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GERD患者は認知症を発症するリスクが高いですか

割引あり

はじめに
認知症は後天性の多因性症候群であり、罹患患者の生活の質に悪影響を及ぼします(Gale et al.)。 認知症は、記憶障害や社会的・職業的機能の低下など、さまざまな症状を特徴とします(Rossor et al.)。 脳血管機能障害は、さまざまなカテゴリーの認知症の病因であると考えられています(Raz et al.,2016)。

胃食道逆流症(Gastroesophageal Reflux Disease:GERD)は、逆流した物質が食道粘膜に長時間接触し、食道粘膜の損傷や炎症を引き起こす疾病です(Altomare et al.)。 台湾の疫学調査によると、40歳から60歳の人はGERDを発症するリスクが高く、地域社会での有病率は約25%です(Hung et al., 2011)。GERDによる逆流は、消化管のマイクロバイオームの変化を引き起こす可能性があります。また、消化管が常に傷害される結果、炎症が起こり、体内のサイトカインの調節異常を引き起こす可能性もあります。

これまでの研究では、胃液の逆流が神経系の機能に悪影響を及ぼすことが報告されています(Dobrek et al.2004;Wang et al., 2019)。さらに、GERDの発症にはサイトカイン産生の誘導が重要な役割を果たしています(Altomareら、2013;Ustaoglu et al., 2020)。同様にサイトカインレベルと神経炎症も、認知症の経過に影響を及ぼす重要な因子でした(Calsolaro and Edison, 2016)。GERDと認知症には共通のメカニズムがあるものの、GERDがその後の認知症発症に関連するかどうかは不明であり、この問題に関する大規模な研究は不足しています。このコホート研究の目的は、台湾の人口ベースのデータベースからのデータを分析することにより、GERDと認知症発症リスクとの関連を明らかにすることです。

エビデンス
「GERD患者における認知症リスクの上昇: リアルワールドエビデンス」

【背景】
胃食道逆流症(GERD)患者がその後認知症を発症するリスクが高いかどうかは依然として不明であり、集団ベースのデータから得られた観察的証拠もない。本研究は、GERD患者が将来認知症を発症するリスクが高いかどうかを明らかにすることを目的とした。

【方法】
2000年から2012年の期間、Longitudinal Health Insurance Database(LHID、台湾のNational Health Insurance Research Databaseのサブセット)のデータセットを解析した。GERDの定義はICD-9-CMコード530.11および530.81とPPIの処方に基づいて行った。性別、年齢、指標年、併存疾患をマッチングした後、各GERD患者をGERDのない対照患者4人とマッチングした。潜在的な交絡因子は、医療利用状況、高血圧、脂質異常症、慢性肝疾患、肥満、アルコール関連疾患、心不全、脳卒中、消化性潰瘍疾患、不安、うつ病、および PPIの使用とした。また年齢で4つのグループ分けを行った。認知症発症リスクを評価し、潜在的な関連性を明らかにするためにサブグループの感度分析を行った。

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