊社から提案しました。映像はミードの楽しみ方を伝えたかったので、かっこつけた動画というよりも、ドキュメンタリー映画のようなカットをイメージして撮影しました。あえてカタカタした動画に仕上げることで、リアルさを演出するなどの工夫も加えています。
作業効率も考慮してパッケージはシンプルなデザインに
本山:ミードは、スタッフの方が手作業でパッケージングしていくので、作業効率を考慮してシンプルなカッティングにしました。デザイン主体で考えると、面白さや驚きのある独自性のあるパッケージもあり得たのですが、形体が複雑になるほどパッケージ作業が難しくなっていくため、機能性を考慮する必要がありました。その結果、お酒の種類が増え販売数が増えた現在でも作業に大きな負担が生じないため、パッケージングを社内で完結できています。
__パッケージの種類も多いですよね。
本山:バリエーション展開のしやすさと店舗の雰囲気に合わせて、シンプルなデザインにしています。ショッパーは低予算化をかなえるため、既製品の袋にスタンプすることを提案し、他にはスタッフのネームプレートや名刺などさまざまなツールの制作をさせていただきました。
__パッケージ選んでもらうときも細かな説明をしたのですか?
本山:さまざまな瓶のサンプルを取り寄せて、実際にラベルシールを貼り、実物をみて頂きながらプレゼンしました。ギフトボックスも手作業でサンプルを全部作ったりして。でもパッケージは結構制限があって難しい部分もありましたね。割れ物ですし。製造工程の都合とか、配送の問題とか、パッケージ会社と相談を重ねて完成した感じです。
クライアントと伴奏しながら制作していきたい
___デザインのインスピレーションの源を教えてください。
村井:どこかっていうのはあんまりなくって、暇さえあればいろんなサイトを見ています。最新デザインをまとめたサイトもたくさん出ていますし。それと、他社で気になる制作会社の実績をチェックしています。「こういうことをやっているんだ」とか参考になりますね。
これを使ってみよう、真似してみようというのではなく、適当に見ているものが勝手にインプットされている感じでしょうか。普段から見ているものがインプットされて、アイデアの源泉になっています。でも、トレンドはさほど意識しないようにはしています。動画はWebブラウザで再生するには重たいメディアなので、情報を知りたいのか、イメージを伝えたいのかで、デザインにどのように組み込むのかを使い分けをしています。
__ずっとWebデザインを手掛けているのですか?
村井:そうですね。20年くらい前からですね。当時、Web自体はあったのですが、まだ確立されておらず、制限も多かった。
___今後やってみたいお仕事はありますか?
村井:多くの人から注目される大きなプロジェクトもやってみたい気持ちはあるけれど、「はちみつ工房」のような、これから成長していくお店や規模を拡大していく企業と伴奏するというか、サービスをサポートしていきたいですね。スタートアップの企業と伴走する、サポートするような仕事に携われるのが楽しみです。企業や商品の成長過程に関われることにやりがいを感じるので、そういう仕事を着実に納品していきたいと思っています。
ユーザー視点から得るものが多い
本山:弊社ではデザイナーも最初からオリエンに参加できるので、直接お話を伺うことでクライアント企業の課題が明確に把握できたり、自分なりにクライアント商品やサービスなどをユーザー視点から考えみたりすることができるので、得るものが多いですね。身近にその業界の人がいると、それとなく話を聞いてみることも多いです。ランドセルのカタログを作る時も、実際に身近でランドセルを購入した人に聞いてみたんです。直接デザインに関わるわけではないけれど、消費者の悩みや要望を知るところから始めることが多いかもしれません。
弊社の場合、既存顧客はもちろん、新規顧客に新たに話を聴くことも多くあるので、いろんな業界の人からヒアリングしていることが、巡り巡って参考になっています。一見デザインと関係なさそうなことでもターゲットのペルソナが想像できると、そこからヒントになることもあります。もちろんピンタレストも見ています(笑)。
