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文化を学ぶ意味

音楽は文化の一つ

音楽に限らず芸術は文化の一つです。そして文化的な現象というものはある日突然いきなり姿を見せるものではありません。文化的な「事件、事象」というものは必ず何らかの前触れがあって、背景があって出てくるものです。

音楽史でいうとバロック、古典派、ロマン派と変化していくわけですが、その変化は後世の音楽学者が区分として分けてはいるものの、その境目は曖昧です。ですからベートーヴェンが初期ロマン派と見做されたり、シューベルトのピアノソナタが古典派に見做されたりということもあるわけです。
(個人的にはベートーヴェンの後期ソナタはロマン派に近いし、シューベルトのソナタはその意味で確実に初期ロマン派と認識していますが)

ドビュッシーが「印象派」と言われるのは絵画の印象派からの影響です。絵画の印象派はある日突然そのような作品が生まれたわけではありません。それまでの画家が光をどう表現するかを研究して、それが綿々と続いていって印象派の作品が生まれました。印象派の名前はそれらの作品を「印象派展覧会」と名付けて独自の展覧会をやったから、ある日突然出てきたもののように思えるかもしれませんが、作品の歴史としては前触れあってのものです。

文化的コンテクストを知る大切さ

こういった背景を知ることで、作品から読み取れるものが違ってきます。絵画の鑑賞もコンサートで音楽を聴くことも予備知識があることでさらに理解できることがあります。
演奏家の場合は基本的に既存の作品を通しての自己表現になるわけですが、同時に作曲家の意図を無視せずに演奏するという責任も担っています。つまり、その作曲家が置かれていた文化的背景を無視してはならないということです。

先日、コンセルヴァトワールの「聴取のコメント(Commentaire d'écoute)の授業で、シューベルトのリートを聴きました。そこで出た話題が「古典派とロマン派をつなぐ鉤は?」というもので、話は文学にまで及びました。
私は「なんとなく知ってはいるけれど、フランス語で説明(日本語で説明より難しい)ができるほどはよくわかっていない」というものなのですが、その辺りをきちんとわかっているプロ志望の若い学生さんたちに、尊敬の念でした。

フランスの音楽学徒の皆さん、教養が深いです

楽器の先生は音楽のプロフェッショナル

音楽芸術のプロであるピアノの先生、ヴァイオリンの先生、その他全ての楽器の先生方は、楽器を弾けることは大前提。さらには音楽を楽譜から読み取る力が必要になってきます。
しかし、それで十分なのでしょうか? 音楽が文化である以上、文化的な背景を完全に無視してはならないはず。
文化史の全てを学ぶことは無理であっても、文化的教養を身につけようと意識して生活していきたい(これは自分自身にも言い聞かせています)と考えています。

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