日本における博士人材の育成環境をシリアスゲームで考える

お久しぶりです。
研究者村役場総合企画局準備室として正式に活動を進めていける目途が立ちましたので、今後様々な形で活動を進め、noteで定期的に活動報告できればと思っています。

さて、今回は私たちがやろうとしている研究についてお話ししようと思います。
それはタイトルにもある通り、日本における博士人材の育成環境をシリアスゲームで考えてみようというものです。

日本における博士人材の危機

聞いたことがある人も多いと思いますが、近年の日本における研究力はめちゃめちゃ低下しています。
これは感覚的なものではなく様々なデータによって示されています。
2017年には世界的に有名な研究論文雑誌Natureの特集号に大々的に掲載されたことから大きな話題になりました。(Nature Index 2017 Japan:日本語解説記事

そこから5年が経ってなにかが変わったかというと実際のところ何も変わっていません。
「令和4年版 科学技術・イノベーション白書」(文部科学省, 2022)では「なお好転の兆しがみられない」とされています。
それらの原因として挙げられているのは、大学における「教員の研究時間割合の低下、教員数の伸び悩み、博士課程在籍者数の停滞、原材料費のような直接的に研究の実施に関わる費用の停滞」(同7頁)です。
中でも博士人材の育成と活用は研究力の高い諸外国と比べ大きく後れを取っており、国際的な影響力の低下が危惧されています。

この担い手不足の問題には当事者の視点を取り入れた長期的な対策が必要であり、修士学生など潜在的な当事者を含む幅広い人々による考察と実践が求められるでしょう。
国内の博士課程(川村・星野, 2022)および修士課程(川村・渡邊, 2023)の在籍・経験者への調査では、博士課程進学の障壁に経済面、研究環境、そしてキャリア形成での不安が示されており、在籍時の処遇の改善方法は重要な論点の1つといえると思います。

そこで、このような問題解決にシリアスゲームを活用してみよう!というのが今回の研究テーマです。

シリアスゲームって何?

エンターテインメント性のみを目的とせず、教育・医療用途(学習要素、体験、関心度醸成・喚起など)といった社会問題の解決を主目的とするコンピュータゲーム(エレメカも含まれる)のジャンルである。

wikiより

簡単に言えば、あるテーマを題材としたゲームを体験することを通して、そのテーマについて深く考えてみよう、というものです。

今回で言えば、博士人材の人生を模したゲームを体験することで、博士がどのような問題に困っているのか、どのようにすれば助けになるのかといったことを考えるきっかけにしてみよう、という形になります。

どんなシリアスゲームを作りたいか

詳しいゲームの内容は絶賛開発中です!笑
その試行錯誤の過程もnoteで適宜共有させてもらえたらと思っています。

現時点での構想としては、シリアスゲームの利点を活かし、博士課程での研究活動、キャリア形成、そしてライフコースに影響する要因と結果について、統計資料や先行研究での知見を組み込んだモデルをゲームの中に構築しようと思っています。
さらに要因や展開を各人が追加可能な構造にすることで、分野によって大きく異なる博士の問題を体験しやすい構造にしたいです。

またゲームの終了状況を撮影し画像共有しやすいよう設計することで、Webを介してこのような問題を巡るシミュレーションと考察が社会へ開かれるよう展開しようと思っています。

シリアスゲームを使ってやりたいこと

博士号取得者が1万人に1人程度と希少な日本で、博士課程を巡る要因と結果をモデル化したシリアスゲームの活用により、進学をより可能性の開かれた人材育成の選択肢とすることが期待されます。
具体的には、進学を検討する人々には疑似的なストレステストとなり、また当事者以外の人々には起こり得る困難と必要な支援の検討を当事者の視点とともに議論する材料となります。
例えば、シリアスゲームを体験し、問題点や解決策を議論するようなワークショップを開くことができそうです。

また、webを通して公開し、みなさんに遊んでもらうことができるようになれば、ゲーム内の要因や展開の提案を含めて、web上で開かれた議論の場を形成することができると思います。

そして、私たちの目標としては以上の手法と経過を学術報告し、教育学、情報学など多分野の研究者が加わる学際的な展開をしていきたいと思っています。
究極的には、私たちのシリアスゲームを通じて、日本での博士課程の進学・人材育成に関し現状を打破する発想が生み出されるといいなぁと・・・

今後もこのnoteを通じて報告していきますので、興味を持ってくれた皆さん、支援してくださるみなさんはフォローやいいねなどしてくれると嬉しいです。

また、このプロジェクトも含め、研究者村役場総合企画局準備室の活動を一緒にやってみたいという方も募集しています。興味を持たれた方はぜひご連絡よろしくお願いいたします。

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