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【PFFアワード2024】セレクション・メンバーおすすめ3作品《♯07湯川靖代》

これまで色々な作品を観てきましたが、これほどたくさんの自主映画をまとめて観る機会は初めてでした。映画を志す人たちの思いに触れ、映画はやはりいいなあと感じる時間でした。一方、初めての審査で戸惑いもあり、いくつかの作品を推せなかったのは少し心残りでした。

『END of DINOSAURS』

そのような中でも素晴らしい作品との出会いがありました。『END of DINOSAURS』は、監督のバッググラウンドが色濃く表れ、多国籍感あふれる作風、カルチャーギャップなどのテーマをエンターテインメントに昇華させていました。映画監督の植木咲楽さんが強く推してくださったことで観る機会に恵まれ、幸運でした。

今年は映画制作をテーマにした作品が多くありました。監督自身が向き合っているもの=映画をテーマに作ったのならば、次の作品ではどんなテーマに挑むのだろう?という興味がわきました。そこで作品自体の面白さに加え、次回作への期待を感じる監督作を推薦したいと思いました。

『松坂さん』

『松坂さん』も、脚本家志望の男性が主人公です。彼の不思議なペースに徐々に巻き込まれていきました。主人公と淡く交流を始めることになる「松坂さん」の心情の動き、その見せ方が素晴らしく、ラストでぐっと心が掴まれました。夜の校庭や電車を映し出すカメラワークも美しかったです。

『あなたの代わりのあなた展』

『あなたの代わりのあなた展』は、一体どこからが“あなたの代わり”なのだろう?とぐるぐると翻弄されました。この感覚を周りの人たちと共有したいなと思いました。役者さんの演技が秀逸で、すっかり騙されているのかもしれません。観た後に色々と感想を交換できる作品に魅力を感じます。

『鎖』

『鎖』も印象的でした。中国の伝統的な慣習を模したパフォーミングアートや影絵を用いたアニメーションに家族や友人との会話が重なり、結婚や女性性、同性愛について連鎖的に語られていきます。「鎖」というタイトルから<連なるもの>、<拘束>を連想させられます。作品を彩る赤い色も強く印象に残りました。


『季節のない愛』

また、今回の入選作品19本のうち、『季節のない愛』『チューリップちゃん』が、映画監督・中村高寛さんのゼミ生2人による作品だと後日知りました。中村監督は筆者が中国・北京電影学院に留学していた際の同期で、当時は『ヨコハマメリー』の制作に取りかかっていました。あの頃、映画への志を胸に抱いていた青年が映画監督となり、後に映画を教え、教え子さんたちが映画監督として花開こうとしている。そのことに胸を打たれ、改めて映画の力を感じる思いでした。

『チューリップちゃん』

セレクション・メンバー:湯川靖代(映画配給会社代表)

「第46回ぴあフィルムフェスティバル2024」
日程:9月7日(土)~21日(土)
会場:国立映画アーカイブ ※月曜休館

「ぴあフィルムフェスティバル in 京都2024」
日程:11月9日(土)~17日(日)
会場:京都文化博物館 ※月曜休館

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