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だれでもピアノの人に聞いてみた【ストピ文化支援者インタビューvol.1】

インタビュー第三弾!今回は少し趣向を変え、「ストピ文化支援者インタビュー」をテーマにインタビューをしてみました!今回は、ストリートピアノの全国情報が集うサイト「だれでもピアノ」の創設者の大木さんに色々聞いてみました。

◆大木さん(インタビューイー)
ストリートピアノ情報まとめサイト「だれでもピアノ」の創設者。演奏動画を中心にYoutubeへのアップロードなども行っており、チャンネル登録者数約7万人。他にも、2分でピアノの調律チェックが完了する世界初のiPhoneアプリ「ピアノ調律チェッカー」の開発に携わる。
◆かの (執筆者・インタビュアー)
ストリートピアノ情報発信Twitterアカウント「ストリートピアノまとめ」を運営。幼少期にピアノを習っていたもののクラシック音楽が苦手で挫折。以降十数年間ポップスや作曲を中心に趣味でピアノを続ける。
◇だれでもピアノ (https://pianomitsuketa.com/)
日本のストリートピアノ、駅ピアノなど「誰でも自由に弾けるピアノ」の設置場所に宇宙一詳しいサイト。


なぜ「だれでもピアノ」を立ち上げたか

かの:本日はよろしくお願いします。

大木さん:よろしくお願いします~!

かの:それでは早速、なぜサイトを立ち上げたのかお伺いしてもよろしいですか?

大木さん:端的に言えば「無かったから作ってみた」ぐらいのノリですね笑

かの:あ、結構軽いノリだったんですね笑

大木さん:このサイトができる以前は、ストリートピアノの情報って基本的に「点」でしか存在しなかったんです。各設置者のHPやTwitter・Facebook上で発信されたものがメインで、特定のコミュニティに属していないと情報を入手し難いという特徴があったんですね。なのでプラットフォームとしてまとめて公開しちゃえば便利なんじゃないか、と思い作りました。

かの:たしかに数年前はストリートピアノの情報をキャッチアップするのって結構難しかった印象ですね〜。

大木さん:で最初はこのアイデアを悶々と思っていただけだったんですが、その時に来たのがコロナ禍・外出自粛期間です。外に出ることも出来ず時間が有り余ってしまったので「やってやろう!」ということで昨年の4月に作って公開しました。

かの:アイデアと時期がちょうど上手くハマった感じだったんですね!でもこのサイトって「やってやろう!」で作るには結構大変な気がします。。。

大木さん:やってみると意外と簡単ですよ。簡単にサイト構築ができるサービスを使って、複雑すぎないサイトになるように機能をそぎ落として使っています。ピアノ情報はネット中にたくさん転がっていますからね。最初はTwitterやFacebook、YoutubeなどのSNSからかき集めて135件ぐらいのピアノを掲載しました。

かの:でもストピ情報って一度集めても新しいピアノが出たり減ったりするじゃないですか。新しい情報のキャッチアップってどうしてるんですか?

大木さん:最初は自力で集めていたんですが、サイト公開後はピアノ情報を定期的に提供してくれる人が出てきてくれまして、今はその方々からの強力なサポートをいただいております。日本各地に「この地域の人」みたいな人がいてくれるおかげで新しい情報を掲載し続けられるようになっています。

かの:協力してくれる方が出てくるのは本当にありがたいですね。

大木さん:本当に感謝しています。運用面では、サイト立ち上げの際にのちのち自分が困らないような構成にしているので、今の段階では特に大変な作業もないです。Excelに新しい情報を入れていくみたいな感覚で運営できるようにしています。

かの:さすがです。YAMAHAの公式サイトとの相互リンクはどうしたんですか?あれは簡単に出来るようなものでもない気がしますが。。。

大木さん:YAMAHAのLove Pianoのイベントで担当者さんと知り合ったことがきっかけで。その繋がりで色々話をする中で相互リンクしていただけることになりました。

