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聴いたことを文章にしてみる

フォルマシオン・ミュジカルの一分野にあるもの

フォルマシオン・ミュジカルの一分野に「Commentaire d'écoute」と呼ばれるものがあります。直訳すれば「聴取に対するコメント」でしょうか。これは、楽曲を聴くだけで分析することを中心に、今、聴いた楽曲について色々書き出すものです。学習がかなり進んだ段階では文章で書き表します。
元々フランスは筆記試験というと論文試験が主で、高校卒業時の大学入学資格試験であるバカロレアを始めとして大学の期末試験の大半は一つのテーマに沿った論文試験(3時間か4時間。途中でお手洗いに行くことは許可されています。余談ですが、昨年6月のバカロレアの試験中に、メロン丸ごと持ち込んで食べた生徒がいてその実況中継が監視員によってTwitterでなされて大きな話題になりました)ですので、楽曲についても文章で書くことが求められるのはわかるような気はします。

音楽について文章にするにはまず語彙が必要

分析は音楽用語をある程度知っている必要がありますが、そのメロディーが明るいのか暗いのか、どんな感情を表現しているのか、ということになりますと語彙力がものをいうなと感じています。
中学生向けの聴取に対するコメントの練習課題を見ますと、色々質問があってそれに応えるようになっていますが、この旋律はどんな感じか、という問いまであって「わー、これ答えるの大変」と思ってしまいました。私がフランス語で答えるためにはフランス語の乏しい語彙が引っかかるのもありますが、これ、日本語で答えるのも結構厄介です。そもそもこういうことを書く習慣がありませんしね。
ただ、これだけ聴いたことに対する説明語彙があるということは、自分の感じたことに対する表現語彙があるということ。相乗効果で音楽の表現にも影響が出るのではないか? というのはあります。外国語を話せるようになるためには、語彙を増やすためにはまず母国語で話せて、豊富な語彙を扱えるようになる必要があります。音楽言語もそれと同じと言えるのではないでしょうか?

音楽理論や音楽史の知識があっても、音楽にまず必要なもの

理論の知識がいくらあっても、音楽史に対する造詣が深いとしても、音楽は音の芸術ですからまず「聴ける」必要があります。聴く時により良い聴き方をするための知識であって、知識は先にはないのです。
聴取に対するコメントでは、作曲者や時代を判別できるのならするということになっています。実際、中学生向けの課題では選択肢で作曲家を選ぶなどの問題もあります。これを判断するためにも楽曲を注意深く聴く力が必要になってきます。なぜなら、聴こえてきた音からの判断で曲のスタイルを判別するので、まずは「聴く」必要があります。

正しく聴くための道具

フォルマシオン・ミュジカルでは絶対音感を必要とはしていません。むしろ相対音感の方を重要視しています。それでも流れてきた音楽の調を判定します。では何を使うのでしょうか?
古くからAの音を知るために使われている音叉を持ち込み、それを鳴らすことでAからの音の距離を測り(つまりここで相対音感がものをいう)、解答には「A=440の音叉によるとこの曲は二長調」のような書き方をするのです。フランスの音楽関係のネットショップにはごく普通に商品として並んでいます。それだけ需要があることだとも言えます。
絶対音感にしても相対音感にしても、必要なのは「正しく聴こうと思う姿勢」ですよね。

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