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星を見る

星は瞬くのだということを知った。
その駅には何人もやっては来なかった。傾いた電信柱、赤く錆びた錠前のかかったフェンス、目の眩む、オモチャのような丸い街灯が3、4つ浮かんで消え、背筋の曲がったベンチの脇にある嫌な黄色のライターが物欲しげに私に触れただけだった。
霜の降りた草の上を裸足で歩くと、気持ちの良さとつんざくような痛みがあり、また冷たいその上にたおれると、かつて柔らかであった木の芽たちは、私の両の手指を突き破って、光を得ようとその身を捩る。そのように、咽ぶ私を抱きしめるものはなく、冷たくなった鼻に、耳朶に、柔く口付けるものはなく、悴んだ手を手を引き、暖かい部屋へ連れてゆくものは誰もいなかった。
そのように夜を見上げた時、星が瞬くのだということを私は知った。

2023.11

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