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[読書日記]Humankind A Hopeful History 希望の歴史(上・下)

Humankind A Hopeful History (英題)
Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章(邦題)
ルトガー・ブレグマン 著
野中 香方子 訳

はじめに


2023年2月14日の星野源のオールナイトニッポンの中で源さんが紹介してくれた1冊(正確には上下巻あるので2冊)です。

私はプロフに書いている通り星野源さんの大ファンで、音楽もお芝居も文筆も追いかけるのが大好きですが、源さんが時々紹介してくれる本を読んで追体験することもとても好きです。

したがって本の感想の合間にちょいちょい源さんが挟まるかも知れません。
あらかじめご了承ください。
(あと内容にも触れています)

源さんもラジオの中で「帯に書いてあるのが・・・」と言っていたけれど私も最初帯などに書かれているキャッチコピーを読んでこれは自己啓発本なのか?と構えてしまった。
自分でも自己啓発本を読むことはあるけどそこは純粋に自分のフィルターを通るものだけ読みたいと思っていて推しが勧めるから私もなんとなく受け入れるみたいなことになったら嫌だなと思っていた。
でも安心してください。
全然自己啓発本ではなかった。なんなら著者自身が自己啓発本の類は好きでないと作中で言ってた(笑)

ところで本題に入る前に、
こちらオランダ版(著者がオランダ人)原書タイトルは「ほとんどの人は善良である:新しい人類の歴史」だそうで、英語タイトルはまだしも日本語タイトルはコピーも含めて誤解与えそうだなと思った。本気で「希望に満ちた性善説の決定版」と思ったんだろうか?そういう内容を期待して読んだ人は途中で挫折しないかしら。内容は素晴らしいのにタイトルとコピーがごにょごにょごにょ・・・

上巻

ひたすら性悪説の根拠となった実験や事象を掘り下げ、本当にそれは正しいのかを検証していくパート。
ダーウィンの進化論から、ホッブズやルソー、だれでも一度は見聞きしたことがあるだろうミルグラムの電気ショック実験まで検証を重ねていく著者。
とにかく情報量がすごくて論文と呼ばれるものは読んだことがないけど多分これほぼ論文ですよね、きっと。初めのほうはソースノートもいちいちチェックしてたけど追いきれなくて途中で諦めた。
なぜソースノートも確認しようかと思ったかというと、この著者の言うことは本当なのか常に疑っていたから。
そう、私も無自覚に性悪説に偏っていたからだと全部読み終えた今気づく。

繰り返すがとにかく情報量が多い!それも分野が多岐に渡っている。
あまりに広範囲なので途中で裏表紙の著者のプロフィールを確認しに行った。この人何を専門としている人なんだろうって。そこには歴史家、ジャーナリストと肩書が書いてあった。なるほど、歴史家か・・・。

上巻最後の章のジャーナリズムによる歪曲の部分は衝撃だった。

下巻

「私は共感を良いこととは思わない」
ブルームは冗談を言っているのではない。彼によると、共感は、世界を照らす情け深い太陽ではない。それはスポットライトだ。サーチライトなのだ。共感は、あなたの人生に関わりのある特定の人や集団だけに光をあてる。そして、あなたは、その光に照らされた人や集団の感情を吸いとるのに忙しくなり、世界の他の部分が見えなくなる。

Humankind 希望の歴史(下巻)
第10章 共感はいかにして人の目を塞ぐか
P.32

共感はスポットライト。
こう考えると私の中でもいろんなことがすべてうまく説明できる。
この考え方は目から鱗で、とても響いた。
そしてエピローグで著者は「共感は人を消耗させる」と述べている。
分かる。すごく分かる。
つい最近他人に共感しすぎて疲れてしまったことがあったばかりだ。
では共感にかわるものは何か?
その答えも用意されていた。「思いやり」である。

共感と違って思いやりはエネルギーを搾り取らない。
ー中略ー
思いやりはよりコントロールしやすく、客観的で、建設的だからだ。
思いやりは他者の苦悩を共有することではなく、それを理解し行動するのに役立つ。それだけでなく思いやりはわたしたちにエネルギーを注入する。

Humankind 希望の歴史(下巻)
エピローグ
p.223

この発想とてもいいと思った。
私の好きな源さんの曲の「日常」の歌詞の中に、共感はいらない、という一節があるけど私は共感はいらないと言い切っちゃうのすごいとずっと思っていた。誰かに共感されるのもするのも必要だと思っていたから。
でもそれも独り善がりなことなんだと分かった気がする。
※源さんの曲の中での共感はまた別の意味だと思いますがなんとなく私の中で結びついただけです。

さいごに

まずは上下巻読み切った私へ、お疲れさまでした。
なかなかタフな本でした。
この本を読むきっかけをくれた星野源さんに感謝です。
私の普段の生活からはこの本には巡り合えなかっただろうから。
事実に即した現実的な視点を持つことが少しでも生きやすくなる一つの方法なのかなと思った。冒頭に自己啓発本かと思ったと書いたけど、それで言うなら本書は実用書の類に入ると思います。

これを読んだ後だと源さんのエッセイやインタビューの理解度が深まる気がする。あの時のこの発言はここに繋がるのかな?なんて想像してしまう。
正解はどこにあるか分からないけれど。


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