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呼吸がままならないの

(本作は1,094文字、読了におよそ2〜3分ほどいただきます)

 ん?  私、今どこにいるのかしら? ……それに、何なのよ、この固いベッド。えぇと、あなたはひょっとしてお医者さん?  私に麻酔でも打ったのかしら?  体が言うこと聞かないわ。それに、どうしちゃったんでしょう、呼吸がままならないの。苦しいわ。ねぇ、あなた、突っ立ってないで助けなさいよ。目の前でレディが……えぇ、そうよ、自分でレディって言っちゃったわよ!  そんなことはいいの。レディがこんなに苦しんでるのに、よくもまぁ、平気でいられるわね。ねぇ、聞いてる?  どうしたの?  無視するつもり?  私の声、聞こえてる?  ちょっと、いい加減に……アレ?  あぁ、どうしましょう、もしかして私、喋れてないのかしら。声が出ていないようね。あぁ、苦しいわ。まさか、私、このまま死んじゃうのかしら?  そんなの嫌だわ。あなた、助けてくれるんでしょ? 

 ちょ、ちょっと、あなた!  そんな物持ち出して、何しようと……ま、ま、まさか!  えっ⁉︎  い、いきなり手術始めるつもりじゃ……きゃーっ!  や、やめてぇー!  まだ麻酔が効いてないのよ!  あなた、それでも医者なの?  あれ?  今、グサって刺したでしょ?  なんか身体がスーッとするんだけど、え?  切ったの?  いつの間に?  痛いっ!  痛いんだけど!  やめてお願い!  本当に麻酔打ったの?  もっと優しく出来ないの?  乱暴過ぎるわ。だから、痛いんだってば、この若造!  ヘタクソ!  ヤブ医者!  殺すつもり?  あなた、本当に医者なの?  なんか、余計に酷くなったじゃないの!  もぉ、どうしてくれるのよ、体中が痛いわ。それに、息も出来ない…… 

 な、何よ?  今度はどうするつもり?  こんな窮屈なストレッチャーに乗せて、何処に連れて行くの?  せめて、もっと楽な姿勢で寝かせなさいよ!  私、患者でしょ?  それに、何なのよ、このシーツ。モゾモゾして寝心地が悪過ぎる!  あとさぁ、この山型に盛ってる黄緑色の泥みたいなの、キモいんだけど!  ツンとする刺激臭も、耐えられないんだけど!  あぁ、もう絶望的……こんな時におかしいね、なんだか眠たくなってきたわ。今頃、麻酔が効いてきたのかしら?  それとも……もう、私、助からないのね?  死ぬんでしょ?  こういう時って、本当に過去の記憶が蘇るものなのね……あの頃は楽しかったなぁ。もう痛みも何も、感じなくなってきたわ……あの頃かぁ……そうねぇ、また海で泳ぎたいなぁ……でも、もう、エラから上手く酸素が取り込めないの。ここまでのようね、意識が遠のいていくのが分かるわ……