斜め後ろ上空を

朝さ

メルカリでレアなポケモンカードが売れたからさ

ヤマトさんの宅配ロッカーから発送するのに駅にいったのね。

その時間はちょうど通勤ラッシュだからさ

省庁に勤めるスーツ姿の人たちが結構歩いていたのね。

で、ロッカーに荷物を預けてさ

帰る途中ふと視界にカラスが見えたから目で追いかけると

マンションとか商業ビルの間を這うようにカラスや鳩が飛んでたのね。

（ほんとは写真機を取り出したいところだけど、恥ずかしいからいつものようにその光景を目に焼き付けて楽しんでいただけなんだけど）

で、そうやって空を眺めながら交差点に差し掛かるとさ

俺は駅と逆方向に帰るわけだから

向こうからはスーツの人たちがこっちに向かってくるわけ。

そんで、俺は交差点で信号が変わるのを待ってるときも

鳥を探して向こうの空をキョロキョロ見ていたのね。

でも、向こうからくるスーツの人たちは

ふつうに前を、こちらの方を向いていたのね。

（うつむいてくれていると詩的なコントラストなんだけど、みんな普通に前を向いて待ってたのね）

ところで、

交差点とかで向こう側の人がこちら側の上の方を見てたらどう思う？

何かあると思って振り返らない？普通。

だから、向こうからくる何人かの人は

（待っている最中に変な動きすると恥ずかしいから）

後でこっそり振り返ると思うのだよね。

俺の見ていた空を。

斜め後ろ上空を。

でも、そこには何もないんだよ。

いや、鳥も空も雲もビルも電信柱もあるのだけど、

何もないんだよね。

だって都会の空を飛ぶ鳥たちは

僕にしか見えてなかったから。

令和3年1月12日