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「チャーミングな図々しさ」が最強のビジネススキルである理由

先日、とある企業の広報担当の方とお話しをしました。拙著のPRとその企業のPRでコラボができないか、というミーティングです。とても感じのいい方で、つい話がはずみ、30分の予定が、終わってみれば1時間ほど経ってしまっていました。結果としてその企業にとてもいい印象を持ったので、ミーティングが終わったあと、ウェブサイトをもう一度じっくりとチェックしてみました。広報は会社の顔である、という好例ではないでしょうか。※ここからは、事例を特定できないように事実を脚色しています

サイトはとてもよくつくり込まれていました。雑誌記事のような体裁と文章のクオリティーで、各商品がストーリーとともに紹介されています。驚いたのは、その記事の完成度もさることながら、商品がどれも魅力的だったことです。もちろんミーティング前に調べてはいたのですが、一つ一つを詳細に見たのはこのときが初めてでした。気に入った私はその場でいくつか購入しました。

まさに広報担当の方のファインプレー、なのですが、同時にもったいないなとも思いました。もっとプッシュしてくれてもよかったのに!それぞれの商品を紹介した記事には「SNSでシェア」ボタンがついています。しかし、カウンターを見るとほとんどシェアされていません。インフルエンサーとまではいかないですが、私には3万人ほどのSNSフォロワーがいます。「この商品お好きだと思います。記事を読んでみて、気に入っていただけたらシェアお願いします!」そんなアプローチがあってもよかったなと。

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業界でも有名な敏腕PRパーソンが知り合いに何人かいます。書籍の場合は編集者がPR担当も兼ねますが、その意味で敏腕な編集者は優秀な広報でもあります。彼女たち/彼らだったら、必ずそこで私にシェアの依頼をしていたでしょう。いや、そもそもミーティングすらしていないに違いありません。いきなりメッセンジャーが飛んでくるはずです。

そうしたお願いには、お答えする場合もしない場合もあります。しかし、いずれにしても嫌な感じはしません。むしろ清々しく、何なら嬉しくもある。抜きん出た営業パーソンもそうですが、彼女たち/彼らには「チャーミングな図々しさ」があるのです。そして、これこそが、「頭がいい」「数字に強い」「戦略が書ける」など数多ある能力のなかでも群を抜いて重要な、最強のビジネススキルだと私は考えます。とくにスタートアップや中小企業の営業・広報においては。

プライベートでの図々しさはさることながら、仕事における図々しさは彼女たち/彼らの義務ですらあります。商品の魅力をより多くの人に伝えるのに、図々しくなることが必要であればそれを躊躇しないのがプロです。一方で、そうしたお願いにチャーミングさがなく、ただ単に図々しく感じる人もいます。普段それほどやりとりしないのに、そんなときだけ連絡してくる、という点ではいずれも変わりません。では、なぜある人は単に図々しく、ある人はそれがチャーミングになるのでしょうか?

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このテーマをツイッターでつぶやいたところ、大きな反響がありました。皆さんの反応を観察していると、「チャーミングな図々しさ」を持つ人の特徴として、3つのポイントが浮かび上がってきました。これから順番に解説していきましょう。

心からいいもの/ことであると信じている

優れたPRパーソンや営業パーソンは自らがリーダーであると考えており、自分が代表する商品とチームを心から信じています。素晴らしい仲間がつくりあげた素晴らしい商品なんだ。これをみんなに知ってもらいたいんだ。そう純粋に思っている。

だから、一生懸命だし明るく前向きなのです。そして、変に斜に構えず、まどろっこしい遠慮もなく、とにかく直球勝負です。どうせだめですよね、という卑屈さがないので、相手のメリットがどうだ、ということはそれほど考えません。考えても、それがお願いの主題にはなりません。

協力には心から感謝する

また、彼女たち/彼らは、協力してくれた人にしっかりと感謝をします。「チャーミングな図々しさ」を発揮し、とにかく多方面に協力を依頼していることを考えると、これは当たり前なようでとても大変なことです。例えば、100人にある記事をシェアしてください、とお願いしたと想像してみてください。その中の誰かが実際にシェアしてくれたときに、それを見逃さずにおいて、しっかりとお礼をするには努力と工夫が必要です。

また、協力してくれたことは、先々もずっと覚えています。次回別件で協力依頼をする際は、この前はありがとうございました、としっかり申し添えます。これも数十人、百数人という単位でやるには、管理台帳のようなものをつくる、など工夫が必要です。100人にお願いしたとしても、協力したほうは100分の1ではなく1分の1ですので、得てしてしっかりと覚えています。前回のお礼がないと当然面白くありません。なんだよ、この前のお礼もなく、また図々しく。こうなってしまいます。

利用するでも依存するでもなく、頼りにする

「頼りにする」というのと、「依存する」「利用する」はまったく別の話です。たまたま近くにいたからお願いする(利用する)。他にお願いできる人がいないので頼む(依存する)。「チャーミングに図々しい」人のお願いには、そんな軽々しさも重苦しさもありません。

他でもないあなたにお願したい(頼りにする)。もたれかかりたいのではなく、おぶさりたいのでもなく、ローラースケートで進む自分たちの背中を、さらに加速するためにちょっとだけ押してほしい。そんな依頼であるからこそ清々しく、頼まれたほうはむしろ嬉しくすらあるのです。誰かの背中を押してあげ、その人が成功するのを見るのは、誰だって気持ちのいいものです。

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「チャーミングな図々しさ」は類まれなる能力です。だからこそそんなスキルを持っている人は重宝され、一流の経営者・営業パーソン・PRパーソン・編集者になれるのでしょう。私自身を含め、「うん、でもそれがなかなかできないのだよな」という人は、まずはその価値を正しく理解し、正しく評価することで、「チャーミングに図々しい人」をうまく仲間に引き入れることを心がけましょう。

おわり

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