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2023年1月受験から見る、2月に出そうな問題(社会科)

はじめに

2023年の1月受験の社会の問題を、おおむね解いてみました。そこから、2月の本番に出そうな問題・事柄を書いていきます。2月受験で活用していただければ幸いです。また、これから受験を控えている、現4年生、5年生の方や、お家の方もご覧いただければと思います。
地理、歴史、政治分野は全文を公開しますが、時事問題や重要な事柄については、有料(500円)となります。記事作成にはコストも時間もかかっています。質に関しては、どの塾の予想にも負けないと思います。皆様のご協力をお願いします。

1 地理

① 九州…西九州新幹線開業に合わせて

●2023年受験のトピックの一つが、武雄温泉~長崎間の、西九州新幹線の開業です。例年新幹線は頻繁に出題されますが(そのため全ての新幹線の路線図、主要駅を覚えておく必要がありますが)、今年は特に西九州新幹線の路線図と、沿線について確認しておく必要があります。

出典:JR九州 jrkyushu.co.jp/train/nishikyushu/

嬉野温泉は浦和明の星で出題されました。諫早は諫早湾の干拓が出るかもしれません。ここから島原鉄道が島原半島方面に出ていますので、島原・天草一揆や、雲仙岳の噴火に関することが出るかもしれません。
●長崎県がよく出題されました。特に全国2位である海岸線の長さや、長崎の農作物を答えさせる問題が出ました。長崎県の農業、漁業の様子は、振り返っておいた方が良さそうです。
●西九州新幹線は、新鳥栖~武雄温泉の間をどのようにするかが、未だに決まっていません。車輪の幅を変えられるフリーゲージトレインを導入する予定だったのですが、開発に失敗してしまいました。長崎県や国は、フル規格新幹線を求めていますが、佐賀県はそれに強く反発しています。このあたりの経緯を確認しておきたいところです。

②北海道…ウクライナ・ロシア戦争に関連して

●九州と並んでよく出題されたのが北海道です。これにはウクライナ・ロシア戦争が関係しています。ロシアは「第二次大戦後に画定した国境を、実力で変えよう」としました。そこでロシアと北海道の間の国境線がどのように変化したかを答えさせる問題が出ています。

市川 大問2問2

これは歴史の問題でもあります。北方領土とその近辺の地理は振り返っておきたいです。
●北海道の岬や、新しく指定された「厚岸霧多布昆布盛国定公園」といった、かなりマイナーな問題も出題されています。また作物を問う問題も頻出です。
●なんといっても多く出題されたのは、アイヌに関する事柄です。東邦大東邦の大問3は、アイヌ初の国会議員として知られる、萱野茂のアイヌ語の演説から始まります。関係者の度肝を抜いた時刻表問題も、白老町のウポポイ(民族共生象徴空間)へのルートを考えるものでした。ウポポイのWebページを見て、場所と、どのような展示物があるかを確認しておきたいところです。

③エネルギー

●昨今の光熱費の高騰(これもウクライナ・ロシア戦争に関係します)を受けて、発電量の表から地域、県を答えさせる問題が出ています。

栄東東大特待 大問1問2(6)
浦和明の星 大問1問10

栄東では「地熱」、明の星では「原子力」発電が、見分ける鍵になっています。地熱発電と原子力発電については、「どこの県に発電所があるのか」を振り返っておく必要があります。
●今後は貿易赤字、温室効果ガス排出量などの問題から、原子力発電の再稼働が、国家的争点になりそうです。1月受験では出題されませんでしたが、原子力発電のメリットとデメリットは把握しておきたいところです。

2 歴史

①天武天皇~持統天皇

●浦和明の星、東邦大東邦、城北埼玉などで立て続けに出題されました。中大兄皇子は大きく取りあげられますが、天武天皇から持統天皇にかけては、駆け足になりやすいところです。大海人皇子時代の「壬申の乱」、天武天皇時代の「藤原京造営を命じる」「歴史書の編纂を命じる」「富本銭」「薬師寺造営を命じる」(八色の姓、飛鳥浄御原令は中学受験の範囲外)といったことは確認しておきたいです。
●天武天皇が命じたことを実現したのが、后である持統天皇です。「鸕野讃良皇女(うののさららひめみこ)」という名であり、即位して持統天皇になりました(このあたりの経緯も調べておきたいです)。持統天皇は、皇女時代は壬申の乱の原動力の一つであったといわれます。689年に天武が命じた飛鳥浄御原令を施行します。694年には藤原京遷都を実現します。
●どうして今になって天武、持統なのかというと、ネタ本が示されたからではないかな、と思います。瀧浪貞子さんの「持統天皇」(中公新書)です。

●里中満智子の「天上の虹」でも描かれましたが、鸕野讃良皇女=持統天皇は、非常に物語性の強い人物ですよね。現代にも通じる「強さ」を持った女性であると思います。

②風刺画

●以前から風刺画問題はよく出題されていましたが、今年は例年になく多い印象です(大宮開成、開智先端A、市川、昭和秀英など)。例えば市川では、アンリ・マイヤー「中国のケーキ」が出題されました。

