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詩 | ブランコ

未踏の森であるはずの
森の中をすすんでいたとき
目の前に一筋の滝の一部が見えた

できる限り近づいて行ったら
誰かが乗り捨てた
ブランコが1つあった

なんだ もう既に
ここを訪れた人がいたのだという
一抹の寂しさを覚えた

けれどもこの滝の光景に
胸をうたれたからその人は
ブランコを作ったのだろう

明白な理由は分からない
腰をおろすため?
遊んでみたかっただけ?

顔も分からぬその人の
思いをとらえてみたくなって
僕はブランコに乗った

少しでもブランコを捨てた人の思いを
理解したくなって
僕は足を揺らしつづけた

徐々に僕が乗ったブランコは
揺れながら
高度を増して行った

運動エネルギーは
最大高度を達成した途端に無になり
すべて位置エネルギーに変わる

このまま止まれ!という
僕の意思とは裏腹にブロンコは
後退し最初よりもっと後ろにさがる

最高高度に達したとき
僕は確かに見たんだ
別のブランコに乗る君の姿を

束の間のことだったから
誤解かもしれない
思い込みかもしれない

ただ寂しかっただけかもしれない
でも一瞬でも微笑んだ君の姿を
ずっと忘れることができない



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