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展示レビュー:野村美和「文明標本」 IG Photo Gallery

ポストコロナによるパラダイムシフトを経験した我々は、もういままでの生活を維持し続ける事は出来なくなっている。
いや、続けたいと願っていてもそれはもう既に過去の出来事であるのだ。だれしも自ずと新しい生活に馴染んで行くはずである。

本来ならば、この世に残された、自立したテクノロジーがAIを利用しながら加速度的に発達し、自らの体内で様々な仕事をアウトソーシングしてきた人類の文明は終わりを告げたはずである。

今回紹介する写真展「文明標本」は、テクノロジーの繁栄したさらに先の世界。現代を標本として切り取る事で、鑑賞者は過去の地球を観察している未来人か。または、次元を超えて、何処かから地球を観察し続けてきた「彼ら」にでもなったような感覚に陥る事ができる。

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サブタイトルとして、「Tokyo Präparate」としているこれらの展示は、それらを体験した者のみが感じ取ることができる。観察や収集をすると言う、人間独自の行為をごく自然に強いるのである。
ポストヒューマンの時代に、このごくありふれた人間的な行為が残っているかは謎ではあるが、意外とこれらの人間的概念は、テクノロジーの時代にもAIが必要な感情として残されているような気もする。

ディメンションを超えたその先で、過去の遺物である現代を標本として切り取ったこれらの作品は、我々にとっても既にレガシーツールとなってしまった虫眼鏡のレンズを通して観察を強いる。
写真を見るのではなく、観察へと変換させた作家の感性と、石の模様と言う地球の誕生から続いている本来の姿と、現代を融合させたこれらのバランス感覚は一見の価値はあると私は感じる。

東銀座のIG Photo Galleryにて10月30日まで。

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