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東京マサラ部24.トーキョーリトルダッカ、東十条をハラール散歩しよう

東十条は東京のリトルダッカとも呼ばれ、聞くところによるとバングラデシュ人が1500人〜2000人規模で住んでいるらしい。

たしかにJR東十条駅の東口にはいくつものハラール食材店やバングラデシュ料理店が点在している。しかし、なぜこの場所にこんなにもバングラデシュ人が集中しているのだろうか

今日は「東十条ハラール散歩」と銘打って、東十条の街を練り歩きバングラデシュ料理を食べ、実際にハラール食材を買い、街を行き交うバングラデシュの方々に直接話を聞いて回った。

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商店街に飾られた万国旗の中にバングラデシュ国旗はなかった



パチンコはハラール?

街歩きを始めてまず驚かされたのは、パチンコ屋さんの入り口にベンガル文字が表示されていること。日本語→英語→中国語→韓国語→ベンガル語というふうに電光掲示板の表示が切り替わっていく。ベンガル人もパチンコをするのだろうか。わからないが、それだけこの街に根付いているということだろう。パチンコってハラール?

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バングラデシュ料理店

散歩して営業を確認できたバングラデシュ料理店を列挙する。もちろんこれ以外にもたくさんあると思われる。

インド&バングラレストラン タイガー (オススメ★)

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ここは以前一度訪れたことがあるのだが、そのときはバングラデシュ人で溢れかえっていた。メニューもビリヤニやジョルやバジ、日替わりのメニューも多数揃えており、店舗の中では食材も販売している。

2016年10月オープンとすでに5年目であり評価も高い一番の老舗。インドアンドバングラレストランという店名になってはいるものの実際はほぼバングラデシュ料理しか出していない。

以前は食材店は充実していたものの、実は最近までここが唯一のバングラデシュを出す料理店だったという。こなれたバングラデシュ料理を食べたいならばタイガーへ直行で間違いないだろう。



AROOSH DINING(アロシュダイニング)

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ここはおそらくバングラデシュ人経営のレストランだと思うのだが、メニューのラインナップは多国籍となっている。よくあるナンとインドカレーっぽいものがメインではあるもののクリームパスタがあったり、食後24時間はお腹いっぱいになるという24時間セットという謎メニューがあったり。

店の前には洋食屋さんのような食品サンプルが並んでいる。今日は入る勇気がなかったが、心の余裕と時間の余裕があるときに訪問してみたい。


AL BARAKAH

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ケバブ屋さんを謳っているため食べログ上の分類ではトルコ料理店になっているが、ベンガル文字も書いてあり、ブナキチュリやテハリなどのバングラデシュ料理がたくさんメニューに載っていた。ここは食材店も兼ねており、パパイヤなどちょっとめずらしいものも売っている。

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キングケバブ 東十条店(BANGLA CURRY & BIRYANI HOUSE)

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ケバブをメインに謳っているばかりに間違ってトルコ料理店に分類されているバングラデシュ料理店は多そうだ。

ここキングケバブは1Fがケバブやさんで2Fはバングラデシュ郷土料理が食べられるようになっている。

しかしバングラデシュ郷土料理とは!なんて甘美な響きでしょうか

今日のハラールさんぽではここで昼食をとることにした。
店員さんに話を聞いてみると、十条駅前に本店があり、バングラデシュ郷土料理を出し始めたのは最近らしい。

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メニューには載っていないのだが、注文すると出てくる裏メニューのボルタセット。スタッフのまかない用として用意しているものらしい。

このときの内容はアルボルタ(じゃがいも)、べグンボルタ(なす)、ロシュンボルタ(にんにく)。どれもごはんに合う味付けでとてもおいしかった。特ににんにくのボルタは塩加減もちょうどよい。サラダとビーフカレー、ダールもついてくる。

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ビリヤニは長ネギが載っており、味はソースっぽい。炒めビリヤニだろうか。ちょっと期待していたものと違ったが、おいしかった。

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後述するがこの付近にはモスクがある。イスラム教徒は金曜にモスクに礼拝に集まるため、毎週金曜日はビリヤニやボルタもスペシャルなものになるという。

東十条をハラール散歩するなら、金曜がベストなのかもしれない。



ARISA HALAL FOOD & ARSHI RESTAURANT

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もともと食材店だったところを改装して飲食店を始められたようで、まだ内装が全然整っていない感じ。ちょいちょい店内飲食も始まっていたようだが、オープンは正式には12/25だという。

ケバブは今月末から始まるが他にもメニューがかなり充実しており、バジボルタなどの家庭料理もビリヤニも食べられる。
店主のハビブさんは日本の専門学校を経て日本の居酒屋などを勤務した後、バングラデシュ人オーナーが所有するこの場所を改装してお店を始めたという。彼はかなり日本語がうまく、色々なことを教えてもらった。

彼は学生時代からずっと東十条に住んでいる。家賃もほどよく、JRで都心にも出やすいし、バングラデシュ人のコミュニティがすでに出来上がっているので生活しやすいのだという。

