台湾の遺伝性溶血性貧血患者における全死亡、糖尿病関連死亡、心血管疾患関連死亡のリスクに対する中医薬治療の影響について

〇はじめに

遺伝性溶血性貧血（HHAs）は、稀な赤血球疾患群です。HHAsは、遺伝子変異が引き起こす内在的な細胞欠陥により、赤血球が早期に破壊されることを特徴とします。HHAには、ヘモグロビン異常（サラセミアや鎌状赤血球症など）、赤血球膜異常（遺伝性球状赤血球症や遺伝性楕円球症など）、赤血球酵素異常（グルコース-6-リン酸脱水素酵素の欠損、ピルビン酸キナーゼ欠損など）という3つの主要病因が含まれています。HHAの中でもサラセミアは最も一般的なヘモグロビン症であり、世界人口における有病率は1.67％で、全世界の新生児の罹患率は4.4/10,000です 。台湾では、α-サラセミアが約5%、β-サラセミアが約1.1%と、サラセミアの発症率が高くなっています。

HHAs患者に対する長期の中医薬（CHM）効果を評価するため、台湾の全国的な人口ベースのデータベースを用いて、レトロスペクティブ・コホート研究が実施されました。HHAs患者におけるCHM使用の有効性と全死亡、糖尿病関連死亡、CVDs関連死亡のリスクが探索されています。

〇遺伝性溶血性貧血の標準治療

HHAの主な治療法には、同種造血幹細胞移植（HSCT）、脾臓摘出術、輸血があります。造血幹細胞移植は、サラセミアや鎌状赤血球症（SCD）を含むいくつかのタイプのHHAに対して80～95％の長期生存率をもたらします。しかし、適切なヒト白血球抗原（HLA）適合ドナーの不足により、造血幹細胞移植は困難な課題です。さらに、HHAs患者における造血幹細胞移植の合併症として、肝臓の静脈閉塞性疾患、移植片対宿主病（GVHD）、感染症、疾患再発などが報告されています。

脾腫はHHA患者の典型的な状態であり、赤血球破壊を増加させます。したがって、脾臓摘出術は、HHAs患者の赤血球カテーテルを減少させ、ヘモグロビン値を上昇させるもう一つの有効な治療法です。しかし、脾臓摘出術後には、感染症、血栓症、心血管疾患（CVD）、肺高血圧、免疫機能低下など多くの合併症があります。

〇輸血と鉄過剰症

HHAsは慢性的かつ生涯にわたる疾患であり、通常、輸血を繰り返す必要があります。その結果、鉄過剰症になり、鉄キレート療法が必要になることがあります。

台湾では、サラセミアはHHAs患者の約85％を占め、頻繁な輸血と鉄キレート療法が必要です。頻回の輸血による患者の長期的な合併症には、性腺機能低下症（23.1%）、糖尿病（21.2%）、うっ血性心不全（18.9%）、不整脈（17.6%）、骨粗鬆症（17.4%）、肝硬変（16.5%）などがあります。さらに、鉄過剰症は、CVD、糖尿病、肝疾患、不妊症などの重大な合併症を引き起こす可能性があります。

これらの重篤な合併症の中でも、CVDは鉄過剰症患者の罹患率と死亡率の主要な原因となっています。

〇中医薬の可能性

中医薬は、効果的で安全、毒性が低く、副作用が少ないことを示し、貧血や血液関連疾患の治療に用いられてきました。

さらに、HHAs患者の一次治療から発生した多くの合併症のため、台湾のHHAs患者は、貧血症状を緩和し、これらの副作用を軽減するために補助療法を求めることもあります。

台湾では、中医薬は重要なヘルスケアシステムの1つであり、貧血、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、および造血幹細胞治療の患者に広く使用されています。しかし、HHAを持つ患者に対するCHMの効果については、まだ限られた研究しかありません。

〇論文紹介

HHAs患者に対する長期のCHM効果を評価するため、台湾の全国的な人口ベースのデータベースを用いて、レトロスペクティブ・コホート研究が実施されました。HHAs患者におけるCHM使用の有効性と全死亡、糖尿病関連死亡、CVDs関連死亡のリスクが探索されています。

アブストラクトです。

【目的】遺伝性溶血性貧血（HHA）は、遺伝的な遺伝子変異による細胞内在性の欠陥を特徴とする、まれだが不均一な赤血球系疾患群である。我々は、全国規模の人口データベースを用いて、HHAs患者の全死亡、糖尿病関連死亡、心血管疾患（CVDs）関連死亡の減少に対する漢方薬（CHM）の有効性を調査した。

【方法】合計で33,278人のHHAs患者を特定し、マッチング後に9,222人の非CHMと9,222人のCHMのマッチングペアを含めた。Cox比例ハザードモデルを用いて、非CHMとCHMの使用者の死亡リスクを比較した。非CHMとCHM使用者の累積発症死亡率の比較には、Kaplan-Meier法とログランク検定を使用した。CHMの処方パターンは、それぞれアソシエーションルールとネットワーク分析によって示された。CHMの処方パターンは、それぞれアソシエーションルールとネットワーク分析によって示された。