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◇014.小さい頃、飛車が好きだった。
小さい頃、祖父や父と将棋をよくやった。
毎度、敗北前提の対局だったが(ハンデで飛車角行落ちでやってくれたときは1回勝てたかな…笑)、祖父が所有していた重厚感のある木の将棋盤と駒が作り出すあの音がなんとも心地よかった記憶がある。
祖父は私が小学生低学年の時に亡くなった。
それからは父と時々将棋を指していたが、高学年に差掛かる頃には自然とやらなくなっていった。
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今日、久々に実家に帰った。
電車で40分ほどの距離にあるのだが、コロナになってからは帰る頻度を減らしていたので、結構久しぶりの帰省だった。
夕飯を終えて、父がひとつの木箱を持ってきた。
祖父の将棋の駒だった。
少し前に祖母(父の母)が亡くなったのだが、その祖母が肌身離さず持っていたとのこと。父は、お葬式の際に久々に会った親族から譲ってもらったそうだ。
「すごく歴史のある駒だよ。そういえばちっちゃい頃は飛車が好きだったよな。」
そうだ。
飛車が好きだった。
字面、読み、駒自体の大きさ、利き(動き)の全てをひっくるめて、
"なんかカッコいい"が理由だった。
きっと、縦横のみにまっすぐ突き進む感じがカッコよく感じたのだろう。
潔くて堂々としてて決断力が垣間見えるような、あの感じ。
飛車が好きだと言った20年前の私も、今の私も、憧れている対象物には近しいものがあるようだ。
大人になった今、仕事での些細な指摘にすぐ落ち込んでしまうし、noteではスキが伸びなかったりフォロワー数が減ることに敏感になったりと、何事にもすぐ弱気になってしまう。周りに動じずに強くなりたい、そう思い続けている。
結局、憧れや目標だけがふんわりとあって、小さい頃から足踏みしたままだったのかもしれない…
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父が一戦やってみようと言った。
もちろん、ハンデは無しで。
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小さい頃は長くて15分ほどだったと思うが、45分粘った。父はやっぱり強かった。負けてしまった。
片付けながら父は、
「ちゃんと一手一手を考えるようになったんだな、大したもんだ。積むまでにこんなに時間かかるとは思わなかった。」
とお世辞には見えない一言を言ってくれた。
ーー 憧れの"飛車"には程遠いが、少なくとも成長はしてたみたいでちょっぴり嬉しい気持ちになった。
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