おと奥様のストーリー②
金一封が成績トップである俺の手に渡ったところで、営業部は通常業務へ戻る。
俺は自分のデスクに座り、来月の予定を組み立てていた。
すべての商談が決まれば、中旬ぐらいでノルマ達成できる。普通の営業マンだったらやめるだろうが、来月も一番になりたい俺は、下旬まで物件を売るスケジュールを立てた。
「うわ、先輩がんばりますねえ~」
「来月も一番になりたいからな」
隣の席の後輩が、俺のパソコンの画面を覗き見てぼやいていた。
後輩は冷たいカフェオレをストローで口に含んだ後、ため息交じりで俺に嫌味を言う。
「部長の言う通り、トップ、俺たちに譲ってくださいよ~」
「いやだ」
「ここ最近の先輩、変ですって! 半年前までは成績も悪くて、部長に怒鳴られてた先輩が四か月連続で営業成績トップですよ!?」
後輩の言う通り、半年前の俺は今の仕事を辞めようと思っていたくらいに追い詰められていた。ノルマ未達もざらで、パソコンで転職サイトの画面を眺めていることが多かったと思う。
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