かの:今Youtubeチャンネル拝見しましたが、7万人規模のYoutubeチャンネル持ってるんですね、、、すごすぎます。

大木さん:あとは私のYoutubeチャンネルに対して取材してくれた方が今度はサイトについて取材をしてくれて、というパターンもありましたね。いずれにしても色んな人のおかげで十数万PV規模のサイトに成長することができました。

かの:人の繋がりでこのサイトが成り立っていると思うとありがたいですね。

大木さんのYoutubeチャンネル


変化したストリートピアノのあり方

かの:サイト運営をされていると、常にストリートピアノの状況をウォッチすることになると思うんですが、見ている中でストリートピアノ文化の変化とか感じることはありますか?

大木さん:まず日本のストリートピアノって、結構爆発的に広まった文化だと思っていて、この増え方って世界的にみても特異なものだと思うんですよね。個人的には2018年の国立ストリートピアノや丸の内アートピアノあたりがきっかけなんじゃないかと思っていて。

かの:たしかに2年前の今頃って認知度全然なかったと思いますね〜。

大木さん:丸ノ内アートピアノの演奏をYoutubeで公開したんですが、当時はまだまだ物珍しさがあったのもあって、一瞬で百万再生とか行ってたんですよね。

かの:見る側も「これってじっと見てていいのかな」みたいな感じになりそうですね笑

大木さん:見る側も落ち着かない感じでしょうね笑。それから、ストリートピアノがYoutubeとの親和性が非常に高いことが認知され始めるにつれ、Youtubeでは派手なサムネに派手なピアノ、華麗に弾いてなんぼみたいな世界観が歓迎されやすいコンテンツに変わってきたなというのを感じますね。

かの:Youtubeのストリートピアノ動画もどんどん飽和してきましたよね。

大木さん:認知度が低かった一昔前のストリートピアノは、どちらかというとリアルな日常だとか情景に本物のピアノの音が溶け込む、という情景主体の意味が強かったように思います。たとえば、コンサートホールで演奏する場合、オーディエンスは演奏の向こう側には舞台壁しか見えませんよね。それがストリートピアノの場合、演奏の背景には日常的現実が存在しているわけです。これがストリートピアノによって気づかされた音楽の価値の一つだと思うんです。

かの:演奏者ももちろんそうですが、聞き手としても普段の味気ない景色が少し良いものになるのもストリートピアノの魅力ですよね。

大木さん:その一方で昨今は広告イベントやお祭り用途などの集客目的のピアノが増えてきた傾向も感じます。期間限定のピアノなどに特にそういう意味が見えることが多いです。これは従来のストリートピアノとはまた違って、積極的に「SNS上でのバズ」に狙いを寄せた一種の商業色を持ち合わせたピアノだとも思います。

かの:なるほど。

大木さん:あくまでも個人的な考えですが、ストリートピアノって人が並んで次々に音が鳴っている「ステージ」になっちゃうんですよね。そうすると今度は「だれでも弾ける」のハードルが高くなってしまい、上手くないと弾きにくい雰囲気になっちゃう。

かの:たしかに人がたくさん集まるところで弾いたり、演奏者の列に並んでまで弾くのは結構勇気が要る気がします。。。

大木さん:そういった文脈を全面否定する気はないし、各場所での方針もあることだと思いますが、音楽文化の裾野という視点で見たらハードルが低いほうが結果的に面白いと思うのです。なので個人的には、人気の少ないところに置いてあるストリートピアノが好きだったりしますね。たまにしか弾かれないからこそ美しい。弾かれない時間っていうのも、ピアノの存在価値にとって大切なものなんだなだと気づきがありましたね。

かの:「人の集まっていないストリートピアノ」=「使われていない」=「意味のない」というわけではなくて、人の集まるストリートピアノとはまた違う役割だとか価値を持っている、と考えるのがいいのかもしれませんね。

当時はまだ珍しかった新丸ビルストリートピアノ


クールな情熱を持つ

かの:サイトを運営する上で何か気を付けていることや心がけていることはありますか?

