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キッチンの歴史 #カレースタディーノート

ビーウィルソン『キッチンの歴史』が面白かったので読書メモと内容の要約を書いておく。カレーとは直接の関係はなく文脈の本ではあるが、内容は応用できる部分も多いのではないか。月並みな感想だが、古今東西あらゆるトピックが登場するため読み応えがある。食文化研究という意味では大変参考になりそうな文献。10年前の本ではあるがツイッターやスマートフォンなどハイテクな単語も登場し、キッチンから見た人類史をざっと見返せる良本。


本の概要

・個人的思考と思われているものの多くが、実はテクノロジーの変化の賜物である。キッチンで使う料理道具は私たちの食の中身やあり様、考え方にどのような変化をもたらしたのだろうか。日々の家庭料理の歴史やそこに道具がもたらした功罪とは何か。

・人は食べることを避けることはできない。私たちはみな食べるが、地域や時代により方法は千差万別である。その違いをもたらしたのはキッチンで使われる道具だ。テクノロジーというとコンピュータやハイテクなものを想像しがちであるが、真空調理器や冷凍粉砕調理器具だけがテクノロジーなのではない。スプーンやフォーク、鍋も計量カップも立派なテクノロジーだ。

・食物史の本は多いが、何を料理したかに着目していることが多く、どのように料理したかについてはあまり語られることがなかった。今当たり前に使われている道具やテクノロジーがいつ登場したのかは、一度登場してしまえば意識されることはない。

・食の歴史はテクノロジーの歴史である。私たちの料理は道具やテクノロジーによって食感や味覚、栄養素、食材の文化的イメージまで変化してしまう。

・料理道具によって実際に身体の変化も起きている。加工度合いによって同じ食物でも摂取カロリー量は違う。例えばよく煮込まれたりんごピューレと生のリンゴでは消化に必要なエネルギーが違う。調理の過程で食材を切ることが定着すると、歯並びも実際変化している。

・ただ一つ確かなことは、料理というテクノロジー抜きに私たちは生きられないということだ。

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