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魂と炎の表現者 -エクスプロージョンな西城秀樹2-

前回西城秀樹さんのことを書いたら多くの人に読んでもらえた。私としては珍しいことで、とても嬉しいことでもあった。同時に秀樹さんのファンの方々の熱い気持ちや、秀樹さんへの変わらない情熱、その動機である秀樹さんの歌、曲、人の素晴らしさに感激している。読んでもらえたのは嬉しい、しかしそれは単に秀樹さんの魅力、個の力におんぶにだっこされている状態だと思っている。そして書きかけだった続きを載せてみる。単なる思い出話だが、伝えたい。


傷だらけの衝撃

書いていて思ったのは当時はこういう細かい感想は持てていたわけではないと思う、しかし情熱の嵐と激しい恋のまさに情熱的な歌唱は十分ショックだった。だが、さらに衝撃がやってきた。傷だらけのローラ。その曲の魂のこもった激しく、さらに情熱的な歌唱は、それ以上にショックでローラと叫ぶ声に憑依的なものを感じるくらいだった。秀樹さんの歌のすごさはもちろんだが、秀樹さんがそれだけその世界に入っているのだと感じた。だから外から聞き、見る子供の私たちは演劇さながらにそれを真似た。歌の語りの場面をローラアアアアのように。でもそれは結局表面だったんだなと思う。魂の歌唱に慣れていなかった私たちはそれをどうしても異世界のように感じてしまっていた。それだけ秀樹さんの歌唱が歌の世界に入り込み、そして逆に歌の世界から人々に伝えていたような気がしている。まさに傷だらけの心を表している叫びだ。私の経験の中では傷だらけのローラは秀樹さんの歌の中でも特別な部類に入る。
そして涙と友情。それはどこかで聞いたことのあるような曲で、歌謡曲としての安定感、安心感があったからすぐに憶えた。実は子供の頃は憶えるのが早いとカッコいいみたいなのがあった。発売日からラジオで流れてたのをその日に何度も聞き、できるだけその日に憶えられるだけ憶えて、友達にもう知ってるよという感じで自慢した。幼稚だったし、今思うと憶えたのはほんの少しの部分だったかもしれない。そして傷だらけのローラがすごくショックだったから当時は涙と友情の方がいいかも、と思っていた。もちろんどちらも別ものとして好きだ、だが涙と友情の秀樹さんらしい男っぽさ、しかし繊細でもあって、そういう部分も今でもとても好き。オーソドックスな曲調で、さらりと流れるような曲でもあるので熱い秀樹さんというよりも、熱さを持ったさわやかさを感じてとても心地よく入ってくる。



恋のポップで熱くなる

恋の暴走を聞いた時は秀樹さんっぽくなくて少し驚いた。でもポップでうきうきするような曲の中に変わらず熱い歌唱、私が書くのも失礼だが、かわいらしいとさえ感じてしまうノリ。もちろん歌詞が理由なのかもしれない。だがある面では野性的とも言える秀樹さんがアイドルっぽい感じを前面に出した歌で、しかもこんなにもぴったりと歌えてしまう。細かい記憶を憶えていないのでそんな風に感じていたのかもしれない程度だけど、今は歌唱の素晴らしさを感じずにはいられない。
そして君よ抱かれて熱くなれも毛色の違う曲調だが、秀樹さんの繊細な面が出ていると思っている。その頃は流行歌的な部分しか気にしていなかったが、悲しげな短調があり、途中で日が差すようにサビの長調になるような、そんな曲はクラシックとかでも聞かされていたし、そういうドラマチックというのも変だけど、そういう曲も好きだった。そういう曲を秀樹さんが歌うというのも好きだ。今でもこの二曲は好きだ。当時を思い出すし今聞いても発見があった。


そこら辺りから小学生にもなり様々な曲を聞くようになって、だんだんと秀樹さんの曲も色々聞く音楽の一つになっていった。しかし秀樹さんの歌はいつでもテレビで流れていて、特にブーメランストリートはこれぞ秀樹さんという感じの曲で、記憶に残っている。テレビでもラジオでも目立つ曲だった。そしてブーツをぬいで朝食を、も大人の歌という感じだったが秀樹さんの歌には年齢を超えたものも感じた。若くしても落ち着いていたり、すごくアイドルだったり。どの歌手でもそれくらいはあるよ、というかもしれないけど秀樹さんのそれは全然違うと感じる。そしてその頃の思い出深い曲は他にもある。


