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映画『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』長々オタク文章

映画『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』ようやく見に行けましたので、見た勢いで長々オタク文章を書きました。この文章を書いているのはドイツ語圏専攻かつBBC版ドラキュラ伯爵が好きという理由で卒論のテーマを『吸血鬼ノスフェラトゥ』にしたただの人間です。お手柔らかに。

さてさてデメテル号を見た人がどのぐらいブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』の内容を知っているのか。ドラキュラという名は知っているが、小説の内容まで知ってる人は少ないと思う。読むと、長いしね。ドラキュラ、ヴァン・ヘルシングはよく知られてると思うがジョナサン・ハーカーとミーナ(ミナ)、ルーシーあたりは微妙か?ジャック・セワードとかキンシー・モリスとかアーサー・ホルムウッドとかもう誰だよという感じか?(BBC版ドラキュラ伯爵見た人ならばジャックとキンシーは知ってるかな。)
まぁだがこの映画に関しては彼らを知らなくても問題なし。一切出てこないから。
そもそも原作においてもデメテル号の部分は数ページしかない。ほとんど記述されていない部分を映画化したので、誰もが初見。すべて想像。決まっているのは『生存者なし』のみ。そういった意味でもこの映画は楽しかった。
さて私がこの映画にワクワクしたポイントはもちろん「デメテル号を映像化!」もあるが、やはり初めて見たトレイラーに出てきた"ドラキュラ"の見た目が見るからに"ノスフェラトゥ"だったからだ。恐らくF.W. ムルナウ監督の『吸血鬼ノスフェラトゥ』を知らない人ならばこの映画のドラキュラの見た目をただの"モンスター"と思うだろうが、知っている人からしたら彼は完全に"ノスフェラトゥ"の進化系。ノスフェラトゥの"坊主頭に尖った耳、鋭く長い爪に尖った前歯"というネズミのような特徴に、コウモリの羽根が加わり動き方も不気味、モンスター感がマシマシ。最高。ノスフェラトゥというかオルロック伯爵はあれでも"人間"らしさが残っていたがこちらは完全に"モンスター"であり、これぞモンスター映画に出てくるモンスターという感じでとても良い。最後に正装した姿になってもそれを保っていたのも良い。最後までモンスターだった。

F.W. ムルナウによる「吸血鬼ノスフェラトゥ」の
オルロック伯爵

そして性格も悪そうで良かった。BBC版ドラキュラ伯爵のドラキュラも本人の目の前でその人の血を飲んだりと色々と性格が悪いのだが、この映画のドラキュラも性格が悪そうだ。確実に知性はあるはずなのに、彼のセリフの殆どは獲物の発した言葉をオウム返しである。しかも"助けて"や神に祈りを捧げる言葉をオウム返しする。不気味であると同時に性格が悪くて良い。
ドラキュラの姿まで"自由に"描いている「デメテル号最期の航海」、もちろん乗組員が(ほぼ)全員死亡までも"自由に"描いている。先に言ったようにそもそも原作では『船員が一人一人いなくなってパニック』ぐらいの情報しかない。名が出ているも"ペトロフスキー"、"アブラモフ"(エイブラモフ)、"オルガ(ー)レン"しかいない。この貴重な名のあるキャラ3人は映画にも登場した。彼ら以外に小説に出てくるのは船長だが、船長なのに名前はないので映画での名前は架空だし、もちろん孫もいない。ヴォイチェクももちろんいないし、アナもいないし、クレメンスーそもそも原作においてあの船に船医などいない!が、何故かBBC版ドラキュラ伯爵でも医者がデメテル号に乗ってくるし、そしてどちらも良い働きをする。クレメンスは至っては唯一の生き残りであり、「あいつ(ドラキュラ)を消し去る」などと強い意志を見せているが、お前誰やねん。倒すのはヴァン・ヘルシングとジョナサンハーカーとミーナとジャックとキンシーとアーサーなので、お前は誰や。アナは花嫁かなーとか一瞬思ったが、花嫁三人は城に置き去りなので違うし、名前だけ聞けばヒュー・ジャックマンの『ヴァン・ヘルシング』に出てくるアナ王女を思い出す。アナ雪ではない。ヴォイチェクは知らない。
個人的に好きだったのはオルガレンの使い方。いや、原作的には何にもないのだが、何度も言うように私はBBC版ドラキュラ伯爵が好きであり、この作品にはオルガレンが登場する。
パンフでは一切触れられてないが、BBC版シャーロックを製作したスティーブン・モファット&マーク・ゲイティスコンビによるこのドラマで、既にデメテル号は映像化されている。もちろんここでも"自由に"映像化された。("自由に"、そう二人がインタビューで述べていた。)

