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オニ

あえて漢字を使わず、オニと書く。

古くは“陰”と書いてオニと読んだ。
差別されていた人達が面をつけさせられ、
憂さ晴らしのために人々から石を投げつけられた。
縁起の悪いものを、石で追い払ってしまおう、と。
それが節分のはじまりだ。
石を投げられた人の恨みが形となり、オニが生まれた。

まっこと、この世で一番恐ろしいのは人の恨みではないだろうか。
鬼子母神にしても鬼婆にしても般若にしても餓鬼にしても、
もともとは人間なのだ。


オニについての記事を書こうと思った。
二百文字ほど書いたその日、
会社帰りの駅のエスカレーターで転び、
下までころげ落ちた。

ステップが濡れていたわけではない。
つまづいたわけでもない。
なぜか、転んだのだ。理由もなく。

たいした怪我ではなかったが、
それでも腕と向こう脛を強打して青タンができた。
さらに三百文字ほど追加した。
翌朝、右肩と首筋と背中が尋常じゃないほど凝り固まった。
それは仕事に支障をきたすほどで、
熱い風呂にじっくり漬かっても全然ほぐれなかった。


で、その記事はお蔵入りとなった。
かように“オニはたたる”のだ。
嘘じゃない。

だから、というわけでのないが、
僕は神社やお寺によく一人で行く。
そして時間をかけて歩き回り、
静謐で厳かな気分になり、岐路につく。

そうしてまた、怪異に首を突っ込むのだ。




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