出典:フランス国立図書館デジタルアーカイブ(https://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k716261c/f8/)

いつの時代のもので、どんな状況を表しているか、後ろで両手を挙げている人の国名を挙げた上で答えなさいという問題です。世界史を学んだ人であれば、下段左から順に、イギリス、ドイツ、ロシア、フランス、日本だと分かるのですが、小学生には厳しいです。
そこで役立つのが、風刺画を集めた本です。今年のネタ本の一つは、若林悠さんが編者となった『風刺画が描いたJAPAN』なのではないかと思います。

高い本ですので、なかなか手に取るのは難しいでしょう(図書館に入っていることが多いようです)。手軽に対応できるのは、各社から出ている大学受験用の日本史図録、特に山川出版社のものです。

特に明治以降は多数の風刺画が載っています。ちょっと絵が小さくて見にくいのですが、大きい絵で見たい場合は、ネットで検索したり、本を借りてくればよいのです。
●今からできることは、各塾で配布している歴史の資料集を見ることです。なるべく多くの風刺画を見て、それがどの事件を指しているのかを知っておきましょう。風刺画は面白いですしね。

3 政治

①選挙(衆参両方とも)

●各社の「重大ニュース」では、参院選が注目されていました。ですが1月受験を見ると、衆院選、参院選、ともに多く出題されています。2023年には増税が見込まれ、その前に衆院選があるのでは、という観測があります。それに合わせたと思われます。ですから2月受験でも出るでしょう。
定数、選挙区と比例代表の数、被選挙権などの数字は、全て完璧にしておく必要があります。また上位校では、衆院、参院のドント式のやり方や、衆院での「重複立候補」、そして「復活当選と惜敗率」を確認しておく必要があります。各塾のテキストや重大ニュースを読み返しておきましょう。
●また、1月受験では出なかったのですが、女性議員の少なさが問題にされるのでは、と予想しています。2021年の衆院選では、候補者の女性割合は17.7%、当選者は9.7%であり、世界でも非常に低い水準です。2022年の参院選では、候補者28.1%、当選者22.6%ですが、それでも低いです。
2018年に、候補者の男女比を可能な限り同じにするという、「候補者男女均等法」が施行されています。ですが罰則がないために、こうした「男性が多い」状況が続いているのです。
世界経済フォーラムが毎年「ジェンダーギャップ指数」を発表しています。順位は146か国中116位(前回は156か国中120位)で、先進国の中で最低レベルです。ギャップの大きさの原因は、もっぱら政治(女性議員が少ない)と、経済(女性管理職、意志決定者が少ない)です。こうした状況を改善するために、強制的に女性に数を割り当てる「クォータ制」を行なっている国もあります。日本も今後検討を進める必要があるでしょう。

②憲法改正の手続き

●これは本当に頻出でした(開智先端①、栄東東大特待、市川、立教新座など)。現在の政治状況を考えると、すぐに改憲、とは言いがたい状況です。ですがすでに、改憲に賛成する勢力が、衆参両院とも三分の二を超えています。いつでも改憲手続きに入れる状況にあるのです。選挙同様、手続きを完璧に暗記しておく必要があります。

市川 大問4問1です。3ビット問題ですが、きちんと覚えてあれば余裕です。

●現在改憲勢力の中心である自民党は、次の4点を改正すると主張しています。
・憲法9条に自衛隊を明記する
・災害・戦争時に「緊急事態」を宣言でき、内閣のできる事を増やす
・参院選で合区を解消する
・教育環境の充実を憲法に明記
これらは出題されていませんが、覚えておくのが望ましいでしょう。

③ヤングケアラーとこども家庭庁

ヤングケアラーは、獨協埼玉、昭和秀英、開智先端①などで出題されました。

獨協埼玉 大問3(1)

ヤングケアラーとは、学校に行く年齢なのに家族のケアをしている人です。こうした子どもは、勉強の量が減る、部活に参加できない、進路が狭まるといった問題を抱えています。この問題は2018年にすでに、澁谷智子さんが中公新書で訴えていたのですが、2022年NHKスペシャルで取りあげられたことで、ようやく社会全体の問題として共有されるようになりました。

私が昨年書いたnoteも参考になると思います。
●安倍元首相殺害事件から、「宗教二世」も問題になっていることが明らかになりました。これについても私のnoteをご覧ください。どんな問題かについては、菊池真理子さんの『「神様」のいる家で育ちました』がわかりやすいです。

●ヤングケアラーも、宗教二世も、人権を侵害された子どもであることには変わりありません。こうした子どもについては、4月から発足する「こども家庭庁」が、縦割り行政になっていた省庁の枠を越えて対応することになっています。「宗教二世」は、信教の自由と関わりますので、あまり出題はされないと思います。ですが「ヤングケアラー」「こども家庭庁」は、きちんと書けるようにしたいです。

4 時事問題、重要な事柄

このセクション以降は有料です。触れる項目は次の通りです。
①ウクライナ・ロシア戦争の出題状況
②大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の影響は?
③2022年の50年前、100年前、150年前
④ブラタモリ問題
記事作成には、たくさんの時間と参考資料などのコストがかかっています。皆様のご協力をお願いします。

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