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「成長」を意識する人が、「貢献」を意識する人の成長スピードに絶対敵わないワケ

3月は振り返りの時期。4月からの新年度を迎えるにあたって、今年度一年で自分がどのように成長し、来年はどんな成長を成し遂げたいのかを考えている人も多いかと思います。そんなタイミングで、過去何人もの部下や後輩、メンティーの成長を見守る中で、また自分自身の経験を振り返る中で体系化した「仕事における成長」についての持論を、僭越ながらまとめさせていただきました。見出しを見て興味が湧けばお読みいただき、ぜひ皆様のご意見をおよせいただけると幸いです。

仕事の成長は7割が実務、2割が上司の助言、1割が座学から

仕事における成長というのは、7割が実務経験を通じて、2割が上司からのアドバイスを通じて、1割が読書や研修などの座学を通じてもたらされると言われています。成長したい、と渇望する人は「学習の機会」を求めがちで、そう希望を口にするので、上司や企業はよかれと研修などの座学の機会を提供する事になります。ただ、これは成長をもたらす要素の1割に過ぎないのです。

一方、常に貢献を意識し、実際に貢献度が高い人には、とびきりの仕事の機会が与えらえます。難易度は高いけど、社内外の注目度も高い仕事です。そういう仕事は往々にして失敗が許されません。すると、上司や先輩の細かいフォローが約束され、アドバイスをもらう機会にも恵まれます。さらに、会社として費用をかけて研修やセミナーに送り込むとしたら、貢献度が高く将来が嘱望される人を選ぶのが人情でしょう。このようにして、「貢献を意識する人」と「成長を意識する人」の成長スピードは加速度的に開いていくのです。

「総合職」「一般職」という区分がある日本企業も、かつては多かったですが、今は少数派でしょう。貢献度さえ高ければ、結局自分を一番成長させてくれる「困難で重要な仕事」は、誰でも自分の手で掴みとる事ができます。しかし、グローバル企業の多くでは、一部の社員を対象とした特別なエリート育成コースと、通常の人材育成コースが初めから分かれています。会社が認定して選び出した優秀な人材は、「○○プログラム」などと題された特別な集団に編入されます。そして、コーチングや研修などの機会が与えられるほか、重要なプロジェクトにも優先的にアサインされるようになるのです。

「とびきりの仕事の機会」は会社の資産

グローバル企業はなぜそのような事をするのか、というと、まずはリーダーシップ開発には膨大なコストがかかるからです。研修やコーチングのプログラムは高額だし、「自分自身による気づき」や「内省の機会」を重視するので、大体時間がかかります。あるグローバル企業では、毎週金曜日、ほぼ午後いっぱいを使うリーダーシップ研修を半年近くにもわたって受けさせてもらった事があります。そうなると、参加者はもちろん、研修担当者の時間も大いに拘束されます。

研修費やそれにまつわる人件費は限りある会社の資産です。それをなるべく効率的に、費用対効果高く使うために、最も成長が見込めそうな人材に対象を絞る、というのは極めて合理的な考え方でしょう。しかし、実はそれ以上に大事な会社の資産があります。それは「とびきりの仕事の機会」です。難易度が高く、インパクトが大きく、社内外の注目度が高い案件というのは、そうそうあるものではありません。一方で、それを矢面に立って担当し、成し遂げた時に得られる経験は、何ものにも変えがたく社員を成長させてくれます。すると、そんな機会こそ最も効率の良い使い方をしたい、と考えるのは自然な発想でしょう。

そのような仕事をあまり優秀ではない人材に任せるのは、二重の意味での機会損失につながります。案件自体の成功確率が下がる、というのと、その機会を使った社員の成長機会を無駄にしてしまう可能性があるという事です。それをあてがってもらう社員からすると、逆に二重の機会を手にできます。案件をこなすことによる爆発的な成長と、社内外における認知度・存在感を手にする機会です。成功を手にするには、仕事の実力のみならず、社内外における認知度・存在感が不可欠です。それは、いかに優れた日本酒や伝統工芸品であろうと、広く知られる努力をしていないと存続の危機に瀕してしまうのと同じ事です。

まずは目の前にある期待に応える

ここまでの事は解ったとして、では「貢献を意識する」には、具体的には何をしていけばいいのでしょうか。私は、まずは自分の目の前にある期待に応える事だと考えます。仕事の割り当てを考えてくれるのは自分の直属の上司か、あったとしてもその一つ上の上司なので、一番最初の「とびきりの仕事」は直属の上司が与えてくれます。そこで期待に応えチームに貢献する事で、経験値と社内の存在感が高まり、さらに大きな仕事の機会を与えてもらえるようになります。

上司や、上司の上司を飛び越えて、重役などに直談判して大きな仕事を取りに行くのはあまりお勧めできません。上司を飛び越えるなんて非常識、という事をわきに置いたとしても、自分ができる貢献を自分で冷静に判断するのは、特に若い頃はとても難しいからです。小さな子供は、自分ができる事を過大評価して無茶をするか、過小評価して臆病になるかそのどちらかでしょう。経験の浅いビジネスパーソンにも同じ事が言えます。

蛮勇を奮って身の丈に余る過大なチャレンジをし、それで失敗してしまったら何が起こるでしょうか。大きな失敗は大人物にしかできないから、それもそれで貴重な経験である。確かにそうでしょう。しかし、結局「貢献」はできませんので、次の機会、より大きなチャレンジの機会が与えられる可能性は極めて低くなってしまいます。

成長は「成功体験」がもたらしてくれる

また、成長は成功体験からのみ得られる、という考え方があります。辛い失敗の経験は、忘れてしまうよう脳がプログラムされているためです。いつも同じ失敗をくりかしてしまう、という事がよくありませんか?それはそのためだと考えられます。成功している人は打席に立つ回数が多いので、それだけ失敗の数も多くなります。だから成功には失敗が伴うイメージがつきまといますが、本質的な成長はむしろ成功体験からもたらされるのです。

これらの事を考え合わせると、実際に自分が「貢献」できる、つまりチャレンジして苦労しながらも成功し、チームに利益をもたらしうる機会の大切さが解るでしょう。大きな失敗は確かに貴重な機会かもしれませんが、心の傷にもなるでしょうし、成長曲線が一番急な若い時期に「成功体験による学習」に時間を当てられないのは大きな機会損失になります。

そうであれば、自分の事を客観的に見て、適度に挑戦的な仕事の機会をあてがってくれる上司の存在はとても大切です。残念ながらそのような気遣いをしてくれる上司に恵まれていない、という場合は一つ上の上司や人事の担当者を頼ってもいいかもしれませんし、自分でメンターを見つけてくるのも一つの手です。いずれにせよ、「自分にできる最大の貢献」を意識する事。まずは目の前にある期待に応える事。一見遠まりのようですが、実はこれが自分を成長させるための最短ルートなのです。

おわり

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