どのくらいのバングラデシュ人が東十条周辺に住んでいるのかと聞いてみると、1500人以上だという。赤羽などの周辺地域まで合わせると2000人を超えると言っていた。本当だとすると結構すごい。

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店内ではバングラデシュのテレビがずっと流れており、お祈りの唄を聞くとダッカでの記憶が蘇ってくる。

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すでにおなかいっぱいだったため料理はまた今度にして、チャイを飲んで休憩することに。牛乳を煮詰めた濃厚なマライチャイ(マライはクリームの意味)をごちそうになった。

このお店にいるときは、東京にいるのかダッカにいるのか、空間が歪んで一体どこにいるのかわからなくなっていた。



ハラール食材店

ここからは、歩いて確認できたハラールマートを列挙してみる。飲食店に併設されているものはすでに上であげているので割愛する。

AZAN HALAL FOOD

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アザーンは、朝5時とかに流れてくるアレである。
今日はまだ時間が早かったのか閉まっていて様子を見ることはできなかった。



OISHI HALAL FOOD おいしいハラルフード

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名前がおいしい食材店。何も買わずに店員さんに色々聞いていたら怪訝な顔をされた。



SABA HALAL FOOD

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東十条から十条へ向かう道の途中だが、マンゴーやザクロなどの果物も充実しているハラルマート。チニグラ米やフレッシュハーブなども売っている。

ここでチニグラ米とカリジーラ米を購入した。同じものらしいが、何が違うんでしょうか。

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CLASSIC HALAL FOODS

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店の前まで行ったもののシャッターが閉まっていたため詳細は確認できず。



東十条ハラルマート(オススメ★)

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ハラール食材店めぐりをしていて最も驚きがあったのがこのお店だ。

駅には比較的近いのだが入り組んだ場所にあるためわかりにくい。近くまで行くと親切にも看板が出ている。

お店に入ってみると、店員は日本人である。日本人が店員をやっているハラルマートに一度も行ったことがなかったので店内の風景との間に強烈なギャップがあった。話を伺ってみると、内装工事などを手伝っているうちに仲良くなり、いつのまにかバングラデシュ人のオーナーが所有するお店の番までするようになったという。このお店ができてからは3年だが、オーナーは長く日本で仕事をしている。食材店がここまで多い理由として、ビザ申請のため収入を確保できる何らかのビジネスが必要なことがあり、ここのオーナーもその手の口だ。

このお店はバングラデシュ人が日本に進出するときのハブ的な役割も果たしているらしく、物件を斡旋したり細々とした手続きをしたりしているらしい。近隣のバングラデシュ人で彼のことを知らない人はいないという。

ここではビリヤニを作るためのケウラウォーターとローズウォーターを購入した。品揃えはピカイチだし、日本語で説明もしてくれるのでおすすめのお店です。

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おわりに:マディナマスジッド東京を訪れつつ

今日はハラール散歩と称して東十条をぶらりと歩いてみた。

実際に歩いてみてわかったことがいくつかある。

まず、東十条にバングラデシュ料理店が充実してきたのは意外と最近であること。少し前まではタイガーレストランくらいしか食べられるところはなかった。そして、それなりに大きなバングラデシュ人のコミュニティがあるために日本人向けに商売をしなくても十分回っていること。これはそれだけお店の現地感が強化されることにつながり、個人的には嬉しい限りである。 

日本人が働いているハラール食材店があることには驚いたが、それはそれだけバングラデシュ人のローカルへの入り込み方が長く深いことの表れであると思う。数名のバングラデシュ人の方にお話を伺ったが、長い人はもう20年近く日本に住んでいる。

当然ながらムスリムいるところにモスクありということで、駅前に4階建てのモスクがある。キングケバブの店員さんに聞いたら「誰でも勝手に入っていいよ」ということなので入ってみた。

ムスリムの考え方的には、行事やお祈りなどを体験してもらうことはイスラム教徒を増やす勧誘活動にもつながるのでウェルカムなのだという。

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入ってみると中は広々としていてがらんとしてなにもない。ただメッカの方角が示されているだけだ。

ちょうど2人のバングラデシュ人の方がいたので、いろいろ世間話をした。
このモスクは3年前に共同で土地を購入して、1年前にできたばかりなのだという。お金もかかり作るのは大変だったけど、みんなで作った大切な場所だと伺った。つたないベンガル語の単語を混じえつつ、バングラデシュに行った話やバングラデシュ料理の話でひとしきり盛り上がった。

それにしても、異国に来て地域に入り込み、コミュニティを築き上げ、モスクまで建ててしまうなんてすごい。彼らの同胞ネットワークや郷土愛、つながりの強さを少し羨ましく思った。

ネットや口コミも大切だが、実際に足で歩いてみて自分の目で確かめ、行き交う人々に話を聞いてみることは大切だ。家に引きこもってなにかと画面の中で完結しがちな最近では特に。質感を伴わない情報は引っかかりも心の動きも少ないのだ。




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