内緒の関係 えな奥様のストーリー③
えなさんの巧みな話術には舌を巻く。
最初はお互いの近況について当たり障りのないことを話すのだけど、気付いたら俺は少し話し過ぎたと思うくらい話してしまっている。
部下との関係の悩みだとか、将来の不安にまで話が及んでいることがある。
彼女の打てば響くようなリアクションが、つい話してしまいたくなる気持ちを見事に引き出していた。
「ええ~! ほんとなのそれ?」
「ああ、間違いないさ。見ればわかる」
「すごい! よく見てるんだね」
私は全然わかんないや、と茶目っ気たっぷりに舌を出すところも憎めない。
少し砕けた口調は親しみを感じさせつつ、失礼にならない絶妙なラインを突いてくる。
ちゃんと礼節を弁えつつも、こちらがリラックスできる雰囲気を作ってくれているのだ。
俺はそんな彼女のくるくるよく変わる表情を見つめつつ、とびっこのスイッチをオンにした。
えなさんは思わず立ち止まり、膝を擦り合わせるようにして悶える。
「ん、ぅ……っ」
こらえ切れずに漏れる吐息が悩ましい。
それほど強い振動にはしていないのだけど、とてもいい反応だった。
「ほら、しっかり歩かなきゃ。……前から来てる彼、不審そうに見てるぞ」
そう指摘してやると、えなさんは恥ずかしそうに身を小さくしつつ、俺の腕にしがみついている腕に力を込める。
そんな彼女の反応が可愛くて、俺はしばらくとびっこのスイッチを入れっぱなしにしていた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?