しろくろ

ノンバイナリ。身体に強い違和感を感じるものの、あまり自分の性にこだわりがなく、男性とし…

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ノンバイナリ。身体に強い違和感を感じるものの、あまり自分の性にこだわりがなく、男性として生まれ、男性として生きています。近日ホルモン治療を開始する予定です。人生の大半をアメリカで暮らしています。40代前半。

最近の記事

叶わなかった夢

子供の頃に描いていた夢や目標があります。 幸せな結婚をすること。 海外で暮らすこと。 一軒家に住むこと。 貧しかった両親よりも豊かになること。 様々な国出身の人たちと一緒に仕事をすること。 これらの夢や目標は42歳になった今、ありがたいことに全て叶いました。陰で私のことを支えてくださった方々には、本当に感謝しかありません。 しかし実は、もう一つ、叶わなかった幼少期からの夢があります。それは、性別を男性から女性に変えることでした。大きくなって未来の世界になった時、

    • 女装ではない女装:自分を美しく魅せる方法を見つけた話

      私は未熟児として生まれ、幼少期から体が細く、筋肉がほとんどありませんでした。周りの男の子たちと自分が少し違うことに、小学校の身体検査がきっかけで何となく勘づいていました。というのも、保健室でパンツ一丁になり並んで待たされるわけですから、普段見ることはないクラスメイトの半裸を嫌でも見ることになります。みんなはガッチリとした骨格に筋肉のしっかりついた厚みのある体なのに、私はとても細身で骨と皮しかない身体で、今でもその体つきは変わりませんし、私の顔立ちも男の子というよりは中性的な顔

      • カミングアウトで夫婦関係が改善した話

        私の妻は健康であるにもかかわらず結婚後も子供を産まない決断しました。私も妻の意思を尊重しました。 子育て以外で生きがいを見出すのかと思いきや、仕事もボランティアもせず専業主婦をずっと続けています。妻が幸せならそれでいいと思っています。 しかし、少し前までは、いかに自分の人生や境遇が大変かを延々と毎日のように私に向かってぶちまけていました。だから少しでも妻の負担を減らそうと、掃除機も皿洗いも洗濯も私が引き受けました。週末は料理だって作ります。庭の手入れも私の担当です。なのに

        • 性別違和 ≠ 性自認

          繰り返しになりますが、性別違和感とは4歳頃からの付き合いになります。これは否定しても否定できない事実として私の中に存在しています。 しかしながら、性自認は私にとって大きな意味を持つものではありません。男に生まれたのだから生物学的に男だ、と言う事実は受け止められることができるのです。だからといって、男になりたいとは微塵も思いません。 私の望みは男の特徴や雰囲気を自分から消すことです。若い頃は童顔だったこともあり、男の自分になんとかギリギリ我慢できていました。ですが、ここ数年

        叶わなかった夢

          ノンバイナリかもしれない

          私はトランスジェンダーではなく、ノンバイナリかもしれません。長い間、「トランスジェンダー」という言葉では自分を十分に説明できないというジレンマを抱えていました。 「ノンバイナリなんて、若い子のためのものでしょう?」 そうやって思い込んでいましたが、今日、その考えが間違いだったことに気づいたのです。 自分を説明する適切な言葉を見つけることは、非常に心地よく、便利で、安心感を与えてくれます。性別移行をしたい、という感覚ではなく、自分自身になるという感覚がより近いのです。

          ノンバイナリかもしれない

          4歳からの違和感:性別違和と向き合う

          はじめに: 鏡の中の自分との出会い 1986年。4歳の私は初めて鏡で自分の顔を見た時、強烈な違和感を感じました。背が少しだけ伸び、踏み台を使えばやっと見えるようになった洗面所の鏡。そこに映る自分の姿は、私が思い描いていたものとはかけ離れていました。 「変な顔。可愛くない。」 自分の姿に強烈な違和感を抱いたその時の4歳児の気持ちを、なんとか言語化するとこんな感じになります。思っていたのとは違う、飾り気のない姿。可愛くない。奇妙で気持ち悪く、とてもじゃないけど自分の姿を直

          4歳からの違和感:性別違和と向き合う

          性別は関係あるのか?トランスジェンダーの脳におけるホルモンの役割

          2018年7月5日にNeuropsychopharmacology Reviews(神経精神薬理学の評論誌)に掲載された論文の翻訳です 著者: Hillary B. Nguyen, James Loughead, Emily Lipner, Liisa Hantsoo, Sara L. Kornfield & C. Neill Epperson ヒラリー・B・グエン、ジェームス・ラウヘッド、エミリー・リプナー、リーサ・ハントスー、サラ・L・コーンフィールド、C・ニール・エ

          性別は関係あるのか?トランスジェンダーの脳におけるホルモンの役割

          過去のトランスジェンダーの人々を対象にした研究から学ぶべき教訓: まず、害を与えないこと

          2024年5月28日に発行された科学雑誌ネイチャー(Nature)の記事の翻訳です 何十年にもわたる神経科学の研究は、トランスジェンダーのアイデンティティに生物学的な基盤があるかどうかを探ることに焦点を当ててきましたが、研究者は社会的要因も考慮する必要があります。 By Mathilde Kennis, Robin Staicu, Marieke Dewitte, Guy T’Sjoen, Alexander T. Sack & Felix Duecker 著者: マチル

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          2度目の思春期

          「やばい、私、本当に男の子じゃん!」 初めて鏡に映る自分の顔を見てショックを受けたのは4、5歳の頃。 「そんなこと言ったって現実に私の身体は男性で、それを変えることなんて不可能なんだから、運命を受け入れ、頑張って男性として生きていこう。」 とても保守的で厳しい親のもとで生まれ育った私はいつしか、そういう風に生きてきた。私が子供だった1980〜90年代の当時はテレビで「おかま」とか「ニューハーフ」という存在がイロモノ的に面白おかしく扱われていた時代。当然母はそんな存在を嫌

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