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【"Faint Lights" 田中慎太郎 with Phidias Trio】 曲目紹介その2

2022年12月10日の【"Faint Lights" 田中慎太郎 with Phidias Trio】の公演が、いよいよ間近となってきました!リハーサルや諸々の準備も進行中です!

ひとつひとつの音や響きを丁寧に、そして純粋に耳を澄まして聴きたくなるような魅力が田中さんの音楽にはいつもあると感じます。私が初めて田中さんの作品を聴いたのは winter light ensemble の映像でしたが、そのサウンドはどこか懐かしさを呼び起こすものでありながら、同時にとても清新で、強く印象に残りました。
今回、初めて田中さんの音楽を演奏できるのがとても楽しみです!(川村恵里佳)


引き続きnoteでは、演奏曲について、田中さんからのコメントをご紹介します。
今回は、この公演で初演される新作のトリオ作品《Faint Lights》と、同じく新作のピアノ作品《重なりあった時間》についてです。

【Faint Lights】
Phidias Trioの演奏をはじめて聴いたとき、何より印象に残ったのは個々の音色の美しさでした。演奏会の表題曲でもあるこの曲は、ピアノ・クラリネット・バイオリンのトリオ編成でその音色をフィーチャーしようと試みたものです。全体を通してダイナミクスは抑制され、3つの楽器はメロディーと伴奏のように異なる役割を持つのではなく、響きの立ち上がりと減衰の脆く儚い質感を互いに2度の音程を当てることで確かめ合い、ひとつ音響体を形成します。おそらく普段聴いている音楽より音量の小さな音楽体験になると思います。どうぞ耳を広げてお楽しみください。

【重なりあった時間】
テープに録音された音源は、その再生速度を上げたり下げたりすると、同時に音程も上がったり下がったりします。ピアノのためのこの曲は、原型となるフレーズを提示したあと、4度、5度、8度下の声部がカノンのように模倣するのですが、テープで音程を下げたときと同じように音価も引き伸ばしてみました。模倣する声部の振動数比は、8度は2/1、5度は3/2、4度は4/3なので、それぞれ2倍、1.5倍、1.33倍に引き伸ばされます。テープエコーというギターのエフェクターにインスピレーションを得た発想です。結果として現れるリズムは規則性のないものになりますが、例えばそよ風に吹かれる風鈴のように、私たちはしばしば規則性のないものにこそ自然な心地良さを感じるものです。

田中慎太郎

公演詳細

"Faint Lights" 田中慎太郎 with Phidias Trio
2022年12月10日(土) 15:00開演(14:30開場)
KMアートホール(東京都渋谷区幡ヶ谷1-23-20 京王新線幡ヶ谷駅より徒歩6分)

Program
アルヴォ・ペルト
・鏡の中の鏡
・Variations for the Healing of Arinushka

田中慎太郎
 アルバム "永遠と一日" より
 ・春は馬車に乗って
 ・落葉の踊り
 ・灯火
・月は窓辺で夢を見守る #
・音の火影 #
・重なり合った時間 #
・ほのかな明かり #
# 世界初演

田中慎太郎
音の肌触り・静けさをテーマに、モダンクラシカルからアンビエント、映像作品への楽曲提供など多様な形式での制作活動を展開。2018年、堀坂有紀とのユニット「静かの基地」としてアルバム「つきのふね」をリリースする。以降、バイオリニスト新村隆慶とのデュオ「詩音李」によるアルバム「夢は真冬の追憶のうちに凍る」のリリース(2021年)、踊りと演奏によるグループ「満月カルテット」による2日間公演「明月の夜」(2022年)など、コラボレーションによる活動も多数。2022年、室内楽アンサンブルによるソロアルバム「永遠と一日」をリリース。


チケット
一般 3,000円 / 学生 1,500円 (当日券は各500円増し)
こちら↓のリンクからご購入いただけます。

お問合せ phidias.trio@gmail.com
主催: Phidias Trio
文化庁「ARTS for the furure! 2」 補助対象事業

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