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084_高卒で働くとは

私の子どもたちは社会人になってから、それなりの年月が経ちました。

同世代で保護者だった知人の子どもたちも、ほぼ同一のキャリアで社会人になっています。つまり大学を卒業して就職、そして転職という具合です。

それを見るにつけ、本当に高卒で就職をしてキャリアを歩んでいるという子は少なくなりました。大学全入が叫ばれる時代にあって、高卒での就職は少子化やら何やらの事情も相まって減少したのは事実でしょう。

知人の子息で数人、高卒で一般企業に就職した子がいましたが、いずれも短期間で辞めています。理由は様々でしょうが乱暴な結論で言えば就労者としての成熟を求められてないという事でしょうか。

辞めた高卒の子たちの職種は概ね大企業の系列の工場や倉庫などで、単純労働の部類です。パンの製造工場や量販店の流通センターの作業員など。もちろん言うほど内容は単純ではないのですが、半年で業務の大半を覚えてしまい、後はひたすらルーティンの日常となります。

辞める理由は様々です。面白くない仕事、退屈な毎日、勤務時間が異常に長い、将来が不安、等々ですが、決定的なのはそこで働く10年先輩の姿に自身の10年後を見てしまう事です。凡そ、それは好ましくない自分の行末でしょう。

大卒者の場合でも職場の10年生の姿に幻滅してしまう事は少なくないでしょう。しかし大卒の年齢であれば、まだ否定的な見方から視点を変えて少しずつ分析して熟考する気持ちはあります。それが高卒では、とてもではありませんがそれを持ちえないのです。

ある子は工場勤務のその仕事を「夜勤に回される」という理由で辞めました。大手の工場の正社員です。コネの入社で、今どき工場労働者は非正規雇用が多い中で、ある意味恵まれたポジションだったはずですが、それを分かっていなかったようです。親御さんは引き留めて説得しましたが、徒労に終わりました。
夜勤に云々というは口実で、日ごろから職場に不満を抱いていたのは明らかです。

そして自動車が好きだからという事で、県内にある自動車の専門学校に通いました。その後は分かりませんが、おそらく自動車関係に進んだのでしょう。

それぞれの人生、それぞれの主観ですからこうした道を進むことに是も非もありません。真面目に働けば出世や結婚や財産を獲得して幸福を得る事はできると思います。

ただ私の印象として、その子たちには必要以上に「自分は高卒だから」という不思議なコンプレックスめいた言動がある事です。
私も上記の話は保護者の知人として、あるいは子どもの同級生として聞いた話ですからその真意は分かりません。ただ何となく「高卒だから」という言葉を、多く親御さんが発するのではないかと疑っています。

テレビのちょっとしたバラエティ番組でも「高学歴タレント」というのは目につきます。SNSやブログでも、自身のプロパティとしての学歴をアピールするユーザーも多いです。気にするかしないかは受け手次第ですが、親となって子どもの身を案じる立場になると、気にする人もいるのでしょうね。

高度な情報社会の側面で、こうした無意味なコンプレックスが蔓延するのは好ましくありませんが、大勢のユーザーがそういう指向であるのは否定できないのでしょう。

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