ロックンローラー

セクシーロックンローラーを聞いた時にはこれだ!って感じだった。駆け抜けるような曲、歌、ノリノリな感じが好きだった。決めるところは決めて、淀みなく駆け抜けるのだ。爽やかでセクシー、そういう言葉が似合う。もちろんロックンローラーという感じでヒデキシャウトっぽくもあり、最高だ。サビの歌詞の部分は明確に憶えていて、"君は天使になれ、俺は悪魔になる"という部分が特徴的でカッコいい、とてもシビれる歌。
もう一つその頃の曲で印象深いのはボタンを外せだった。ブーツを脱いで朝食をのような大人っぽい曲で、繊細な曲だった。その頃の自分にはあまり分からなかったけど、なぜか気に入っていた歌。それは同じことの繰り返しになってしまうが秀樹さんの歌唱のすばらしさだと思う。



そして子供の頃に一番印象に残っている曲がやってくる。炎。その炎という曲はレコードは持っていなかったが、今でも明確に思い出す。鮮明に。テレビ、ラジオで聞いていて、歌が大好きで、歌い上げる感じがとても響いた。あの時でも心にズンズン響いていたと思う。そして聞いているうちに歌詞も入ってきた。それもよかった。歌詞の、"一生一度なら、ピエロも主役さ、あなたの心を溶かしてみせる"からサビの最後までがとても印象深かった。それがとても印象に残っていて、ピエロが主役という幼児の頃に聞いたユーモレスクの解釈のような不思議のような、現実的に一瞬のチャンスだけならピエロも主役になれるという気持ち、その歌唱。なぜレコードを買ってなかったのか不思議なくらいだ。愛があり、苦しさがあり、強い気持ちがある。そして打ち勝つという強さが見える。それが子供にも伝わってくる。それが伝わり聞いていたら、秀樹さんの炎で絶対に氷は溶けるような。そんな風に、そんな力強い決意のようなものを感じた。とても好きな歌。


そして上記の炎が子供の頃の秀樹さんの大団円。その後にもYOUNG MANの大ヒットとかあった。YOUNG MANは若者への応援歌って感じの歌で、ああいう歌は秀樹さんじゃないと歌えない気がする。前回触れたが、新御三家のほかの歌手にYOUNG MANが歌えるだろうか。いや、歌えるだろうし、特徴を持ったそれぞれの光るYOUNG MANができるのかもしれない。だが、秀樹さんのようにパワフルではないだろう。素晴らしいのは応援歌という性質だけでなく、それに見合うパワーがあるということ。秀樹さんはそれがあって次から次へと力が沸いてくるような歌唱。また、繊細な曲を歌っている秀樹さんの存在、それも同じ秀樹さんなのだ。その幅広さを考えるとなんて素晴らしい歌手なんだろう、と、それしか思い浮かばない。その頃はそこまで考えもしなかったが、今思うとなんでもできる超人のようにも感じる。そして八十年代になり、テレビやラジオでよく流れていたギャランドゥはよく聞いていた。ジャズっぽいロックで秀樹さんの表現力ならではの歌唱でとてもいい。レコード音源はラジオで少し聞いたくらいで、あとはテレビで見ていた。もっと熱心に聞けばよかったと今では思っている。自分の好みが広くなり、様々なものに興味も出ていた。それからはロックやニューウェイブ。秀樹さんのコラムを書かれたサエキ師匠の歌や歌詞や曲を聞いていた。そして少しビートルズ以外の洋楽も聞くようになっていた頃、秀樹さんと邂逅する。いや秀樹さんの存在はいつもあったんだけど。


