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高血圧患者の血管内皮機能に対する西洋医学と併用した漢方薬の効果

〇はじめに

心血管疾患(CVD)は世界的に見て、死亡および障害調整生存年(DALY)の主な原因です。毎年1290万人が死亡し、3億人のDALYの原因となっています。2015年には、世界で11億3000万人がCVDに罹患したと報告されています。その最も強力な危険因子は高血圧です。 血管内皮は、血管の緊張と構造を調節する基本的な役割を果たしています。内皮機能障害により、高血圧の有害な転帰につながる可能性のある構造変化がもたらされます。高血圧、炎症性疾患、心血管疾患、および、それらの危険因子を含む多くの疾患において、内皮機能が十分に維持されることは非常に重要です。


〇心血管疾患患者の降圧の標準治療

心血管疾患(CVD)の治療には、利尿剤・β遮断薬・ACE阻害剤・ARB・Ca拮抗薬などの降圧剤が使われます。しかし、患者の約半数は、費用や副作用、合併症のために、薬物療法で血圧を十分にコントロールすることができません。運動や減量、塩分摂取などの行動的介入は、血圧をコントロールし、下げるのに役立ちますが、これらを遵守することは困難です。


〇中国伝統医学の併用療法について

中国伝統医学は、多くはそのメカニズムは不明なままです。しかし中国で臨床実践が行われ、補完代替医療の重要な一部と証明されています。高血圧は漢方薬や鍼灸、太極拳によって効果的に管理できることが示されています。臨床では、本態性高血圧の患者に対して、降圧剤と組み合わせた漢方薬による治療が一般的です。しかし、本態性高血圧患者の血管内皮機能に対する漢方薬+降圧剤の併用療法の有効性を検討したRCTについては、系統的なレビューがありませんでした。そこで、併用療法の有効性を評価するために、今回のレビューが実施されました。



〇論文紹介

漢方薬は、中国などで、高血圧の補完代替治療として常に推奨されています。降圧剤の長期服用や副作用が懸念される中、軽度から中等度の高血圧患者には、漢方薬の単独使用または降圧剤との併用を好む人もいます。漢方薬は症状の改善、血圧の変動の抑制、西洋薬の量を減らすことができます。また数千年前から使用されているため、比較的安全性が高いと思われます。しかし、血管内皮機能に関して有益であるかどうかは、これまであまり認識されていませんでした。今回の研究は、高血圧治療における中医学の血管内皮機能への効果を総括し、患者、政策立案者、臨床医に最新レベルのエビデンスを提供する、最初のシステマティックレビュー・メタ分析です。


邦題は「高血圧患者の血管内皮機能に対する西洋医学と併用した漢方薬の効果: 無作為化比較試験のシステマティックレビューとメタアナリシス」です。


【目的】血管内皮は内皮機能を調節している。血管内皮に障害が起こり、構造変化が生じると、高血圧と関連した有害な転帰につながる可能性がある。本研究の目的は、高血圧患者における血管内皮機能に対する漢方薬と西洋薬の併用療法の効果を、系統的に評価することである。


【方法】PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Chinese Biomedical Literature Database、China Knowledge Resource Integrated Database、Wanfang Data、China Science and Technology Journal Databaseにおいて、中国語と英語で発表された研究を系統的に文献検索した。漢方薬、高血圧、血管内皮、ランダム化比較試験に関する用語またはそれを説明する用語を用いて検索した。 データ解析にはRevMan 5.3.0を使用した。研究に異質性が無い場合は、定量的な統合を行った。サンプルサイズや盲検法が異なる研究が使用されている場合は、サブグループ分析を行った。調査結果のバイアスを減らすため、エビデンスを評定する目的でGRADEproを選択した。


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