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静岡の秘境で味わう新緑と疑問

旅行へ行くたびに「10年後にこの場所はどうなっているのだろう」と思う。もれなく今回もそうだった。

時は戻って3連休を迎える前日の夜。これから迎えるせっかくの3連休に何の予定も入れないと、自分が腐ってしまいそうで怖かった。疲れを癒すために3連休初日の午前中はほぼベッドの上で寝て過ごし、そのせいで気分が落ち込んで結局3連休最終日の夕方になって慌てて活動をし始める。そんないつものパターンの休日は送りたくないと思い、強制的に予定を入れることにした。前にInstagramで見た絶景写真が脳裏をよぎり、その近くの温泉を予約する。予定さえ決めてしまえばこちらのものなので、3連休前の夜は安心して寝ることが出来た。

東京駅から新幹線に乗って静岡県へ。静岡駅からは電車を乗り継いで金谷駅というところへ向かう。乗り換えの時間が少し空いたので、街並みを味わおうと新金谷駅まで歩いてみる。夏らしさを感じさせる日差しのせいで、歩いていると少し汗ばんできて忘れていた暑さを1年ぶりに思い出す。30分ほど歩いて新金谷駅に着くと風情を感じさせる駅舎とホームが迎えてくれた。

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今回はここから大井川鐵道に乗って目的地に向かう。大井川鐵道は文字通り大井川に沿って静岡県の内陸に向かっていく路線で、地形に合わせてグネグネと曲がった路線を特徴としている。電車に乗っていると何度も何度もトンネルに入り、トンネルを出るたびに人工物が減っている気がした。大井川を横目に見ながら山間を走り続け、1時間ほどで千頭駅へ到着した。そして、千頭駅で赤いトロッコ列車へと乗り換える。

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トロッコ列車という言葉がしっくりくるような小型のかわいらしい車両に乗って、さらに大井川を上流へと登っていく。周りの景色はさらに山が深まっていき、新緑をより一層感じさせる。

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トロッコ列車は運転手さんと車掌さんの2名体制で運行されている。車掌さんは4両ある車両を駅に着くたびに乗り換えていて、せわしなく動き回る中でもしっかりと次の駅や観光名所の案内をしていた。車掌さんとは目的地に関するやり取りをしたくらいで特に何か会話をしたわけではないけれど、なんとなく距離の近さを感じる。それが小さなトロッコ列車の車両のせいなのかはわからなかったけど、平成に置いてきてしまった他人と接するときの温かみがあった。

そんなことを考えていると今回の目的地、奥大井湖上駅に到着していた。駅は大井川にかかる鉄橋に挟まれていて、まるで陸の孤島のように感じられて駅で降りただけで興奮してしまう。ただし、今回目指す本当の目的地はここではない。川のうえにかかる鉄橋をわくわくしながら渡り10分ほど山道を歩いていく。そうして向かったのが奥大井湖上駅を展望できる山中のスポット。

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天気予報は曇りだったけれど、この写真を撮るタイミングでちょうど晴れ間が訪れ、駅に日が差し込んだ写真を撮ることが出来た。満足。

この旅では大井川鐵道にかなりお世話になったけれど、世の中的にはコロナ禍以降鉄道会社は苦境に立たされているイメージを個人的に持っている。大井川鐵道については、奥大井湖上駅や寸又峡温泉などの観光地が近隣にあること、SLやトーマス列車を走らせる取り組みを行なっていることなどからコロナ禍以前も一定の業績を残していると想像していた。しかし、調べてみたところ2020年に純利益が赤字転換していて2018年から年々純利益が悪化している。実際、今回乗った列車にもあまり人が乗っておらず「どうやって収益を立てているのだろう」と疑問だった。

今回は接岨峡温泉に泊まったけれど地域社会の高齢化と向き合う必要性も感じた。人口減少・高齢化を控える日本社会において地方鉄道に求められる役割や提供できる価値って何だろうなと思う。そうして考えていても答えは出なかった。

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10年後にこの場所はどうなっているのだろう。

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