大木さん:「情熱を煽らない」書き方をすることですかね。個人を主軸にしないとも言えるかもしれません。

かの:情熱を煽る?というのは。

大木さん:例えば「有名ユーチューバー○○さんが弾きました!」だとか「△△さんが来ます!」みたいな情報って載せようと思えば載せられるわけなんです。ですがそれは掲載せず、地理的な情報とかピアノが設置された経緯などの普遍的な事実を中心に掲載するようにしています。

かの:なるほど。それはそういう情報を公開すると人が集まりすぎちゃうから、ですか?

大木さん:そうですね。人が集まるというよりも制御不能な熱狂を誘導することを避けたい思いがあります。短期集中的な集客が目的のピアノならば熱狂につながる発信をすることに高い価値があるのでしょうが、常設のピアノとなると存続上のリスクを含めて長期的視点から総合的に考える必要があります。今まで各地のストリートピアノでもいろいろ騒動やトラブルが起こってきましたが、そういった騒動の真因には必ず奏者orオーディエンスの「熱狂や情熱」があると思うんですよ。

かの:ストリートピアノ占領問題も、「ずっと弾きたい」という情熱の典型例ですよね。

大木さん:多様性に富んだ不特定多数の人々の情熱が一箇所に集まると、いずれ高確率でトラブルが起きてしまう。ストリートピアノサイトを運営しているからこそ敢えてこう表現したいんですが、ストリートピアノに「のめり込む」ほど熱くなる人が増えすぎないように全体の平均的なマインドが抑制されないと調和が崩れて存続できなくなってしまうと思うんです。ほどほどに楽しませてもらおうぐらいの気持ちでいたいですね。

かの:数か月前、ストリートピアノ演奏のマナーのような記事をサイトに掲載されていましたよね。あれを書こうと思ったきっかけは何かあったんですか?

大木さん:コロナ禍という明らかな社会情勢を受けてもストリートピアノ動画をアップロードしている人があまり減っているように見えず、批判されるのを覚悟で掲載しました。

かの:確かに弾いている人は関係なく弾いているイメージです。。。

大木さん:例えばコロナ禍で遠慮なくストリートピアノの演奏動画を拡散する人がいたり、周囲を気にせずに荒い演奏をする人を、他の人が見た時どう思うでしょうか。「ストリートピアノを弾く人はみんなこういう人なんだ」と一括りのカテゴリで認識されてしまい、ストリートピアノという文化全体に対してネガティブなイメージを抱かれる可能性は十分に高いわけです。

かの:たしかに。

大木さん:ストリートピアノを使うときは、常に「観られている」という意識が大切だと思います。公共性の高いのものだからこそ、しっかりわきまえて行動することが必要だと思いますね。

かの:みんなのものだ!という意識をするということですね。

大木さん:いずれにしても熱狂的になりすぎずに楽しませていただくというマインドは大事だと思いますし、サイト運営者としても読み手が情熱的にになりすぎないよう、ストリートピアノとそれを取り巻く環境に対する適切なリスペクトを保てるような表現をすることを心がけています。

かの:なるほど。

大木さん:私のサイトはストリートピアノというカテゴリで多くの方にご覧いただいているので、必要なことは言葉として発信しながら日々試行錯誤しているところです。私個人としては人の熱狂を煽る要素の一つにならないように気を付けています。

是非一読していただきたいマナーのお話です


インタビューを終えて

かの:インタビューありがとうございました!!

大木さん:いえ、こちらもありがとうございました。

かの:東京に行った時は是非挨拶させてくださいね。

大木さん:ちなみに今僕は中国から話しています。

かの:!?!!?!?!?!?

大木さん:仕事の事情で中国に行ってまして笑

かの:何と!!!


海外からのインタビュー本当にありがとうございました!!

ストリートピアノに宇宙一詳しいサイトは▽こちら▽

▽前回の記事▽も併せてご覧ください!!



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