AORの西城秀樹

歌謡曲からも離れ、いろいろな音楽の洪水の中に浸っていた時、ラジオを聞いていたらある曲が流れてきた。正確にいうと曲が先ではなく、曲名とアーティストの紹介が先だった。それは、腕の中へ -In Search of Love-という曲でなんと秀樹さんとバリー・マニロウさんとのデュエットだった。すごく驚いた。AORは大人のロックって感じで、自分が聞いていたものとの対局にあったのであまり好きじゃなかったけど、バリー・マニロウさんの曲は化粧品会社のコマーシャルにかかってたり、ラジオでも度々かかっていたりして認知度は高かった。コパカバーナは特によくかかっていて印象深い。後にラテンのサウンドもよく聞くようになったが、もしかしてこれが最初なのかもしれない。それぐらい有名だった海外アーティストと秀樹さんがいきなりレコードを出すというのは驚いた。しかも後に聞いたが仲いいらしい。さらになぜかバリー・マニロウさんが日本語で歌っていた。え、と驚いたが、その時に思ったことは洋楽アーティストよりもスゲエじゃんって事だった。やっぱり秀樹さんの歌は素晴らしい。負けないし負けてない。それはバリー・マニロウさんがネイティブじゃない日本語で歌ってるとか好みじゃないというわけではなく、秀樹さんの持っている絶対的な歌唱力のすばらしさだと思う。曲も八十年代風で違和感がなく、今思うと驚きであり、時代の必然だったのかなと思ったりして。


ターンAターン

それから随分経ち大人になり、様々な体験、経験をし、お酒の頃も過ぎ、いやちょうどお酒の頃だったか。何年も毎日夕方から酔っぱらっていた。そして海外ドラマや映画を見るのだ。そういう時に∀ガンダムと出会った。ここではガンダムのことは触れないが、子供の頃にリアルタイムで見ていた、そして∀ガンダムはリアルタイムに見たわけではない、ということだけは書いておく。とりあえずガンダムだから見た。そこでいきなり出会った。熱い邂逅。聞いた瞬間に分かった。秀樹さんの歌。アニメの主題歌だがそこはもう秀樹さんの世界。後に音源も聞いたが、ホーミーで始まり女性のコーラスが特徴的、ギターのリズムが心地よくストリングもソツがない。特徴的なのは笛ので独特の雰囲気と盛り上がりを呼ぶ。ベースとドラムも踊り、オーケストラヒットが派手にノッてくる。その中でとても力強い歌唱。ギターソロに渡り合い、負けない声、まるでギターソロは前座でしかないよう。特徴的な笛のも引き立て役だ。これは素晴らしい。アニメをリアルタイムに見ていないので随分後に知ったことになる。当時聞けなかったのが残念でならない。しかも蛇足だが、最初と最後のホーミーはサエキ師匠と同じくニューウェイブとして聞いていたヒカシューの巻上公一さんだと今回初めて知る。確かに私は日本人でホーミーをする人は自分は巻上公一さんしか知らない。そのホーミーもギターソロも、特長的な笛のも、秀樹さんの歌を彩る要素の一つ。そしてその中心に輝く秀樹さんの歌。それはとても太い幹で、それがとてもすばらしい。書き方はちょっとアニメというか抽象的になったけどそう思う。

そして今回曲を検索した時に出てきたスタジオライブ。これを聞くと秀樹さんの歌唱の凄さが一目瞭然だと思う。子供の頃から秀樹さんの歌をテレビで見ていた世代には当たり前だけど、知らない人に見せると歌唱力に驚くと思う。いや知っている世代でも改めて思ってしまう。すごい。この安定感は並の歌手では出せないとつくづく思う。こういうのを聞くとみんなに秀樹さんの歌を聞いてもらいたくなる。すごい。すごいとしか言えない。


ここまでが私の秀樹さんを聞いてきたすべて。今からはデビュー50周年復刻第三弾のライブアルバムをゆっくりでも聞いてゆきたい。また、腕の中へで触れたバリー・マニロウさんのコパカバーナだが秀樹さんは歌っているという。探してみたら西城秀樹デビュー50周年記念7枚組DVD BOXの中にあるようだ。それをじっくり見てみると、懐かしいテレビ番組ばかりで、コパカバーナだけではなく色々な歌を聞いてみたくなる。ステージのパフォーマンスも見たいから。手は届きにくいけど後々にでも見て、聞いてみたい。今回秀樹さんのライブ盤が出ることを知り、思い出してみて聞きなおしてみて書いてみたが、聞きなおすときに膨大な影響力を感じた。ワパーももちろん、繊細さや歌の世界を広げて伝えてくれている部分、それを再認識して幸せな時間を過ごすことができた。また自分の毎日の音楽の中に秀樹さんが存在してゆくだろう。どうしても月並みな表現になってしまうが、それしかないんだ。そう、唯一無二の歌手、西城秀樹さんは最高だ。

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