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Netflixオリジナルドラマ『アッシャー家の崩壊』ep1小ネタ解説

(※以下、小説、ドラマのネタバレを含みます)

 この文章を書いているのはケビン・ベーコン出演のドラマ『The Following』を見てポーの小説を読みあさったただのオタクですのでお手柔らかに。

 さてさて、私の誕生日に配信が開始したNetflixオリジナルドラマ『アッシャー家の崩壊』はエドガー・アラン・ポーの小説を題材にした作品だが、そもそもポーの作品を読んだことある人はどのぐらいいるのか。まぁ分からなくてもこのドラマは見れる。かな〜〜り脚色してアッシャー家の崩壊を描いているからだ。だからポーの作品を読んだことがない人は新しいドラマを見ている感覚で見てくれればいい。

 が、ポーの作品を知っている人からすれば多すぎる小ネタに随時テンションが上がって話が進まないということになる。(なった。)とても楽しい。
 そもそも『アッシャー家の崩壊』をやるぞ!と聞いた時私は「え?!主な登場人物3人しかいないのに?!」と思ったし、本編の画像が出てきた時も「3人以上いるけど何するの?!」と思った。
 そしてドラマのポスターとトレイラー。『アッシャー家の崩壊』と言っているのに『大鴉』(ポーの代表作の詩)が全面に出ていたため、私は、
「わっけわかめ〜!」
となった。(結果見るのが更に楽しみになったが。)

『アッシャー家の崩壊』ポスター
『アッシャー家の崩壊』にしては多すぎる登場人物

 と、まぁ前置きはこのぐらいにして、ここでは『アッシャー家の崩壊』ep1の小ネタを見てみる。

 まず主役であるロデリックとその妹(双子)マデリン(マデライン)は『アッシャー家の崩壊』に出てくる人物であるので必須だ。ブルース・グリーンウッドが激イケすぎるし、メアリー・マクドネルも強すぎる(とスタトレとMajor Crimesオタクが言っています)。

ロデリックとマデライン

 そして、アッシャー家の罪を起訴した検事:C ・オーギュスト・デュパンは『モルグ街の殺人』に登場する非常に頭のキレる、シャーロックのような—いやその逆だ。シャーロックがデュパンのようなのだ。何故なら『モルグ街の殺人』は世界で初めての推理小説と言われているから。
 この時点で『アッシャー家の崩壊』と『モルグ街の殺人』のクロスオーバーが始まっている。いやぁいいねぇ。そもそも『アッシャー家の崩壊』の語り手、ロデリックの友人である彼は小説に名前が出てこない。だからこそドラマでロデリックの話を聞く役を『モルグ街の殺人』のデュパンができる。いいねぇ。

デュパンとロデリック・アッシャー

 法廷の回想、そこでアッシャー家が製薬会社を運営していることがわかるが、その製薬会社の名前はなんと"フォーチュナート"製薬である。フォーチュナート!彼は『アモンティリヤードの酒樽』に出てくる人物である。彼の辿った運命のことを考えると何故この名前にしたのかと疑問が湧いてくる。
 因みにこのアメリカでのオピオイド問題は実話である。簡単に言うと、製薬会社が中毒性のあるオピオイドを「中毒性全然ないよ〜ほら〜」と資料を偽称したりなんだりして売りまくり結果オピオイド中毒者が出まくり死者も出まくり社会問題になった。これについてはまた違うドラマ: Dopesickが実写化しているのでそれを見てもらいたい。残念ながらこれはNetflixではなくDisney+なのだが面白いドラマなので是非。私の推しも出ている。(一時期ハマって何故か作業BGMにしていたが、そんな軽いドラマではない。)

『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』


 話が逸れたが、フォーチュナートはやめたほうがいい。うん。笑った。
 そしてマーク・ハミル、え?マーク・ハミル出とるのか?演じるアッシャー家の弁護士、アーサー・ピムは『アーサー・ゴードン・ピムの冒険』から取った名前だろう。短編小説が多いポーの作品の中でも長めなので「長えな...」と思いながら読んだ記憶しかない。あと船が難破したため海にプカプカ浮いていたら船がやってきて助かった!あっちも手を振ってるし!と思ったらその船のクルーは病気で全員死んでいて、手を振っていたと思っていたのも実は船から身を乗り出した死体だったというくだりも覚えている。え?マーク・ハミル出てんの?