__グラフィックデザインからこの業界に入っていったのですか?
本山:もともとはWebデザインから入って、そのあと紙媒体も手掛けるようになりました。紙媒体はエディトリアルやカタログ、広告など、幅広い領域で携わっています。仕事を通じて、はちみつを作っている職人の方にお話を伺ったり、商社の方とお話したり、いろんな方と話せるのがこの仕事の醍醐味ですね。
__これからどんなお仕事をやっていきたいですか?
本山:地域の観光資源を支えるような仕事に関わってみたいとずっと思っています。例えば、私は長野出身なのですが、長野県って観光資源がたくさんあるのに活かすのが不得意な印象があります。もしかしたらすでにあって、私が知らないだけかもしれませんが。もちろん見た目のブラッシュアップだけではなく、使いやすいパッケージの開発とか、販売方法とか、販路や集客方法など、デザインの視点から地域の産業や資源を支えられるような仕事をやってみたいなっていう想いをずっと持っています。
ファッションと音楽の仕事をやってみたい
福田:普段はYouTubeを見ることが多いです。それと昔からCMが好きです。その中で気になったものがあると、どうやって撮っているのかメイキングを調べると大体出てきます。「CGっぽいけど実はアナログで撮っている」とか、裏側の話が大好きです。
___好きなCMは何ですか?
福田:最近見た動画では日清ですかね。どこかネジが外れたような企画に惹かれます。キャスティングもそうだし、編集もそうだし。凄いなって感心しつつも、勉強になっています。それと、仕事が終わったら、野球を見ています。阪神戦。野球が終わったらYouTubeにまた戻って。Web CMだと60秒の尺も多くあるので、スキップせずに60秒じっくり見ています。長尺だと記憶に残るので、さらに勉強になります。
__これからチャレンジしてみたい仕事はありますか?
福田:僕も地域活性化とかに興味があります。それと、ファッションと音楽。どれも一回はやってみたい仕事ですね。
___映像の魅力を教えてください。
福田:同じ内容でも、音声で聴くのと、文章を読むのでは、受ける印象が全然違います。映像は話し手の性格が出やすく、その場の空気感も伝わってくる。それが映像の魅力かなって思います。
若い時の苦労は買ってでもしなさい
___デザイナーや広告業界を目指す若い世代へのメッセージをお願いします。
村井:コンプラ的に時代にそぐわないかもしれませんが、「若い時の苦労は買ってでもしなさい」と言う言葉がありますが、若い時の苦労は必ず力になると思います。苦手分野や他の人がやりたがらない仕事でも積極的にこなしていくデザイナーは目立って成長しています。努力した分だけ結果が出ますし、クライアントや社内からの信頼も得られます。それを積み重ねていくと、責任ある仕事も任せてもらえますし。もちろんくじけることもあると思いますが、我武者羅にがんばって欲しいですね。経験の浅いうちは、分からないことが多いので、時間と体力を使ってとにかくやるしかない。慣れてくると手のぬき方もわかってきますから。ハードな仕事ですが、経験を積んでいくとやりたいことができるようになります。
デザイナーはコミュ力が大切
本山:この業界に入るとPCで黙々と作業しているイメージがあるかもしれませんが、デザインは一人では完結しません。職種間のコミュニケーションが大切で、思ったよりもコミュニケーション能力が必要になります。お客さんもデザインに詳しい方ばかりじゃないので、打ち合わせのときは、制作のヒントが引き出せるような質問を投げかけてヒントをもらうとか。イメージを言語化、具体化して擦り合わせていく能力が必要になります。
どんな仕事もですが、デザインの仕事もコミュニケーション能力が大切なので、デザインの力だけでなく、日々コミュニケーション能力を磨いて、努力を積み重ねてください。
諦めずに続けることが一番!
福田:諦めないこと、辞めないこと、続けることですね。僕はこの会社にグラフィックデザイナーとして入社したのですが、コロナ禍くらいからグラフィックデザインを続けるのが難しくなってきたんです。グラフィックはきついと感じてしまって。その時「映像ディレクターにジョブチェンジしませんか?」と声をかけてもらい、映像ディレクターに転身しました。映像は学校など勉強したわけではなく、好きが高じて独学で覚えました。今の時代だったらAIを勉強するのもいいし、撮影だったらドローン操作を覚えたり、手に職をつけることができれば、なお良いと思います。
___貴重なお話をありがとうございました。
(取材協力:paddle design company)
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