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30分でできて企画が激変する3C分析

フレームワークはシンプルなものしか機能しない

マーケティングや企業戦略の世界には沢山の「フレームワーク」があります。世に溢れるこうしたフレームワークは、どこかの企業で実際に使われているものなのでしょうか。

個人的には懐疑的です。過去いくつかのグローバル企業でマーケティングマネージャーを務めてきましたが、世に知れた「フレームワーク」を使って業務をした経験があまりないからです。

会社として取り入れていなくても、自分自身でやろうとしたことはあります。しかし、一部の例外を除き、あまりうまく行きませんでした。

過去を俯瞰して見ることができる、今ならその理由がわかります。それは、マーケティング施策を動かすには社内外、上下左右、様々な関係者と連携して進めていかないといけないからです。書籍や専門誌、セミナーで学ばないと使いこなせないような複雑なフレームワークを、そうした全員が理解してもらうのは現実的ではありません。

一部の例外がある、と言いましたが、例外は二つのケースに分類できます。

一つは、それが組織と業務フローに組み込まれている場合です。上層部がそれを深く理解し、そのフレームワークに従って組織と業務を設計している場合、社内外の関係者はいくら難しくてもそれを学ぶ必要があります。そういう場合は、大体そのモデルやフレームワークを理解するための研修も、セットで仕組み化されています。

自らが組織と業務フローを設計できる上層部であるか、上層部に働きかけて組織と業務フローを変える強い政治力を持っていないと、これはなかな実現できません。かつ、例え実現できたとしても、浸透させ機能させるのにはとても時間がかかります。

そこで、もう一つの例外です。それは、シンプルで誰もが即座に理解できるフレームワークを使う場合です。

もっともシンプルでもっとも「使える」3C分析

中でももっともシンプルで、それゆえ個人的にもっとも実務での利用頻度が高いフレームワークが3Cです。顧客(Customer)、他社(Competitor)、自社(Company)の3つの視点で事業やブランド、あるいはキャンペーンの背景を分析する、というフレームワークです。

私はこれに少しアレンジを加えて、以下の6つの問いに答える、というフレームワークとして業務に活用してきました。この記事では、このフレームワークについて5分で解説します。

  1. 顧客は誰か?(Customer : 顧客)

  2. 顧客は何を求めてるか?(Customer : 顧客)

  3. 競合は何をしているか?(Competitor : 競合)

  4. 競合はなぜそれをしてるか?(Competitor : 競合)

  5. 自社は何ができるか?(Company : 自社)

  6. 自社は何をするべきか?(Company : 自社)

何より、まず実演してみましょう。

いつもお世話になっているnoteが、noteを使って記事を書いているクリエーターを講師とした社会人向けオンライン教育事業「note大学」を立ち上げたとして、その認知度UPと無料トライアル促進を図る、という架空の例で考えてみます。

  1. 顧客は誰か?(Customer : 顧客)

    • 自己啓発、スキルアップを意識する社会人

  2. 顧客は何を求めてるか?(Customer : 顧客)

    • 今すぐにはキャリアチェンジを考えていないが、将来に備え、キャリアの選択肢を幅広げるためにスキルを身につけておきたい

    • やりたいことが定まらない。新しいスキルを身につけることで、やりたいことの解像度を上げたい

  3. 競合は何をしているか?(Competitor : 競合)

    • 資格系:主にマスメディアを使った認知度の向上

    • ビジネススクール系:受講生&卒業生の強いコミュニティーづくり

    • メディア系:インフルエンサー起点の講座作り&プロモ

  4. 競合はなぜそれをしてるか?(Competitor : 競合)

    • 資格系:講座が多様で市場が大きく、投下コストを正当化できる

    • ビジネススクール系:高額・高負荷なため「強い説得」が必要

    • メディア系:講座が少なく市場が狭いため効率を追求している

  5. 自社は何ができるか?(Company : 自社)

    • 自社メディア(note)を使った告知、また得意なSNSを使ったプロモ

    • 自社メディアを使ってくれているインフルエンサーのリクルート

    • 価値観の近い自社メディアユーザーのコミュニティー化

  6. 自社は何をするべきか?(Company : 自社)

