おばあちゃんと私

通勤途中、たまに顔を合わせる90歳くらいのおばあちゃんがいる。
そのおばあちゃんは、近所の人とも交流しながら楽しそうに笑って過ごしていた。私もこんなふうにささやかでも豊かな老後が過ごせたらなぁって思ったりした。

ある日、大雨の中、傘も刺さずにシルバーカーを押してゆっくりゆっくり歩くおばあちゃんを発見した。すかさず傘をさしにいった。

「もう家はすぐそこだからいいんだよ、寒いから行きなさい〜」と、なかなか甘えようとしないおばあちゃん。
「いやいや、私もすぐそこなんですよね」と、帰る道すがらおばあちゃんがお家に入るまでを見届けた。
今日は久しぶりの通院の日だったらしい。

「風邪ひかなきゃいいなーと思うんだけど、、、大丈夫??」
と声をかけると、
「私、久しぶりに人間だなぁ、生きてるなぁって感じた!こんなことしてくれる人がいるなんて。」とにっこり。

雨がしのがれたことよりも、自分を気にかけてくれるつながりがあることに喜びを感じてくれたのか、と思うと私まで嬉しかった。

つつましく豊かに暮らしているように見えても、ひとりでの生活は孤独な瞬間があったのかもしれない。
そう思った私は、いつもおばあちゃんが顔を洗いに外の流しに出てくる時間に出勤するようになった。

数日見ない日は勝手にやきもきしたり、連続して見かけるとうれしくなって「いってきまーーーす!」と勢いよく声をかける。
おばあちゃんはいつも言ってくれる。

「行ってらっしゃい、気をつけてねー。」

おばあちゃんの名前は、まだ知らない。
それでもおばあちゃんに会うと1日の始まりがすごく心地が良い。

私はすっかりこのまちの人になったんだなぁと思ったのでした。  


PIECESが目指す未来は、子どもたちが孤立せず、優しい間が溢れる未来。
他者や背景への想像力、尊重し合うコミュニケーションなど、私たち一人ひとりが優しい間をつむぐ市民性を発揮していくことで、子どもの孤立は解消されていくと思っています。
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