マーク・ハミルじゃん

 法廷の後のシーンはアッシャー家の子どもたちのシーン。内部に情報提供者がいてみんな大騒ぎ〜。
 さて、まず最初に出てくるのはボーリングをしている人物。フレデリック。『メッツェンガーシュタイン』に出てくるフレデリック・メッツェンガーシュタインから取ったのかな?その娘でロデリックにメールしまくっていた孫の名前はレノーア(レノア)で、『大鴉』に出てくる人物の名前だ。レノーアという詩もある。テンション上がっちゃうね。彼のパートナー名前、モレラも彼の作品から取った名前という。

レノーアとフレデリック

 場面が変わって次に出てくるのはタマレーン。これも詩にある名前。そして彼女のパートナーはビル・T・ウィルソン。ウィルソンといえば、そう『ウィリアム・ウィルソン』である。キャラ名を見ると確かに彼の名前はウィリアム・ビル–T・ウィルソンとなっている。なんてこった。テンション上がっちゃうね。ヘヘッ。
 お次は…ポーでサルと言えばオラウータンなのだが、チンパンジーだったか。そんなことより、ヴィクトリーヌは『早まった埋葬』に出てくる名前である。『早まった埋葬』は題名のままの話であり、それをされたのがドラマでいうロデリック&マデリンの母親である。医療が発達してない時代は死んだと思って埋めたら実は生きてたとかよくあったらしい。

ヴィクトリーヌ

 お次はナポレオン。『眼鏡』に出てくる人物の名前。
 お次はカミーユ。『モルグ街の殺人』の被害者の名前。

左からナポレオン、ウィリアム・ウィルソン、タマレーン
カミーユ

 そして最後はプロスペロー。『赤死病の仮面』の暴君の名前である。プロスペローとキャラ違いすぎてめっちゃ笑った。いや全員違うんですけど。

プロスペロー。服も赤いな。

 さて、どうやら彼らは全員、ポーの小説に沿って死ぬようなのだが、プロスペロー(『赤死病の仮面』)とカミーユ(『モルグ街の殺人』)以外は名前と作品が合っていないのが面白い。ある意味クロスオーバー。
 因みに、タマレーンがゴールドバクに言及しているところから彼女は『黄金虫』で、ナポレオンが黒い猫を飼っている点から彼は『黒猫』、そしてヴィクトリーヌが人工心臓の研究をしているところから彼女は『告げ口心臓』で死ぬということが分かる。とにかくこの時点でこれからのエピソードがとても楽しみになる点がとても多い。
 そして、バーで出会った女性、ヴェルナ(Verna)は『大鴉』(Raven)のアナグラムらしい。なるほど彼女がキーなのだな?因みに詩に出てくる大鴉自体は、結局何者なのかは分からない。少なくとも魔物ではあるようだ。彼女—鳥なのか魔物なのか—がどのようにアッシャー家を崩壊させていくのか楽しみである。

「予言者よ」私は言った、「魔物よ—鳥か悪魔か分からぬが、さわれ予言者よ。…」

エドガー・アラン・ポー、阿部保訳(第54版2012年)『ポー詩集』新潮文庫
ヴェルナと若きマデライン

 最後に名前以外の少小ネタの話をしよう。
 ロデリックが生い立ちついて語る回想シーン。彼は妹と共に死んだ母親を庭に埋めるが実はまだ母親は生きており、自ら棺桶から脱出した母親は愛人を殺す。この早まった埋葬の件、実は小説の中でも行われている。母親はマデリン、そして復讐される(埋めちゃった挙句生きてるのに気づいてたのに怖くて無視してたからテヘ)のはロデリックである。小説ではこの悲劇の後、アッシャー家の建物が崩れ落ち"アッシャー家"と"家"両方が崩壊するのだが、ドラマではこの結末が始まりとなっている。

早まった埋葬

 モチーフの小ネタとしては『大鴉』は一番わかりすいと思う。最後に堂々とカラスが出ているし、カラスの像も出てくる。『黒猫』も先に記述したとおり、黒い猫が出てくるし、回想シーンでのバーで黒猫が描かれたガラスがある。そこには骸骨に乗った"大鴉"もおり、馬の絵は『メッツェンガーシュタイン』の馬だろうか。そしてロデリックが車の中に見た不気味な道化師は、哀れなフォーチュナートか?

バーにある馬の絵

 さて、長々と書いてわけがわからなくなったので、記述した作品を以下にまとめよう。

・『アッシャー家の崩壊』
・『モルグ街の殺人』
・『アモンティリヤードの酒樽』
・『アーサー・ゴードン・ピムの冒険』
・『メッツェンガーシュタイン』
・『大鴉』
・『モレラ』
・『タマレーン』
・『ウィリアム・ウィルソン』
・『早まった埋葬』
・『眼鏡』
・『赤死病の仮面』
・『黄金虫』
・『黒猫』
・『告げ口心臓』

 多いね〜。テンション上がっちゃうね〜。
 さて、ep1は完全に導入だった。ep2は私の好きな話でもある『赤死病の仮面』がモチーフのエピだから楽しみだ。さぞ悲惨になるのであろう。ヘヘッ。

 では、ep2を見た後でまた会おう。さらばだ。

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