    • 「自分の天職を見つける1日」というコンセプトの、note大学の名前を冠したオフラインイベントを開催する。インフルエンサーによる講演、パネルディスカッション、ワークショップ、ネットワーキングイベントを通じて、参加者は知識のインプットとコミュニティー作りができる。参加者&インフルエンサーに、イベントの様子を熱量を持ってSNSで拡散してもらう。

顧客分析、競合分析は打ち手の選択肢を広げてくれる

この架空の事例を頭に入れた上で、それぞれを考える際のポイントを解説していきましょう。

  1. 顧客は誰か?(Customer : 顧客)

    • 改めて、その商品やサービスを使うのは誰なのか?を言語化してみましょう。当たり前すぎることではあるのですが、この時点で関係者間の共通認識ができていないことがとても多い、というのが経験則です。

  2. 顧客は何を求めてるか?(Customer : 顧客)

    • これもまた当たり前すぎることなのですが、やはり共通認識ができていないことが多いです。共通認識ができていても、「SUVが欲しいと思っている」「スキルアップがしたいと思っている」などで止まり、なぜ?のレベルまで深堀ができていない分析ではこの後の議論が深まりません。

  3. 競合は何をしているか?(Competitor : 競合)

    • 世界的なブランドの◯◯は競合を気にしない、みたいな風説から、昨今競合の分析は軽視されがちです。しかし、実際問題として顧客は競合のサービスを見て、それを自社サービスを比較検討しています。そんな顧客を理解するためにも、また自分たちの発想を刺激するためにも、競合をしっかり観察しない手はありません。

  4. 競合はなぜそれをしてるか?(Competitor : 競合)

    • ここでも「なぜ?」と考えを深めることで、競合を通じて顧客を知るための思考も、同時に深まっていきます。競合の活動からインスピレーションを得るきっかけにもなります。

  5. 自社は何ができるか?(Company : 自社)

    • 自社が取りうる選択肢や、それぞれの選択肢を推進するために活用できる武器を洗い出します。何を選択するか?何を活用するか?は一旦おいておいて、まずは全て洗い出すことが大切です。前段の顧客分析・競合分析をしっかりとしておくことで、ここでの選択肢が広がり、各選択肢の解像度が格段に上がります。

  6. 自社は何をするべきか?(Company : 自社)

    • 以上を踏まえて、自社が取るべき選択肢を絞ります。

フレームワークは実務で機能させてなんぼ

この6つの問いには、急げば30分ほど回答でできてしまいますが、これをやるとやらないでは企画の深みに大きく差が出てきます。

どうしてこの企画が必要なのか?という説明にも深みが出てくるので、必然的に社内でのプレゼンの勝率も高まります。また、仮にうまくいかず、失敗の要因を振り返りをする際にも、どこの過程が間違っていたのか?と要素を分解して考えやすくなる、というおまけまでついてきます。

そうした全ては、このフレームワークがシンプルでわかりやすいからこそ、です。

マーケティングや企業戦略には沢山のフレームワークがあります。フレームワークを理解するまでがお仕事、となってしまわないように。たとえ誰もが知っているものでも、ありふれて面白みのないものでも、シンプルでわかりやすいフレームワークを、何より実務で機能させることが腕の見せ所なのではないでしょうか。

おわり

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幸せな仕事はどこにある: 本当の「やりたいこと」が見つかるハカセのマーケティング講義

<この本のコンセプト(本書より)>
幸せに働きたい。
月曜日の朝に目が覚めたら、これから始まる1週間にワクワクしているような仕事がしたい。
出世なんてしなくても、有名にならなくてもいいから、本当の「やりたいこと」を見つけ、それを誰にも壊されないような働きかたを見つけたい。

この本はそう思っている人に向けて書きました。

そんな「幸せな仕事」が見つからないのは、「見つけるための方法」を知らないから、かもしれません。
私は、その方法を、自分の個性を磨くことと、誰かの役に立つことを両立させるマーケティングの考え方から学びました。
たとえば個性を磨くことは「差別化」、誰かの役に立つことは「ニーズ」という考え方が、それを教えてくれました。

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さあ、ページをめくって物語の世界に飛び込んでみてください。
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