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大きな栗の木の下で

 童謡「大きな栗の木の下で」は、誰でも知っている曲でしょう。お決まりの振付を伴う「遊び歌」としても有名です。

 子どもの頃、当時から捻くれ者だった私は、このタイトルは日本語として不正確ではないか? というイチャモンを先生にぶつけたことがあります。
 つまり、大きな「栗の木」なのか、「大きな栗」の木なのか、どっちやねん! ということです。

 どちらにしても、栗の木であることは分かります。でも、「大きな栗」が採れる品種の栗の木なのか、木そのものが大きいのか、「大きな」という修飾語が「木」と「栗」のどちらに掛かっているのかにより、微妙にニュアンスが変わってくるのです。
 些細なことですけど、子どもの頃の可愛くない私にとっては大問題で、先生にまるでハチドリのようにウザ絡みしていたのです。

 そもそも、この曲は戦時下の日本で、米兵さんが口ずさんでいたものが広まったと言われています。ということは、アメリカの歌なのか……と思いきや、元はイギリスの民謡なのだそうです。それを、アメリカのボーイスカウトがスカウトソングとして採用したのを機に有名になり、戦後の日本で、元は口伝えで広まったと言われています。

 その曲に日本語の歌詞を付けたのは、実は誰なのか分かっていません。

大きな栗の木の下で
あなたとわたし
なかよくあそびましょう
大きな栗の木の下で

※「なかよく」は「たのしく」と歌われることもあります。

 この歌詞(ほぼ訳詩に近いものです)を受けて、阪田寛夫が2番と3番の歌詞を付け足しました。
(有名な童謡とは言え、2番と3番はまだ著作権保護期間中かもしれないので、ここでの転載は自重します)

 ではそれなら、原詩があるはず! と思い、調べてみました。すると、私の謎は解けました。

Under the spreading chestnut tree,
There we sit both you and me,
Oh, how happy we would be,
Under the spreading chestnut tree.

「spreading 」な栗の木の下なのです。「spread」は、直訳すると「広げる」「蔓延する」という意味ですので、その形容詞形ですから、「大きく広がる栗の木の下で」というニュアンスが正解のようです。
 背の高い栗の木をイメージしていましたが、どうやら横に大きく広がるようなイメージなのかもしれません。
 どちらにしても、大きな「栗の木」であり、実際にその木に成る栗の実が大きいかどうかは、歌詞からだと誰にも分かりません。
 まぁ、そうだろうと思っていましたけどね。

 いやいやいや、それよりも続きがおかしくないですか?

There we sit both you and me,
Oh, how happy we would be,

あなたと私がそこに(一緒に)座ります。
あぁ、なんて幸せなんだ!

 という感じですよね?
 これって、明らかにラブソングじゃないの?
 栗の木の下に座って、フォークソングで弾き語りしてるイチャイチャカップルの話じゃない?

 元はイギリス民謡と書きましたが、フォークソングだったという説もあるのです。歌詞からして、個人的にはその説が濃厚のような気がします。

 しかし、アメリカのボーイスカウトを経由し、日本に入ってきて……どこかの誰かさんが、この詩と曲調からイメージして、子ども向けの童謡用に訳したのです。そのセンスは、本当に素晴らしいと思います。



 何故、突然栗の話をしたかと言いますと、実は、先日お客様に栗をいただいたのです。
 毎年この時期になると、色んな方に栗をいただくのですが、今年はかなり栗が不作らしく、これが我が家では最初で最後の栗になるかもしれません。いえ、まだまだ受付中です! くださる方、喜んで受け取りますので、ご遠慮なく!

 数は18個ですが、一つ一つがめちゃくちゃ大きい栗です。東京ドーム何個分あるのでしょうか?
「大きな栗」です。
 セオリー通り、これを丸一日程度、水に浸して冷蔵庫に入れておきます。汚れ落とし、アク抜き、虫対策(虫食いの栗は浮きます)だけでなく、調理後、皮が剥きやすいという効果もあります。

 そして、1日経って水からあげると、調理の開始!
 今回はシンプルに茹でて食べることにします。

 栗を茹でるポイントは四点あります。いや、四点しかありません。

①水量:コレは栗がヒタヒタにギリギリ浸かるぐらいの量がベストです。

②塩加減:水の量に対して1%の塩を入れます。なので、鍋に栗を入れ、水をヒタヒタになるまで注ぐ際、軽量カップなどで水量を測りながら注ぐことをおすすめします。今回は、水750ccだったので、塩は小匙3にしました。

③火加減:最初、沸騰するまでは中火ぐらい。目安として、10〜15分ぐらい掛けて沸騰するぐらいの火加減がいいそうです。そして、沸騰すると、弱火にして40分ぐらいグツグツと茹でます。この時、弱火にし過ぎて、グツグツ感が消えるとダメです。途中、1〜2回、蒸発した分の水を補給する人もいます。私は、25分ぐらい経った時に少しだけ足します(単に空焚きが怖いから)

④放置:40分経ったら火を止め、そのまま1〜2時間放置します。これ、すごく大切です。余熱でゆるゆると熱が入る上、アク抜きも出来るのです。粗熱が取れ、常温ぐらいに冷めたら食べ頃です!

 めっちゃ美味しかったです!
 秋の恵みをありがとうございました。