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乞う音楽

音楽を聞くのが好きだ。歌うのだって好きだった。鼻歌程度なら今でもいつでも歌ってる。楽器好きだ。演奏とかはできないレベルだけど、触って音が出ると気持ちいい。触れるだけで許されるのなら様々な楽器に触りたい。そういう人も多いのではないだろうか。

音楽を聞くことに対して頭が硬い私は視野が狭く、自分の好きな流れ以外のものに手を出しにくい。音楽を聞くということは時間もお金も絡むのでなおさらだ。お金の部分は、今では以前より選択肢は増え楽になったが、時間はどうにもできない。だが大きな原因はそこから外れると何に手を付けていいか分からず、迷子の子供のようになり、だだっ広い荒野に一人立ちつくしているような気持ちになるからだ。身動きが取れない。だから自分の流れの中にあるもの、もしくはその派生を聞くばかりなのだ。最近は便利で、その派生はレコメンド機能でも実現されるようになったので、その中で楽しめているし、逆を言えばその中で新しく探すというのが精一杯だ。だがそれでも新しい何かに触れてみたい。聞いてないけど新しいものを知りたい。片っぱしから聞くのも選択肢だけど、それはBandcamp Daily程度にとどめていて他のこと、友達などの人のおすすめを聞いてみることにしている。私がこのnoteに書いている街の選曲家でもないけれど、自分も昔はテープを編集して友達に聞いてもらったりしていた。人によっては大きなお世話という人もいるだろし、実際こころを許すほど近い人でも自分の世界を侵害されたくないと言う人もいた。そういう人には迷惑だったかな。でも私は待っている。迷子の子供は信頼できるガイドから教えられる知らない世界を見てみたいのだ。ここには色々な人に教えてもらった曲を聞いてみて、印象に残ったり他の曲も聞いてみたいなと思ったものを書いている。


喜劇 – 星野源

星野源さんはサケロックを細野晴臣さんのトリビュートで知り、解散してからも一度は聞いてみたいなと思っていた。対談やテレビ番組等で細野さんとの距離もどんどん近くなっているようだし興味は尽きない。しかし聞けてはいなかった。あるとき具体的な曲を偶然人に勧められ、聞いてみることになった。この曲はすぐ歌が始まるけど、始まってすぐ分かるのは音、凝ってるなあと思った。演奏もしっかりしたリズム隊に多彩な音が聞こえてくる。エレピ、ギターが気持ちがいい。時に現れてくるオルガンだったりちょっと違うけどチェレスタのような音色のものが色を添えていて美しい。だが基本の音が厚いゆえの安定感だと思う。歌はとても上手というわけではないけど、安定しているなと思うし、大サビのファルセットのところも上手だと思った。サケロックがインストバンドだったので知らなかったけど、彼は歌もイケる。
歌詞は誰にでも伝わるもの、少し細かくいえばサビは具体でABメロは抽象気味。言葉が優しいし、普遍的な時間の中に当たり前のことを当たり前に愛せるような、それを言えるような歌詞。負の部分が先に来るけど結局は幸せあふれる結果につながるというところがいい。それこれ含めいい歌だと思った。星野源という人の音楽に興味が湧いた。


プライマリケア - ドミコ

教えてもらった人とは音楽の好みに共通性を感じなくもなかった。いや、その人は様々なものを聞いていただけで、私の好みの曲等も包括していただけなんだろう。この曲はサイケデリックロック風味がいい。ゆらゆら帝国の雰囲気も感じる。ヴォーカルに特徴があり、ギターのアレンジがサイケデリックロックって感じ。パロディ的センスも面白いなと思った。ベースは落ち着いていて仕事をこなし、ドラムも含めリズム陣が堅実なのもいいと感じられる。でもこの曲は、というかこのバンドはというべきなのか、やっぱりボーカルに尽きる。唯一無二のとは言わないけれど、独特で曲調にあっている。
歌詞で特に思うのは私の思考と親和性があるかもということ。よくあるような言葉ばかりやディテールだと表現されすぎていてつらい。これくらいの抽象がいい、いやもちろん具体な部分もあるけど、いい感じだと思う。例えば、愛すべき矛盾、血、黒く化粧、ぐさぐさっとだまして、とか、そういう言葉の積み重ねには意味はないように思えても、それが重なるといい響き、いい思い、いい感じになってしまうような、そういうものを感じる。当時この曲ともう一つの曲、グレープフルーツジュースを教えてもらい、ドミコの他の曲も聞いてみたくなったのを憶えている。


90'S TOKYO BOYS - OKAMOTO'S

これは最近とても好きで尊敬している人に教えてもらった曲。これもベースのハマ・オカモトさんが細野晴臣さんとラジオで共演したり、webの記事で共演していたのを知っていた。基本的な知識はなかったが、聞いてみると正統派の素晴らしい四ピースバンドだった。なんでも細野さんがらみってワケでもないけど、OKAMOTO'Sというバンドの評判は聞いていたのに初めて曲を聞いたのは、その人に勧められたからなのでやはり感謝だ。この曲はイントロのギターから始まってせーのという感じで全体が動きだす。どれも骨太なサウンドで、ドラムは堅実、ベースは躍動している。ギターもきっちりしてて派手ではないにしてもキマッてるって感じ。ボーカルはそんなに上手には感じないし、声が鋭いとか歌い方に特徴があるということでもないのだけど、ラップの部分などキレがよく、ロックという感じで好きだ。
歌詞はなんというか青春って感じで私には若さが分からない部分もある、だけど好きかもしれない。こういうのでいい、それだけでいいって感じ。日常というのもよかった。淀み切った日常の中にある真実、そういうものを歌っているようにも思う。バンド全体が骨太のロックで、各パート全員の実力があるのがいい。しかも過去に機械にお勧めされ聞いていたドレスコーズのサポートメンバーだったというのも面白い偶然だった。


east end girl - DE DE MOUSE

最後におなじみとは言わないが、以前も書いた機械によるお勧めから最近ずっと聞きまくっているDE DE MOUSEさんのeast end girlのことを書きたい。眠れない私は寝るときに聞く音楽をネルチルと名付けて聞いている。以前選曲家にも書いたNonameさんのTelephoneとかをよく聞いていたのだけど、ある日、どこかのレコメンドにDE DE MOUSEさんの一枚目のアルバム、tide of starsのSPECIAL EDITIONが出ていて偶然にも聞いてしまった。それがDE DE MOUSEさんとの出会い、正にありがとう機械だ。そのアルバムの曲の多くはサンプリングを多用したような曲で、言語は分からないが特徴的な歌のサンプルもちりばめられていた。またインストゥルメンタル曲もあって、聞いてすぐ、これはネルチルにいいなと思った。ドラムもガンガン鳴り、迫力のある音が出る曲もあるが、それでも総じてこころを落ち着けてくれるものだった。そして次に聞いたのがこのシングルのeast end girlだった。上のビデオはライブ収録になるが、この曲は前作を踏襲したような曲になっていて、チルアウトというわけではないが、それでも私を安らげてくれる曲だ。DE DE MOUSEさんに関してはこういう抽象的な説明ばかり出てしまうし、サンプリングのループを切り貼りしたような印象を受ける曲が多いけど、それとは別にキラキラした音がちりばめられていて、それがDE DE MOUSEさんということなのだろうなと思う。そして不明な言語のサンプリングループも独特の響きで独特の音階と思える。それがどうしてかしっくりくるのだ。今はまだその二枚しか聞いてないが、そろそろDE DE MOUSEさんのまだ聞いていないアルバムも聞きたくなっている。




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