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犯行期 / エッセイ

 もう三月も半ばというのに一室の壁のカレンダーだけ一月のままであることに気がついた。その時、だらしなさなのか時空が歪んだというのか、よく分からない化合物のような感情を抱いた。一月を千切っても二月がある。一月と二月の二枚を千切らなくてはならない。今年のために掛けたカレンダー。一月には暦をこれで数えた。しかしそれもどこかでしなくなったはずである。だから一月を捲らずそのままになっているのだ。二月は一月の下に隠されたままこうして三月を、それも半ばまで来てしまったのである。
 私は、一枚ずつ千切ろうか、二枚まとめて千切ろうか、と逡巡しているうちある思いに囚われた。蠱惑的な考えである。それはこいつに一月の顔をさせたまま年を越してしまおうか、というもの。奇想である。倫理にもとる行為である。しかし私はこの奇想に早くも愛着と親しみを覚えていた。
 あと九ヶ月と半月、私はこの犯行を完遂してみせるとここに誓う。

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