生死を分ける「ま(間)」 その刹那(瞬間)(4) 社会人なりたて・・・事故の手前はスローモーション、ミクロの魔

  社会人になってすぐに今でも信じられない様な、忘れられない瞬間があった。
英語学校の仲間とディベートの練習と打ち合わせをやろうと云うことで、ICUの施設を借りて合宿したことがある。
私は何かで遅くなったのだろう、夜遅くに一人車で出かけた。

ICUの見える大通り、あれ、行き過ぎたと思い、車線の左側を走っていた私は前方の分離帯でUターンしようとハンドルを右に切って分離帯中央に差し出した。
その瞬間私はブレーキをガツンと踏んだ。
小さなライトバンだったので、咄嗟の時によくぞアクセルを踏まなかったものだ。
一台の車が私の車の鼻先をスーッとスローモーションの様に通り過ぎる。

私は車の行く手を見た。
その瞬間、猛スピードで車が過ぎ、大通りの左端で急停車した。
その時、その車の左だか右だか定かではないが、後部車輪は浮いていた。
そしてその車は左端に停車した。
私はもし因縁をつけられたらまずいと思い、そのまま発進してICUに入ってしまった。
先方も胆を冷やしただろう、まさにミクロの間であった。

確かに「瞬間」が止まったのだ。(お互いの車の鼻先が出会った瞬間のこと)
ほんの一瞬スローモーション映像を見ているようだった。        トントントンと画像が一つずつコマ送りされるように。
ただなぜあの車は私の前を横切れたのか今でも信じられない。
完全に分離帯に差し掛かっていたはずだ。
またなぜ右から急に猛スピードでやって来たのかも信じられなかったが、多分私の後ろを走っていて、私が減速したので右から追い越しをかけ、スピードを上げた瞬間私が右にハンドルを切り、泡を食ったといったところかもしれない。
私が右ウインカーを点滅させていなかったのだろうか。          それとも後ろを確認していなかったか。
それにしても相手は小さな車ではなかった。               通り抜けるスペースは無かったはずだ。

もう一つの不思議は、あの瞬間にどうして間に合ってブレーキが踏めたのだろうか。                               相手の車の鼻先がグッと突き出した瞬間を見ながらブレーキを踏んだのだ。
お互いの鼻先の間隔が殆んど無いミクロの間に差しこんだミクロの魔だったのかもしれない。                           幸いにも差し込んだは跳ね飛ばされた。

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