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モルヒネやリンコデでは便秘が起こるが、添付文書には緑内障や前立腺肥大に禁忌の記載がない。オピオイドの便秘は抗コリン作用に基づくものではないのか?

 色んなサイトや各種情報誌を見るが、オピオイドと抗コリン作用を結びつける文面は見当たらない。だが、日本緩和医療学会のホームページにはハッキリと、「モルヒネおよびオキシコドンなどは抗コリン作用を有するため・・・」と記載があった。

 一応、薬剤師らしく、薬理作用から推測する。オピオイドの鎮痛作用は、μ受容体刺激で下行性抑制系神経を活性化するというもの。下行性抑制系はノルアドレナリン系とセロトニン系の2系統あり、それらの分泌が促進される。ノルアドレナリンが増えるので、相対的にアドレナリン作用が優位になり、結果的に抗コリン的な効果が起こると推測される。
 ただ、セロトニン系は少し複雑。5-HT1受容体に作用すると蠕動運動が抑制されるので便秘傾向になるが、5-HT3や5-HT4受容体に作用すると逆に蠕動運動が促進されて下痢傾向になる(セロトニンでオピオイドの便秘を説明するのは難しい)。さらにセロトニンは、エンドルフィン・エンケファリン・グルタミン酸・GABAなど複雑な経路が絡み合っているので、よく分からないというのが実情。

 よって、オピオイドでは抗コリン“的”作用が確かに起こると考える。ただし、アセチルコリンの分泌を直接抑制するものではないので、「弱い抗コリン作用」と解釈していいかも。でも・・・便秘は重度なものになる事もあり、それはセロトニンによる蠕動運動低下も関与しているものと思われる。添付文書上、前立腺肥大には慎重投与で留まっており、重症筋無力症や緑内障には触れられてもいないのはそういう背景があるのだと考える。喘息発作には禁忌だから、その根拠は抗コリン作用に基づくものだろうと思うが・・・不明。

仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。