漢方薬を服用している2型糖尿病患者における大腸がんリスクの低下:集団ベースコホート研究

〇はじめに

糖尿病の治療は近年改善されてきましたが、糖尿病患者の大腸癌(CRC)においては未だ高いリスクがあります。漢方薬は慢性疾患を持つ患者の補完治療として一般的ですが、2型糖尿病の患者に使用した場合のCRCリスクとの関連性は不明でした。今回紹介するコホート研究は、2型糖尿病の患者における漢方薬の、CRCリスクに及ぼす影響を明らかにしました。特に、1年以上漢方薬を受けた人々に最も顕著な効果が観察されました。

〇糖尿病と大腸がん

糖尿病は、世界中で4億人以上が罹患する慢性疾患となっています1。過去50年以上にわたり、糖尿病、特に2型糖尿病と癌の高リスクの関連性について多くの研究が行われてきました。世界保健機関(WHO)によると、年間180万人以上の患者が大腸癌(CRC)と診断され、そのうち80万人以上がこの癌で命を失っています3。

台湾では、CRCは一般的に診断され、がん関連の死因として第3位となっています。専門的な診断・治療方法の大規模な開発により、2型糖尿病患者の生存率は向上しています。しかし、インスリンやスルホニル尿素の長期使用は、2型糖尿病患者にCRCを発症させやすいという研究結果も存在します4, 5。

副作用が少なく、漢方薬(CHMs)は認知症6や肝細胞癌7、めまい8などの慢性疾患を持つ患者に使用されてきました。いくつかの無作為化臨床試験では、漢方薬(CHM)が遠位対称性ポリニューロパチー9-11や腎症の進行を遅らせることが示唆されています12。さらに具体的には、研究結果からは、CHMが化学療法薬である5-フルオロウラシルによるHT-29結腸がん細胞の抗腫瘍活性を改善することによって、CRCリスクを予防する可能性が示唆されています13。したがって、2型糖尿病患者の治療において、CHMを軽視することは避けるべきです。

CHMがその後のCRCリスクに対して有益な効果をもたらす可能性があり、漢方薬(CHM)が2型糖尿病とCRCリスクの関係を修正できる可能性があり、しかもその情報は限られているため、長期間の集団ベースのコホート研究からの知見は、医療資源の配分や2型糖尿病患者のCRC治療に関する政策立案に役立つと考えられます。しかし、現時点では、この潜在的な有益性を証明するための臨床観察や実証データは存在していません。そこで、本研究では、全国規模の人口ベースのデータベースを分析し、CHMを投与した2型糖尿病患者と非投与群との間でCRCリスクを比較しました。

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