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タイでコンサート三昧(ライブ回想録)-その1:ターイ&シリポーン

【Place1】2010年6月12日(1)「ターイ&シリポーン@7Cコンサート」

タイの音楽を追いかけるようになって、10年以上が経過した。

その間、CDやカセットテープを聴くだけでなく、タイに行き、現地で沢山のコンサートを観て来た。そして沢山の歌手や友人と巡り合い、沢山のタイの人々に助けられてきた。

この先もまだまだコンサートに行くつもりだが、この辺で一度、これまで行ってきたコンサートの事を記録しておこうと思う。

そもそもタイの音楽に興味を持つようになったのは、それまで聴いていた日本や欧米の音楽に期待を持てなくなっていた頃、ふと耳にしたタイの歌に、エキゾティックで異国感がありながらも、どこか懐かしい響きを感じたからであった。

元々、世界各地の音楽に興味があった事もあって、1990年代のワールド・ミュージック・ブームの時に、色んな国の音楽を聴いてみて、気に入ったのがタイ音楽だった。

それからずっと聴き続けていたわけではないのだが、20年ぶりくらいに昔買ったカセットテープを聴いてみて、改めてその魅力に気が付いたのが2009年頃だった。

2009年の初訪タイとほぼ同時くらいに、僕はタイ音楽に関するブログを始めた。タイに行くようになったのは、そのブログの内容を充実させる意味もあった。

その頃はタイ音楽に関する他の人のブログも良く見ていて、その中にタイに住んでいる人がほぼ毎日コンサート・リポートをアップしているブログがあり、そのリアルな空気感に夢中になって読んでいた。

そのブログの作者Sさんとは、コメント欄を通じてやり取りをするようになり、2010年6月にタイ旅行をすることを伝えたら、「それならば一緒にコンサートに行きましょう」と誘ってくれたのが、僕がコンサート巡りをするキッカケになった。

タイで6月はちょうど雨季になる。コンサートは基本野外でやるので、この時期はコンサートが少ないのだが、わざわざ6月に行くことにしたのは理由があった。

それは僕がタイ音楽に興味を持つキッカケを作ってくれた、タイの国民的歌手プムプアン・ドゥアンヂャンの命日が6月13日だったからだ。そのプムプアンが亡くなった日にタイに居たい、と漠然と思ってこの時期にしたのだった。

しかし、それが功を奏して、雨季にもかかわらずコンサートがいくつもあった。そして、初めてタイで体験するコンサートが、タイ音楽ファンなら誰しも知っている超大物という幸運に恵まれた。

その歌手はターイ・オラタイ(ต่าย อรทัย)とシリポーン・アムパイポン(ศิริพร อำไพพงษ์)である。どちらもその時すでに、不動の地位を確立していた人達だったが、ターイはちょうど「モーラム・ドークヤー(หมอลำดอกหญ้า)」というアルバムがヒットしていた頃だった。

2人のコンサートを観に行ったのが、ラマ2世通りにあるセントラル・プラザという巨大なショッピングモール。その3Fか4Fに有るホールでだった。この日はテレビの音楽番組で「7C(チェット・シー)コンサート」というのがあり、その番組の公開生放送だった。

Central Plaza Rama2

まるで自分の足で観に行ったように書いてしまったが、その時はもちろん自力で行けるわけではなく、先に書いた現地からコンサートリポートをアップしているブログの作者Sさんの案内で、このコンサートに行くことが出来たというのが真実である。

この辺りは日本で売られているバンコクのガイドブックにも載っていない場所で、僕もただ連れてこられただけという事もあって、この時は自分がどこにいるのかさえ分かっていなかった。

コンサート会場の雰囲気は今でも鮮明に覚えている。床はゴムのシートで覆われ、なぜかボコボコしていて歩きにくかった。そして、場内はリハーサルの時に焚いたスモークのせいだろうか、とても煙たい感じがした。

この日のステージセット

テレビの公開生放送というと、日本ではハガキなどで応募して当選した人達だけが入れるシステムだが、タイではそんなものは無く、その日に直接行って、会場に入れれば観る事ができる。席も自由なので、システムを熟知していて慣れている人は、早めに行って観やすい場所を取る。なので、ステージ前の場所はほとんど、その後何度も顔を合わせる事になるコンサートの常連達に占領されていた。

いよいよ時間が近づいてきて、スタッフとMCによる打ち合わせと進行の説明があった。そして12時になり、放送開始と同時にステージのショーも始まった。

スタッフとMCの打ち合わせ

最初はターイがひとりで出てきて1曲歌い、その後シリポーンがひとりで出てきて歌う、という流れだった。豪華なセットと照明、たくさんのダンサーが出てくるステージを目のあたりにして、タイのコンサートも日本のコンサートと変わらない、高いクオリティーなのだと感動した記憶がある。

ターイ・オラタイ(ต่าย อรทัย)
シリポーン・アムパイポン(ศิริพร อำไพพงษ์)

しかし、この日のステージはテレビ用という事で、ここまで綿密に作られた物であり、その他のほとんどのコンサートはこんなには質が高くないという事は後々知る事になる。

この時二人が歌った曲は何だったのか、正直あまり覚えていないのだが、ターイはヒット中だったアルバムの「モーラム・ドークヤー」からの曲が中心だったと思う。

曲ごとに衣装を変えたりするのはテレビ用の演出
ステージを食い入るように観る観客たち

また、最後にターイとシリポーンが揃って歌ったのだが、その曲は「イサーン・ラムプルーン(อีสานลำเพลิน)」という、ターイのアルバムにも収録されている、歌謡モーラムの定番曲だった。

ターイとシリポーンという、タイ音楽におけるトップの二人が並んでステージに立っているのを観る事が出来たというのは、これ以上ない幸運だった。しかも、タイでのコンサート初体験で。

コンサート終了後、帰ろうとすると、案内してくれたSさんが写真を撮ってもらいに行こうと言う。どういう事なのか最初は理解できなかったが、何とさっきまでステージに上がっていた二人が観客と写真を撮っているではないか!しかも会場内で、それほど固いガードも無く。

まだこの頃は歌手との写真撮影に慣れていなかったので、棒立ちになっているのが恥ずかしい。

まさかトップ歌手がこんなに気軽に写真撮影に応じてくれるとは、思ってもいなかった。しかも、Sさんが僕が日本から来たことを二人に伝えてくれると、とても親切に2ショット撮影に応じてくれた。写真を観返すと、シリポーンは僕の腕を握ってくれているというサービスぶり。タイでコンサートを観る醍醐味を思い知らされた瞬間だった。

日本人的な感覚だったら、コンサートは1日1回観ればそれで後は帰るだけと思ってしまうが、タイではこれだけで終わらない。しかも、プムプアンの命日が翌日という事もあり、彼女の追悼コンサートが各所で行われているのだ。

とりあえずセントラルの中で腹ごしらえをした後は、またSさんの案内の元、次の会場へと向かった。


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