オカマ達の家
景子が失踪した頃、私は高校生活を満喫していた。
そしてある日携帯電話に、景子から連絡があり、実は家出してきちゃったの!と言われた時は藪から棒だった。
景子は郊外で、オカマ達4人が住む家で一緒に暮らしていると言った。
地元の不動産会社の息子である景子の彼氏は、なんだか高校生の私からみて優しい感じの人だった。
私は久しぶりに景子と会い、ショッピングモールのベンチに座って話していたら、同居人のマルちゃんという人から電話があった。
駅で会いたいとマルちゃんは言うので、私と景子はそこに移動すると、3人の警察官が景子を取り囲んだ。
「一緒に来てくれるかな?」
産まれて初めてパトカーにのり、警察署で私もいろいろと聞かれた。
「景子の家に泊まったことある?」ときかれて「はい」と答えたら「じゃあ景子との間に肉体関係はあるんだね」と意外なことを言われた。
いや、ないですと言っても「証明できない」と言われ、なんか勝手に関係があると思われて不愉快だった。
景子のほうは、失踪届が取り下げられてないだけってことでしばらくして開放された。
警察官が私に向けた聴取は、全く意味のないものだった。
その後も、時々景子の家にお邪魔した。
中学生の時のノリでやってくると、あの子図々しいわねと言われた。
オカマ達の家は、なんだか楽しかったけど、私は迷惑がられていたかもしれない。
そんなことわかっていなかった私は、「これ!景子に聞いて欲しい!」と景子にCDを貸してあげた。
そして、家計が切羽詰まっていた景子はそのCDをBOOKOFFに売ってしまったのだ。
高校生がお小遣いを貯めて買ったCDを、売ってしまうのかと唖然としてしまった。
闇金ウシジマくんでも、カメラを黙って売ってしまったオカマちゃんがいたが、たびたびそういう人がいるみたいだった。
お金が無ければ…
あとから聞いた話だが、景子の彼氏は、自宅から金を盗んでこいと指示していたらしい。
一見優しそうにみえても、とんでもない男だったことがわかった。
オカマ4人が過ごすのはお金がかかったのか、細かい事情はよくわからないけど
景子は男性向けのAVに出演して生活費を稼いでいたらしい。
「どれだけ会話を長引かして、本番を短くするかよく考えたよ」と、笑いながら景子は話していた。
手のひらに梅毒のあとがあったり、ケジラミなどもお互いうつしあったそうだ。
薬はお互い折半して、飲んでいたらしい。
それだけ切迫した経済状態なら、他人のCDだって平気で売ってしまっても仕方なかったのだろうか。
高校卒業後、こんなにも厳しい生活を景子が強いられていたなんて、私は全然知らなかった。
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