見出し画像

あふれる低確率ガチャ

自分は恵まれている部類だと思う。
実家は小金持ちで小遣いもそれなりに貰えていた。
学業にかかる金も塾から何から全部不自由なく払われている。
社会人になっても、実力以上に評価され、良い待遇を得ていると思う。

ブラック企業ばりに必死で働いた経験もあるにはある。
月月火水木金金で毎日16時間くらい働いたことだってあった。
人並みに努力したり、読書好きが高じて周りには勉強家だと勘違いされている。
人より本を読むのが早いというだけで、様々な面でスタートダッシュができたりもする。

自分自身がつまらない人間で、暇で暇でしょうがいないというコト以外に悪いことなんて一つもない。
物欲はあまりないが、買いたいものや食べたいものを我慢することはない。
そんな状況にも関わらず、貯金はじりじりと貯まっていく。
思い切りの良さのおかげで、放置しているだけの投資も良い状況だ。

僕は恵まれている部類だと思う。

とはいえ、自分よりも運が良い人が腐るほどいるのは良く分かっている。
実家が小金持ちといったが、所詮は地方でちょっと家が広い程度だ。
仕事で東京に出てくると、都内に家を持っている人がゴロゴロいる。
家どころかマンションだったり、ビルごと持っていたり。

新入社員が入社祝いに親から車をプレゼントされたという話も聞いたことがある。
自分の身の回りじゃなくても、宝くじで当たるような億という突飛なお金を最初からハンデとして持っている人は、実は探せばちらほらいる。

下を見たらキリがないように、上を見たらキリがない。
僕は全体で見れば、実家や生まれなど平均よりは良いほうだと思う。
しかし、ピンとキリの幅は半端じゃない。
特にお金というのは、一箇所に集まりやすい。
日銭を稼ぐのに精一杯な人がいる傍ら、親の財産だけで遊んで暮らせる人もいる。

自分が平均よりは上といっても、てっぺんと比べたら全然話にならないくらいだ。
自分の家は小金持ちだという自覚はあるものの、地元の本当の金持ちの家とは比べ物にならなかった。

生活の規模が異なり、価値観も同様に異なる。
前提条件が違うので、話が合わない。
同じものの見方ができないのだ。
そういう意味では、僕は平均より下の家庭と価値観は近い。

生まれについて長々と書いたが、世の中は低確率ガチャにあふれている。
正直、戦争などをしている地域を考えると、日本に生まれた時点でかなりの低確率ガチャをひいたものだと思う。
日本は、徐々に衰退しているので、将来に期待できないかもしれないが、かといって毎日の衣食住に迷う人は稀だろう。
仮に困窮している人も知識を活用して、セーフティーネットを使えば良い。

ただ、自分の努力とか熱意とかそういったものとは異なる次元で、低確率ガチャを引き寄せることの難しさを感じる。
今いる場を維持するにもそれなりのコストがかかるが、さらに別の次元に行こうとすると途方がない。
というより、努力とか熱意とかそういったものではなく、要は時の運とか場所とかによるガチャ要素が強いと感じてしまう。

僕が中学の頃、ITバブルだなんだと騒がれていた。
高校からプログラミングを勉強し始めた僕は、今後の人生は非常に明るいものだと考えていた。
しかし、ITバブルは一瞬で弾けてしまい、僕が必死に勉強したIT技術の価値は暴落してしまった。
当時は、お先が真っ暗に思えたものである。ただの学生の分際で。

だが、長い目で見た時に、やはりIT系の技術を若いうちに学んでいたことは大きくプラスに働いている。
今の僕はプログラマーではないが、ほとんどの職場はITサービスの利用なしには、もはや仕事にはならない。
プログラマー時代に当然のように使っていたプロジェクト管理ツールを使うだけで、マネージャの能力が高いと言われたこともある。

僕だって努力と言って良いことはしたつもりだが、ITバブルの上昇も下降も僕の実力とは何の関係もない。
ITバブルの上昇気流がなければ、僕はIT技術をそこまで熱心に学ばなかっただろう。
ただ漫然と情報系の道に進んだだけで、多大な得をしている。
これはただ運がよかったということだ。

損の側でいけば、僕は社会人になったばかりの頃にリーマン・ショックが起きた。
そのせいで、新人だった僕の給料はさらに減額され、数年に渡って給料は据え置きだった。
正直、社会人生活を通じて、一番頑張って死ぬほど働いていたのは新人の頃だ。
振り返ってみても、あそこで経験や技術の貯金を積んだから、今その貯金を崩せる立場にあると思う。
しかし、その時は給料はまったく上げて貰えなかった。

転職する度に自分は成長していないのに、給料が上がった。
要は、実力よりもどの場所にいるのかということの方が重要なのだ。
プログラマーばかりの職場では、僕はあまりスキルを褒められたことがない。
むしろ、プログラマーなんて周りにいない環境で情報システム部みたいなことをやっていて、アホほど評価される。
周りに全然知識がある人がいないので、重宝されているのだ。

僕のスキル自体は上がっていない。
それどころか、新しい知識などの取得にかなり怠けているので、むしろ劣化しているとさえ思う。
頑張る頑張らないに関わらず、成果が出る時は出るし、出ない時は出ない。

ITバブルもリーマン破綻も震災もコロナも戦争も。
そんな大きなものじゃなくても、時流などを変えるほどの能力は、ほとんどの人にない。
結局は、低確率ガチャを引き当てなければならないのだ。
もちろん、ガチャであるから、ガチャを引くという行為を沢山した方が当たる確率が上がる。
それは間違いない。そうした行為は意味のある努力と言って良いだろう。

ただ、世の中に低確率ガチャが溢れている事は認識した方が良い。
自分のスキルだけで出来る範囲とそうでない範囲を見極めた方が安心だ。
そうすることで、肩肘張らずに気楽に生きる一歩になると思う。
世の中は低確率ガチャの連続なのだから、あまり考えすぎずノリで生きれば良いからだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?