BBC版ドラキュラ伯爵

ドラマ版ではドラキュラは姿を隠さずに客として乗り込んだり、ヴァン・ヘルシングと直接対決したりと、これまた"自由に"デメテル号で何があったかを描いているが、まぁ結末はもちろんこの映画と同じである。ということで、映画でオルガレンが"不死者"に"感染"し、そして吸血鬼伝説にあるように太陽に焼かれて死ぬ。最高。BBC版では生き残るキャラとなっているが(原作では死にますもちろん☆)、映画での最期は悲惨すぎてこの高低差こそ、"自由"のなせる技。良い使い方だ。実はBBC版でも船長の悪夢の中で彼は"不死者"化しているのだが。医者が乗り込んだり、オルガレンが不死者になったり、ドラキュラに襲われながらを船を沈めようとする意志など、この2つの作品に共通点が多いのは不本意か。
ちなみにBBC版ではヴァン・ヘルシングのおかげでドラキュラの対処法が分かったわけだが、この映画のように誰も知らないのが原作通りである。アナでさえドラキュラにどんな攻撃が効いて/効かないかを知らなかった。その状況でドラキュラに挑む彼らの決意はすごいが、原作を一切知らなくてもまぁ結果は見えている。子どもも襲われ"不死者"化するのはなんてひどい!などと思ったが、まぁ原作では赤ちゃんを花嫁に放り投げるし、BBC版では赤ちゃんが"不死者"化するのでどっこいどこいか?悲しいシーンではあったが、デメテル号という作品を考えると想像はできた。("不死者"化以外)
原作の設定を使ったというと、ドラキュラが故郷の土の上で寝ている点と、霧であろう。映画を見ていて、こんな都合のいいタイミングで霧が?!偶然か?!と思った人もいるかもしれないが、もちろん偶然ではなく、ドラキュラが作り出したものである。BBC版では「日光を遮るのにちょうどいい」と言われていたが、映画での彼のビジュアルを考えると日光を遮ったとて外には出れなかっただろうが。そしてドラキュラの寝床の虫。ドラキュラ作品では彼を象徴する動物/虫がよく出てくる。原作では現在定着したドラキュラのイメージであるコウモリや狼、『吸血鬼ノスフェラトゥ』ではネズミ、BBC版ドラキュラ伯爵ではハエ、ベラ・ルゴシの『ドラキュラ伯爵』ではアルマジロが出てきたが、なるほどこの映画ではウジ虫か!アルマジロは置いておいて、ネズミはペストを媒介し、ハエも数々の病原菌を運ぶー人々は彼らを通して"感染"する。(原作においてはドラキュラがコレラまたは梅毒を示唆していると言われている。そしてノスフェラトゥはペスト。)今回もそれに倣ったものか?同じ動物/虫を使わなかったのは意図的か?そういう点でも新しく製作されるドラキュラ作品は楽しい。アルマジロは知らないです。
そしてもしかしたら原作を読んだことがなくてもこれは知っている人は多いのでは: 十字架はドラキュラに効く と。しかしこの映画では効果がない。これは裏切られたと思った。何故ならトビーは十字架を持っているので大丈夫と思ったからだ!効かなかった!船長も掲げたがダメだった!原作、BBC版では聖なるものは大抵効くが、もしかしたらこの映画のドラキュラには効かないかもしれない。動物的で身体能力も高い加え、聖なるものが効かないドラキュラ、強すぎる。何で倒せばいい日光か?いや、実は日光で彼は殺せないのだが。(原作を読んでいないと知らない者も多い)

さてさて長々書いたが良い映画でした。犬は死にます。いつ船員が死ぬのかというドキドキ感が十分に味わえた。BBC版ドラキュラ伯爵が好きなので(しつこい)初めて彼が船員を食べた時には"Fresh blood "!やっとありつけたね!などと呑気な事を思ったが、最終的にはドキドキが勝った。
ユニバーサルモンスター映画最高。
終わり。

P.S.
BBC版ドラキュラ伯爵、見てね。Netflixオリジナルです。

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